日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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社会保険料 負担減を 小池氏「中小企業賃上げ支援で」 参院財金委

2024年03月27日

赤旗2024年3月23日付

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(写真)質問する小池晃書記局長=22日、参院財金委

 日本共産党の小池晃書記局長は22日、参院財政金融委員会で、中小企業の社会保険料負担が賃上げに伴い増加する問題で、軽減に踏み切るよう迫りました。

 

 小池氏は、中小企業に対する社会保険料の過酷な取り立ての実態として、資本関係のない会社の銀行口座預金を全額差し押さえることなどを示し「法令を逸脱している」と批判。宮崎政久厚生労働副大臣が「年金事務所に丁寧な対応を指導している」と答弁したのに対して、「社保倒産が危惧される事態になりつつある。政府全体として強い問題意識をもって取り組んでほしい」と強調しました。

 

 小池氏は「今回の所得税法改定に盛り込まれた賃上げ税制だけで中小企業の賃上げが実現できると思うか」と追及。中小企業家同友会の広浜泰久会長が「賃上げの価格転嫁を交渉できる中小企業はごくわずか」と語った東京新聞のインタビューを紹介し、「価格転嫁できないことが、賃上げのブレーキになっていることは間違いない」と指摘しました。

 

 小池氏は、1時間当たり50円以上賃上げした中小企業に従業員1人あたり5万円を支給する岩手県の直接支援を評価し、「国として直接支援を行うべきだ」と要求。鈴木俊一財務相は、同県の取り組みを評価しつつ、賃上げ税制に固執しました。

 

 小池氏は、2014年の参院での全会一致による付帯決議(小規模企業振興基本法)をあげ、賃上げに伴って増加する社会保険料負担の軽減は国会の意思だと追及。鈴木財務相は「政府としても可能な限り社会保険料の事業主負担に配慮していくことは重要な課題だ」と答えました。

速記録を読む

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 今日は賃上げ税制の問題取り上げるんですが、それ入る前に、大臣所信の質疑で社会保険料の取立て、差押え問題を取り上げましたらば、あの質疑を見た方から毎日のように電話掛かってきて、非常にやっぱり深刻な事態になっているなと思いますので、ちょっとその問題から入りたいと思うんですね。
 取り上げたいのは、都内のIT企業で、これ仮にA社としますが、訴えがあったんです。厚労副大臣、今日来ていただいたので、是非お聞きいただきたいと思うんです。
 この企業は、コロナの特例猶予が終了した後、分納しながら保険料を払ってきたんです。ところが、昨年二月に日本年金機構の職員が取引先に突然現れて、A社に支払う予定の売掛金は、今後、A社ではなく日本年金機構の口座に振り込んでくれと通告をされたと。それ以降、取引先は全てA社への支払を日本年金機構の口座に振り込み続けている。続いて、六月になったら、今度はA社の銀行口座も差し押さえられました。借入れがある口座だったので、口座凍結されて、その後の売掛金になる入金分も全て拘束をされてしまっている。その後も、社会保険料を少しずつ払って、かつ換価の猶予を求め続けてきていますが、A社が提示した分納計画が承認されずに、今年三月、A社社長が他社と共同経営をしている合同会社の銀行口座預金全額が差し押さえられた。合同会社、これA社と資本関係はないんです。年金機構にA社の債務について連帯保証でもしていない限りは、これは債権債務の関係では全く無関係のはずです。さらには、合同会社の出資者にはA社と全く関係ない方もおられて、ある意味では今回の差押えというのは財産権の侵害ではないかというふうに言わざるを得ない。会社法上も合同会社の残余財産は出資割合に応じて分配されなければならないはずですけど、そうした法律関係も無視されているんじゃないかと思うんですね。
 ちょっと、こういう事態がこの後も次々出ているので、今日はこの一例だけ御紹介しますけど、この日本年金機構によるですね、ちょっとこの今の状況、これ公明党の議員の方も先日取り上げていましたが、やはりこの当委員会の議論でも国税通則、国税徴収法などの原則、あるいはその社会保険料の徴収に関わる法令、これ逸脱したものではないかと思うんですが、厚労省としてこれこのままでいいとお考えでしょうか。
○副大臣(宮崎政久君) 個別の事案についてお答えするということについては当然差し控えなければいけないところでありますが、一般論として、保険料の納付が困難となった場合、事業所の経営状況や将来の見通しなどを丁寧に伺いながら猶予による分割納付の仕組みを活用するなど、事業所の状況に応じて法令にのっとり丁寧に対応するように各年金事務所に対しての指導を行っているということがまず前提でございます。
 その上で、事業主が誠意ある対応を行わないなど猶予の要件、これは国税徴収法にあるわけであります猶予の要件に該当しない場合には、猶予を適用せず、分割納付が認められずに差押えを行うということになるわけでございます。
 先ほど具体的な事例を前提に差押えの例を先生から御説明いただきましたが、まず差押えにつきましては事業の継続に与える影響が少ない財産を優先して行うということになっております。それらの財産の差押えを行っても滞納解消が見込まれない場合には売掛金の差押えを行うということになっております。
 また、差押えの対象となる財産でありますけれども、原則として滞納者に帰属をしていなければいけないことはもちろんでありますけれども、国税徴収法上の定めによりまして、第二次納税義務者、これ同族会社始め様々な類型が定まっておりますが、第二次納税義務者についても差押えを行うことができるとされているところでございます。
○小池晃君 ただね、要するに、今言われたようなことと違うことが現実にはもう至る所で今起こり始めている、そういう現状があるわけですよ。
 私はね、年金事務所、年金機構に指導していますとおっしゃるけれども、それがちゃんとできてないんじゃないかと。やっぱり、これは深刻だと思いますよ。やはり日本年金機構に対してこうした対応を正すように厚労省としてやっぱり物申すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○副大臣(宮崎政久君) 厚労省、まず日本年金機構の方が各年金事務所に指示を出しております。これは先生も御承知かもと思いますが、例えば直近のものでいうと、令和五年の十月に出した法定猶予適用事務所に対する取組方針の通知がございます。この通知を出すに当たりましては、当然のことでありますけれども、厚労省の年金局と日本年金機構が協議をして、まあ、言ってみれば厚労省の方で指導した上で丁寧な対応についての通知も出させていただいているところでございます。
 個別の事案で必要に応じてということではあるかもしれませんが、厚労省としては今日までこのような形で指導した上で年金事務所の事業を継続していただいているものと理解しています。
○小池晃君 現実は、本当に違う状況生まれてきていますから、やっぱりこれは根本的に対応改めていただきたいというふうに思うんですね。
 財務大臣にもお聞きしたいんですが、私は、社保倒産が起きるというようなことが危惧される事態になりつつあるんですね。起こっているわけです、既に。やはり、こうした問題の解決抜きに、幾ら中小業者を支援するとか、ましてや中小企業の賃上げなんて実現できないと思うんですよ。私は、これ政府全体として、これ所管でないというんじゃなくて、やっぱり政府全体として、やっぱりこの事態、問題意識を持って取り組むべきではないか。いかがでしょう。
○国務大臣(鈴木俊一君) 今、政府として、賃上げ、特に中小企業の賃上げをしなければならない、そして中小企業に対する支援を強化をしていこうと、こういうようなことでありますので、そういう中において、こうした社保倒産というようなことがあるということは大変遺憾なことであると思います。せっかく、コロナ禍で苦しんだところを何とか生き延びてきた中小企業がこういうことで追い込まれるということはあってはならないと思います。
 しかし、一方においては、社会保障制度の持続可能性を維持するということも大切でありまして、一切、保険料をもう免除するということも、これもまたできないんだと思いますが、その徴収の仕方については、今厚労省政務官からお話がありましたとおり、よく指導をしながら、例えば、直ちに財産の差押えを行うのではなく、猶予による分割納付の仕組みを活用するとか、事業所の状況に応じた丁寧な対応というもの、これらきちんとなされますように、政府全体として取り組まなければならないのではないかと思います。
○小池晃君 コロナで猶予したということがあって、かなり機械的に今取立てが行われているという実態があると思うので、是非、これ、政府全体として、これ強い問題意識を持ってこの問題取り組んでいただきたいというふうに申し上げたいと思います。
 その上で、賃上げなんですけど、大手企業中心に高い水準の賃上げ、妥結をしてきている。しかし、やはり一握りであるし、物価高騰に追い付いていない。とりわけ中小企業の賃上げ、今日もずっと議論がありました。これ、大きな課題だと思うんですね。
 先ほどから大臣も、賃上げ税制、賃上げ税制というふうにずっとおっしゃっているんですけど、賃上げ税制だけで中小企業の賃上げ実現すると思いますか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 中小企業の賃上げ、第一回目の春闘の回答におきまして、五%を超える過去最大のこの賃上げが実現したわけであります。大企業においては賃上げについての力強い流れができているんだと思いますが、これを中小企業に広めていかなければならないと、こういうふうに思います。
 効果についていろいろ議論もございましたけれども、私どもとしては、この賃上げ促進税制、これを中小企業にも活用していただけますように、そういう対応もしているところでありますし、また、賃上げ、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針の周知徹底、それから中小企業に対します省力化投資の支援など、中小企業の稼ぐ力も強めていかなければならない、そういうようなことを、政策を動員しながら、中小企業への賃上げというものを進めていければと思っております。
○小池晃君 中小企業庁にちょっとお聞きしたいんですが、価格交渉促進月間フォローアップ調査、この結果によると、原材料、エネルギー、労務費、転嫁率の問題でどのような課題があるとお考えですか。
○政府参考人(飯田健太君) お答え申し上げます。
 御指摘の価格交渉促進月間のフォローアップ調査でございます。足下の調査結果でございますが、発注企業の方から交渉の申入れがあった企業の割合がおおむね倍増するなど、受注企業にとって価格交渉しやすい雰囲気というのは醸成されつつあると思っています。一方、コスト上昇分に対する価格の転嫁率、四五・七%にとどまっておりまして、転嫁率の上昇を図っていくことが必要でございます。
 御指摘の原材料、エネルギー、労務費の転嫁率でございますけれども、品目別に見てまいりますと、原材料費につきましては四五・四%、エネルギー費につきましては三三・六%、労務費が三六・七%となってございます。
 労務費につきましては、効率化努力で費用を捻出するべきだというような取引慣行も根付いておりまして、なかなか値上げ要求をしづらいというような側面もございまして、転嫁率につきましてもコスト全体に比べて一〇ポイント程度低く、課題があるものと認識をしてございます。
○小池晃君 そういう実態があるんですね。
 中小企業家同友会の広浜泰久会長が東京新聞のインタビューで言っています。人手不足を背景に一定の賃上げは実現するかもしれないが、それを取引価格に転嫁することは難しい、賃上げした分を転嫁するよう政府は促しているが、原材料費の上昇分を転嫁できた会社は増えたけれども、賃金については五%上げるので価格転嫁させてほしいという交渉ができる中小企業はごく一部だと答えているんですね。やっぱり賃上げ分転嫁できないということが賃上げのやっぱりブレーキになっていることは間違いないんじゃないか。
 そこで、今日資料をお配りをしているんですが、これ、大臣の地元岩手県です。物価高騰への対策として中小企業の従業員の賃上げを進めようと県が賃上げに取り組む企業に対して支援金を支給すると。補正予算二十一億円で、これは自民党も賛成しています。受付は二月五日から始まって、既に申請受付が千件、六千人分を超えているというんですね。県内企業からも大変好評だと。特に従業員二十人以下の企業が申請して、とても喜ばれているということなんです。
 大臣、とても大事な取組ではないかと思うんですが、どういうふうに見ていらっしゃいますか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 岩手県が取り組んでおりますこの物価高騰対策賃上げ支援金につきましては、私も承知をしているところでございます。
 各地方自治体におきましては、賃上げの促進に限らず、様々な政策分野において、平時よりそれぞれの地域の実情に応じて自治体の判断の下で独自施策を講じられているわけでありますが、今回のこの岩手県の取組についてもそうしたそれぞれの自治体における独自の取組として私としても評価をしたいと考えております。
○小池晃君 評価したいと、これは本当に評価すべきやり方だと思うんです。直接支援ですよ。やっぱり直接支援が大事ではないかと。
 もちろんこれ悩みもあって、これ時給換算で五十円以上上げるとということで、例えばある企業は一日七時間半で二十三日だと一か月で九千円弱だと。そうすると、五万円の補助なので、大体半年ぐらいは補助で賄えるけれども、これ一年続けるとなると持ち出しになっちゃうという、そういう声ですよ。
 私、大臣の地元でこういうの始まっているんですね。是非、県任せにせずに、やっぱり国もこういったやり方を学んで、こういう県のやり方を支援するような直接支援を考えるべきじゃないかと思うんですが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 持続的で構造的な賃上げに向けましてのその手法でありますけれども、政府といたしましては、財政的な直接支援ではなくて、経済の好循環による自律的な成長の中で賃上げを実現していくことが、これが必要であると思います。
 そして、そのためにも、デフレマインドを払拭するきっかけとしての定額減税の実施、赤字企業、赤字の中小企業でも使いやすくする繰越控除制度を導入するなど、賃上げ促進税制の拡充、加えて、持続的な賃上げにつながるにはその源泉となる生産性の向上が必要でありますので、中小企業等の省力化投資を支援していくなどを行っているところであります。
 国としては、予算や税制などあらゆる政策を動員して、賃上げを行う中小企業を強力に支援してまいりたいと思っております。
○小池晃君 だから、そういったことをやること自体駄目とは言っていないんですよ。やったらいいと思うんですよ。やるべきだと思うんですよ。でも、あらゆる政策手段を動員するというのであれば、何でその中に直接支援という考え方を、完全に今やらないとおっしゃった。やっぱり違うじゃないですか。やっぱりあらゆることをやるというのだったら、それこそ岩手県はやり始めた、こういった直接支援を国としてやる、どうしてそれができないんですか。
○国務大臣(鈴木俊一君) やはり財政的な直接支援というのは、これはずっと継続してやるものではないんだと思います。それと対比いたしまして、経済の好循環による自律的な成長というものを実現をする、その中で賃上げを実現するということは、これは極めてこの継続性があるわけでありまして、政府としてはそちらの方に力を入れていきたいと思っているわけであります。
○小池晃君 いや、継続的なことは大事ですよ。でも、やっぱり今こういう深刻な事態で、賃上げがもう一丁目一番地の課題だというのであれば、これで背中を押すと。これは確かに持続的にずっとやる制度じゃないと思います。しかし、これをやっていく私は十分な価値があると思うんですね。
 その点でいうと、先ほどからも議論ありましたが、やっぱり社会保険料なんですよ、やっぱり直接支援の手段としては。これ、賃上げすればもう直ちに事業主の負担に跳ね返るわけですね、社会保険料は。先ほど、冒頭やったように、もう払い切れないということで倒産に追い込まれる。実際ね、いろんな相談内容を聞くと、年金事務所からこう言われたと、従業員の給与や賞与を下げて社会保険料負担を減らしてでも支払いなさい、そんなことを言ってくるというんですよ。もうまさに賃上げに対する逆行なんですね。こういう事態が起こっている。
 やっぱり、賃金上げることに、上げるとやっぱり社会保険料の負担というのは物すごく大きなペナルティーになります。ちょっと厚労省参考人にお聞きしますが、例えば岩手県の最低賃金である時給八百九十三円を千五百円に引き上げる、年間労働時間千八百時間として、厚生年金保険料と協会けんぽの保険料を合わせて従業員一人当たりの事業主負担というのは幾ら増えますか。
○政府参考人(巽慎一君) 御質問の事例について仮に計算いたしますと、時給に労働時間を掛けると標準報酬月額は十三万四千円から二十二万に増額され、厚生年金保険料率と岩手県の協会けんぽのけんぽ保険料率を掛けて労使折半いたしますと、被保険者一人当たりの事業主負担額は毎月約一万三千円、年間で約十五万円増額するということです。
○小池晃君 十五万二千円ぐらいこれは事業主負担、年間増えちゃうわけですよ。
 もちろん私たちは時給千五百円ということを実現すべきだと思いますが、やっぱり、そのためには本当に直接支援、特にやっぱり社会保険料に対する支援をやらないとこれ本当に大変なことになると。これは非常に重要な課題になっていると思うんですね。
 二〇一四年に小規模企業振興基本法が定められたとき、全会一致の附帯決議があります。社会保険料の負担軽減への効率的な支援策の実現を図ること、これ、賃上げに伴って増加する社会保険料負担を軽減するというのは国会の意思でもあると思うんです。大臣、これやっぱり政府を挙げて実現すべきじゃないですか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 社会保険料の事業主負担につきましては、医療や年金の給付が保障されることで働く人が安心して就労できる基盤を整備することは事業主の責任であり、また、こうした基盤が整備されることが働く人の健康の保持や労働生産性の増進を通じ事業主の利益にも資することを踏まえれば、社会保険料の事業主負担を特別に軽減することについては慎重な検討が必要だと考えておりますが、その上で、小池先生御指摘のとおり、政府としても可能な限り社会保険料の事業主負担にも配慮していくことは重要な課題であると考えております。
 そのために、価格転嫁を促す政策や省力化投資の支援等の政策によって中小企業の生産性や稼ぐ力の向上を後押ししていくとともに、社会保障制度の効率化や給付と負担のバランス、これの不断の見直しを通じまして事業主負担の上昇抑制に努めてまいりたいと考えております。
○小池晃君 事業主の責任であることは言うまでもありません。でも、そのために賃上げができなくなったら元も子もないと思うんですよ。しかも、私たち主張しているのは、大企業の内部留保に、これ時限的にですよ、ずっとやれと言っているんじゃないんです。この間の法人税の減税で積み上がった部分に対して時限的に課税をして、それで社会保険料の減免分に充てるということを提案しているわけですよ。これは、ある意味では、大企業の社会的責任で中小企業の賃上げを支援していくという考え方でもあるわけですね。
 私は、日本の雇用全体の七割支える……
○委員長(足立敏之君) 時間が過ぎておりますので、おまとめください。
○小池晃君 中小企業、これが従業員維持していくためには、やっぱり効果の見込めない賃上げ税制ではなく社会保険料の減免ということに道を開くべきだと、決断すべきだと申し上げて、質問を終わります。

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