日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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労働者に情報開示を 小池氏 事業性融資法案で質問 参院財金委

2024年06月19日

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(写真)質問する小池晃書記局長=4日、参院財金委

 日本共産党の小池晃書記局長は4日の参院財政金融委員会で、「企業価値担保権」を創設する事業性融資促進法案について質問しました。

 

 「企業価値担保権」とは、従来の不動産担保や個人保証などに依存することなく、借り手企業の事業内容や成長可能性などを評価するもので、評価対象には労働契約も含まれるため、労働者への影響が懸念されています。

 

 小池氏は、担保設定時に、労働者への個別通知や労働組合からの意見聴取が行われない仕組みで、政府は「伝達を義務づけると、コミュニケーションの質の低下につながる」と説明しているが、「意味不明だ。労働者への情報開示と説明責任を果たすことが、コミュニケーションの質を向上させる」と主張しました。

 

 小池氏は、参考人質疑でも「労働者が取引先などから担保が設定されていることを突然知ったら問題になる」との指摘があったとして、「ガイドラインには労働者への個別通知、労使協議を促す内容を明記すべきだ」と要求。金融庁の井藤英樹企画市場局長が「厚労省などと連携して、コミュニケーションのあり方を検討していく」と答弁したのに対し、「法文にきちんと明記すべきだ」と批判しました。

 

 さらに小池氏は、企業価値担保権の貸し手(債権者)に限定がなく、銀行以外のファンドなども認められている問題を追及。法案を検討した金融審議会でも、担保権の乱用を防ぐため、「(債権者は)債務者に伴走できるだけの体力と知見を持つ者」に限定した方がいいとの意見があったとして、「投資ファンドや債権回収を本業とするサービサーにまで広げることで懸念はさらに拡大する」と警告しました。

速記録を読む

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 長年にわたって金融機関の足かせになってきた、そして失われた三十年の元凶とも言えるのがやっぱり金融検査マニュアルだと思います。
 金融庁は、二〇一五年、当時、森長官ですかね、やっぱり銀行の目先の健全性ではなくて地域の企業とか地域経済の持続可能性を重視するということで、金融検査マニュアル廃止、そして、金融機関の事業性を評価する新基準というのを出して融資実務を発展させる努力をされてきたと思うんですが、大臣、そもそも当時こうした方向転換はなぜ行われたのか、お願いします。
○国務大臣(鈴木俊一君) 金融庁では、約二十年前から金融機関に対して、事業者の実態や将来性を評価して融資を行うことを促すため、様々な取組を進めてまいりました。その中で、御指摘の二〇一五年の金融行政方針を含め、様々な場面でそうした考え方を示すとともに、二〇一九年には検査マニュアルを廃止するといった取組を行いました。
 こうした取組の背景には、不良債権問題が一段落して自己資本の最低基準の充足が確保される中で、金融機関は自身の置かれた経済環境を踏まえ、顧客企業や地域経済の成長に貢献し、それを通じて自身のビジネスモデルの確立につなげることが重要になっているとの認識を示す必要があると考えたことが挙げられると思います。
 特に、御指摘の検査マニュアルの廃止の背景について述べますと、検査マニュアルを用いた厳格な検査はバブル崩壊後の不良債権処理問題への対応に大きな役割を果たしましたけれども、その一方で、金融機関の融資において、本来評価すべき借り手の事業ではなく担保や保証を必要以上に重視する慣行につながったなどの副作用が指摘されております。このことから、指摘されたことから、金融機関が自主的な創意工夫の下で顧客の事業性を評価した融資を行いやすい環境を整える必要があるとの考え方によるものであります。
 金融庁として、本法案により創設されます制度も通じまして、金融機関が金融仲介機能を発揮して効果的な事業者支援につながるよう取組を進めてまいります。
○小池晃君 担保に依存することなくやっぱり事業内容でというのも、これ、本来の融資の在り方だと思います。やはり対等の関係で本業支援につなげるというのもこれは事業性融資の出発点だと思うんですが、大臣、こうした流れが、この間、金融行政の中で、今回企業価値担保権というのはなぜ生まれてきたのか、ちょっと端的に御説明いただければ。
○国務大臣(鈴木俊一君) 金融機関と企業が対等な関係の下で信頼関係を築いて効果的な本業支援につなげていくこと、これは重要でありまして、金融庁は、約二十年前より、金融機関に対しまして、不動産担保や経営者保証に過度に依存するのではなく事業者の実態や将来性を評価して融資を行うことを促すために、例えばリレーションシップバンキングの推進、金融検査マニュアルの廃止などによる企業実態に即した与信管理の尊重、経営者保証改革プログラムの策定など、様々な取組を進めてまいりました。
 一方で、有形資産に乏しいスタートアップ企業などについては依然として十分な資金調達が困難であるとの指摘、それから、融資を受けられた企業も、事業再生の局面において、平時からの金融機関の事業への理解不足やメインバンクがないという中で、多様かつ複雑な利害関係を調整する必要性から、金融機関からの追加の融資支援を受けることが難しいとの指摘があるなどの課題が見られ、事業者の実態や将来性等に着目した融資の浸透についてはいまだ道半ばと考えております。
 諸外国では企業価値担保権に類似する制度が広く活用されておりまして、事業者と金融機関の緊密な関係構築や、金融機関に事業の実態や将来性の的確な理解を動機付けるものとされております。
 我が国におきましても、事業者と金融機関の間の信頼関係に基づいて事業性融資をより一層推進するため、こうした諸外国の融資実務も参考にした新たな企業価値担保権の創設が必要と考えまして、今回、必要な法整備を行いたいという思いで法案を提出させていただきました。
○小池晃君 丁寧な御説明ありがとうございます。
 ただ、二十年間ずっとやってきて、実態は、先ほども議論ありましたけど、中小企業はそういう事業に着目した融資求めながら、ほとんど利用されていないという実態があるわけですね。
 これ、本当に言うはやすくで、やっぱり金融機関にとってみれば、これ本当大変な仕事になると思うんですね。やっぱりその事業を丸ごと評価するというのは簡単なことではない。だから、それは、今まで、じゃ、ノウハウがあるかといったら、ない。こういう中で、その企業価値担保権ということを設定したからといって、これで大きく広がっていくというふうに言えるんですか。変わるというふうになりますか。
○政府参考人(井藤英樹君) おっしゃるとおりで、この担保権の導入直後、すべからく既存の融資がこっちに変わってくるというようなことでは私ども考えてございませんけれども、そもそもが、なかなか、従来、有形資産に乏しい企業であったりそうしたような場合には既存の担保等に依存した融資ではなかなか融資が難しかったと。そういうところに対して有力な融資の選択肢を与えるものだというふうに考えてございまして、こうしたことも契機に、そうした事業性に着目した融資が広がってもらえればというふうに強く考えているところでございます。
○小池晃君 なかなか現実には大変だというふうに思うのと、やっぱり懸念があるわけです。
 担保設定するタイミングでの労働者とのコミュニケーション、先ほども議論ありまして、ルールベースで特定の事項の伝達を義務付けると、コミュニケーションの質の低下につながると。ちょっとこれは意味不明だと私は思っていて、労働者に情報開示し説明責任果たすことがコミュニケーションの質を向上させると私は思いますし、それから、ほかの制度とのバランスというふうにおっしゃいましたけど、これ、事業を丸ごと担保化するなんて初めての制度なわけですからね、これ前例ないわけですから。
 やっぱりこれは、先日の参考人質疑でも、労働者が突然取引先などほかのところから担保が設定されているということを知ったら、かえってその労働者と経営者との間の信頼関係壊すという指摘もありました。
 先ほども議論ありましたけど、ちょっと確認したいんですが、少なくとも検討されるガイドラインでは、労働者への個別通知、労使協議、こうしたことを促す内容を明記すると、明記すべきだと思います。明記するということでよろしいですね。
○政府参考人(井藤英樹君) いずれにいたしましても、ガイドラインの内容につきましては、厚生労働省等の関係省庁とも連携いたしまして、そのコミュニケーションの在り方など制度の趣旨を踏まえた運用に関する考え方を取りまとめて公表したいというふうに考えてございます。
 その内容については、現時点で明確にこうだというふうに今考えて申し上げるような状況にはありませんけれども、いずれにしても、特定のコミュニケーションの方法を絶対やらなきゃいけないといったようなことは余り考えておりませんけれども、いかなる形でコミュニケーションの充実が図られるかということについては、資するようなものにしていければというふうに考えてございます。
○小池晃君 ちょっとそういうことを言われるから、やっぱり法文にきちんとこれ明記すべきだと私は思います。
 それから、やっぱりこれ、伴走支援、モニタリングということで、経営への関与強まれば、やっぱり使用者性の問題出てくるわけですね。これ、金融審でもこのことはテーマになりました。それから、参考人からも、人事に関する合理化施策も伴走支援には入ってくるんじゃないかということを言われています。
 やはり、コストの削減が求められる経営改善に関与する局面、これは人事に関する施策も入ってくるんではないかと思いますが、その点、いかがですか。
○政府参考人(井藤英樹君) 金融機関が事業者に対して行う伴走支援に関しましては、何がどこまで入るかというのを確定的に申し上げることはちょっと難しいわけですけれども、いずれにしても、この担保権が設定されている場合に限らず、借り手に対して金融機関が取引上の優越的な地位を不当に濫用するとか取引条件又は実施について不利益を与えるような行為は銀行法令等において禁止されてございますし、また、いずれにしても、金融機関は事業者の経営の自主性というものを尊重しつつ事業者の状況に応じた経営改善支援等を適切に行うことが重要だということは監督指針においても示しているところでございまして、しっかりと問題となるような事象が起きないようモニタリングは行ってまいりたいというふうに考えてございます。
○小池晃君 そうあっていただきたいと思いますが、ちょっと法的にはそこの担保がやっぱりないんではないかと、そこは懸念されるということは言っておきたいと思うんですね。
 それから、担保権者については、これは要件定められていますが、債権者については制限がないわけです。例えば、商社のような事業者もあり得るし、投資ファンド、サービサーも想定されています。
 ワーキンググループの審議の中で、これ大臣に、これ最後ですが、お聞きしたいんですが、債権者についても債務者に伴走できるだけの体力と知見を持つ者に限定した方がいいということで、登録制度などを設けるべきだという意見も出ておりました。参考人質疑でもこの点は問題になったんですが、やはり免許業者である銀行などにこれは限定すべきだったんではないかというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 今般の法案におきまして創設をいたします企業価値担保権制度における貸し手の範囲につきましては、金融審議会の報告書において成長資金等を供給できる与信者に対して広く利用を認めるべきという提言をいただいたことや、債権者間の公平性等を確保する観点から、債権者の範囲に制限を設けず、商社等一般事業者や投資ファンド等も自身の債権に企業価値担保権の設定を受けることができる制度としております。
 一方で、企業価値担保権の適切な活用を確保する観点から、企業価値担保権の設定は金融庁から新たな免許を受けた信託会社との信託契約によらなければならないとした上で、当該信託会社に説明義務等の必要な義務を課すこととしておりまして、こうした仕組みを通じまして、金融庁の規制、監督を受けない債権者による本担保権の濫用を防止してまいりたいと考えます。
○小池晃君 この今御説明あった新たに創設される信託業、これハードル上げずに簡素な規制の下につくられるということで、これで弊害が防止できるんだろうかということは私は疑問が拭えないんですね。
 今日、いろいろと指摘してまいりまして、ちょっと短い時間だったんですが、やはりこの投資ファンドや、別に銀行が良くてファンドが駄目だと、そんな一面的なことは申し上げませんが、しかし、やはりその投資ファンドあるいは債権回収を本業としているサービサーまでに広げるということでやはりこの企業担保権の懸念は拡大すると、これも大きな問題だと思います。
 申し上げたように、全体としては、やっぱりこれ、本来の融資の在り方ということで、私はやっぱりこういう方向性自体は否定するものではありませんし、これを本当に中小企業、零細企業まで広げていけるような仕組みとして発展させるようになれればいろんな可能性あると思いますが、しかし、やはり労働者保護という点でも非常に大きな懸念があるし、今の担保権者の問題なども大変疑問があるということを申し上げて、質問を終わります。

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