日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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2019年2月1日 参院本会議 速記録

2019年02月01日

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。会派を代表して、安倍総理と厚生労働大臣に質問します。
 厚生労働省の毎月勤労統計の不正により、雇用保険、労災保険などで二千万人を超える被害が生じています。給付を受けていた方は、失業で収入の道を断たれ、あるいは労災で一家の大黒柱を失うという、最もつらく厳しい状態にありました。それなのに、労災で死亡された遺族年金などで二十七万人、一人平均約九万円も給付が少なかったのです。
 過労自死で夫を失った寺西笑子さんは、労災認定には高いハードルがあり、被害者なのに何年も闘わないと認定されない、その上、国が数字をごまかして補償額を減らし、十五年も放置し、分かっても秘密裏に修正していた、二重三重に国に裏切られた、怒りが抑えられないとおっしゃっています。当然の怒りです。総理はこの声にどう応えるのですか。
 厚労省の特別監察委員会は、組織的な隠蔽の意図までは認められなかったとしました。しかし、その報告書の原案は厚労省が作成し、職員らの聞き取りの七割は身内である厚労省職員が行い、その場には厚労省審議官と官房長が同席して質問し、今行われているやり直しの調査にも人事課長が同席しているといいます。
 こうした調査そのものが、まさに組織的隠蔽ではありませんか。総理は、これで真相が解明され、国民の納得が得られるとでも思うのですか。
 厚労大臣に伺います。
 大臣は、参議院厚生労働委員会の閉会中審査で、しっかり第三者委員会としてやっていただいたと答弁しましたが、第三者委員会の体を成していないではありませんか。答弁を撤回すべきではありませんか。
 総理には昨年十二月二十八日に報告したと言います。なぜこの日になったんですか。この日は統計不正が初めて報道された日です。隠し切れなくなって報告したのではありませんか。
 根本大臣の下で国民の信頼を取り戻すことは不可能であります。
 総理、今の特別監察委員会による再調査ではなく、厚労省から完全に独立した組織をつくり、調査を一からやり直すべきです。国会に全ての資料を提出し、関係者を招致し、徹底した真相解明を行うべきであります。明確な答弁を求めます。
 昨年の実質賃金は、実際には大幅マイナスだった可能性が指摘されています。しかし、総理は、毎月勤労統計の数字のみを示したことはないと述べ、毎勤統計の代わりに連合の調査結果にすがりついて、五年連続で今世紀に入って最高水準の賃上げと開き直りました。しかし、これは、物価の上昇を織り込んでいない数字、名目の賃上げ率です。この五年間には消費税の増税を始め物価の上昇があり、その分を差し引いた実質にすると一%程度にすぎません。これは逆に、今世紀に入って最低になるのではありませんか。
 偽りの数字を基に賃上げを誇り、消費税増税を決めた安倍政権の責任は極めて重大ではないでしょうか。
 総理の施政方針演説には、家計消費という言葉がついに一度も出てきませんでした。賃金統計は都合のいいように偽装しながら、消費の落ち込みという都合の悪いデータは抹殺するんですか。経済の六割を占める家計消費を無視して、まともな経済対策など成り立ちません。実質賃金と家計消費が落ち込んでいるときに消費税増税を強行すれば、暮らしも経済も破壊されてしまうのではありませんか。
 総理は施政方針演説で、いただいた消費税を全て還元する規模の十分な対策を講じると述べました。最初から戻すぐらいなら、増税しなければいいではありませんか。
 総理は、消費税率の引上げによる安定的な財源がどうしても必要だと言います。しかし、増税分を戻さなければならないほど景気に深刻な打撃を与えるような税のみに社会保障の財源を頼ることが根本的な間違いではないでしょうか。安定的な財源にはなり得ないことの証明ではありませんか。
 今年度末で消費税導入から三十年です。この間の消費税収は三百七十二兆円ですが、その期間に法人三税は二百九十兆円、所得税、住民税は二百七十兆円も減りました。消費税が法人税や所得税などの穴埋めに使われ、財政再建にも社会保障の拡充にもつながらなかったことは明らかではありませんか。
 増税するなら、逆進的な消費税ではありません。アベノミクスでさんざんもうけた富裕層ではありませんか。富裕層の株のもうけに欧米並みの税率で課税をし、四百兆円を超える内部留保を抱える大企業にせめて中小企業並みの税負担率を求めれば、消費税一〇%増税分の税収は確保できます。
この道を進むべきではありませんか。
 日本共産党は、負担能力に応じた負担で経済も財政も両立させ、社会保障を充実させる本当の改革実現に全力を挙げるものであります。
 総理は、全世代型社会保障への転換とは、高齢者の皆さんへの福祉サービスを削減するとの意味では全くありませんと述べました。しかし、実態はどうでしょうか。
 下流老人、老後破産など、高齢世代の貧困と不安の増大が日本社会の深刻な問題となっています。その大きな原因が、少ない年金給付であります。現在、国民年金のみの受給者の平均年金額は月五・一万円。厚生年金受給者でも、女性の平均額は月十・二万円です。年金受給者の七割は年金額が年二百万円未満にすぎません。
 こうした中で、安倍政権は何をしようとしているか。昨年の物価指数はプラス一・〇%であり、生活水準を維持するためには年金改定率も同じにしなければなりません。ところが、マクロ経済スライドなどが発動され、来年度の年金改定率はプラス〇・一%に抑えられます。物価は一%上がっても年金は〇・一%しか上げない。つまり、来年度だけでも〇・九%の実質減額であります。その結果、安倍政権発足後の七年間を見ると、物価が五・三%上昇したのに対し、年金は〇・八%の引下げとなり、七年間で物価と年金は六・一%も乖離いたしました。総理は、これで年金生活者の、高齢者の生活水準が維持できるとでもおっしゃるのでしょうか。
 総理は施政方針演説で高齢者の就業人口増加を誇りましたが、内閣府の調査によれば、高齢世代が就労の継続を希望する理由について、ドイツやスウェーデンでは、仕事そのものが面白い、自分の活力になるから、これが回答の一位です。日本では、収入が欲しいから、これが断トツの一位です。年金だけでは生きていけない、年金が減らされ、これからの暮らしが心配だ、だから多くの高齢者が無理をしてでも働かざるを得ない、これが日本の現実ではありませんか。
 年金給付を抑制しながら、他方で生涯現役の社会を掲げれば、それは年金に頼らず死ぬまで働けというメッセージにしかなりません。これが総理の言う一億総活躍社会なのでしょうか。
 全世代型社会保障を実現すると言うなら、今すぐ解決するべき問題があります。高過ぎる国民健康保険料、税の問題です。
 協会けんぽ、組合健保など、被用者保険の保険料は収入に保険料率を掛けて計算しますから、家族の人数が保険料に影響することはありません。
ところが、国保には世帯員の数に応じて加算される均等割があり、子供の多い世帯ほど保険料が高くなります。まるで人頭税だ、そういう批判の声が上がり、全国知事会、全国市長会など地方団体からは子供の均等割の軽減を求める要望が再三再四出されてまいりました。
 二〇一五年、地方との協議の場で政府は検討に合意しましたが、その後、一体どうなっているんですか。合意してから既に四年がたとうとしています。地方との約束を果たすことは待ったなしではありませんか。
 地方団体は、国庫負担引上げによる国保料の抜本的軽減を一貫して求めています。国保の一人当たり保険料水準は公的医療保険の中でも最も高く、協会けんぽの一・三倍、組合健保の一・七倍です。全世代型社会保障と言うなら、全世代にわたり重過ぎる国保負担の軽減は急務ではありませんか。
お答えください。
 米国通商代表部、USTRが、昨年十二月、日本との通商交渉に向けて二十二の交渉項目を発表しました。USTRは今回の協定を米日貿易協定と呼んでおり、安倍政権が強調する物品貿易協定ではありません。物品貿易は二十二項目のうちの一つにすぎず、通信、金融を含むサービス貿易、知的財産、投資など広範囲にわたり、為替まで入っています。
 昨年の本会議で、総理は、アメリカと交渉するのは物品貿易協定であり、包括的なFTAではないと答弁しましたが、USTRが掲げた二十二項目はまさに包括的なFTAそのものではありませんか。安倍首相が事実と異なる説明をしてきたのか、USTRが合意にないことを発表したのか。どちらが真実なのか、はっきりさせるべきではありませんか。
 日本農業を破壊し、経済主権をアメリカに売り渡す日米FTA交渉は、直ちに中止すべきであります。総理の明確な答弁を求めます。
 沖縄県知事選挙では、八万票の大差で玉城デニーさんが当選し、辺野古新基地建設反対の圧倒的な民意が示されました。しかし、安倍政権はそれを一顧だにせず、辺野古で土砂投入を強行しています。
 大浦湾のマヨネーズ並みと言われる超軟弱地盤の存在について、政府は三年前に報告を受けながら隠蔽していましたが、地盤改良の必要性をようやく認めました。そして、総理は、地盤改良を行う場合の今後の工期や費用について確たることを言うのは困難と述べました。工事がいつまで掛かるのか、費用がどれだけ掛かるのかも分からずに赤土を含む違法な土砂投入を続け、新たな護岸まで建設するのは言語道断ではありませんか。直ちに工事を中止するべきではありませんか。
 日米両政府が普天間基地の返還を合意してから二十三年になりますが、いまだに実現していません。なぜか。代替基地を沖縄県内に求めてきたからであります。しかし、普天間基地は一九四五年四月、米軍が住民を強制収容している間に民有地を囲い込んで造ったものです。基地の九一%は私有地でしたが、対価も全く支払われておりません。
 ハーグ陸戦法規は、戦争中といえども私有地を没収することを禁じており、たとえ軍の必要で収用する場合であっても、その場合は対価の支払を義務付けております。住民を収容所に入れている間に土地を強奪し、対価も払わないというのは、どんな弁明も通用しない国際法違反の行為にほかなりません。総理には、これが国際法違反だという認識はあるのですか。国際法違反で建設された普天間基地は、無条件返還が当然ではありませんか。
 総理は、これまで二十年以上に及ぶ沖縄県や市町村との対話の積み重ねの上に辺野古移設を進めると述べました。しかし、安倍政権が一体どんな対話を行ったというのですか。問答無用で強権を発動しているだけではありませんか。
 亡くなられた翁長雄志前知事は、沖縄には魂の飢餓感があるとまで述べられました。対話を積み重ねるどころか、対話を一方的に破壊し、沖縄の人々の思いを踏みにじっているのが安倍政権ではありませんか。沖縄県民に新基地を押し付けるのではなく、米国に普天間基地撤去を求めることを強く要求するものであります。
 あわせて、屈辱的な日米地位協定の抜本改定を強く求めます。
 安倍政権は昨年十二月、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画を閣議決定いたしました。安保法制と日米新ガイドラインに基づき、日米同盟を一層強化するとともに、従来とは抜本的に異なる速度で防衛力を強化することを強調し、最新鋭ステルス戦闘機F35Bを搭載できるように「いずも」を空母に改造しようとしています。
 しかし、これは、攻撃的兵器を保有することは自衛のための最小限度を超えることになるから、いかなる場合にも許されないとしてきた従来の政府の立場をもじゅうりんするものではありませんか。
 岩屋防衛大臣は、「いずも」を改造しても攻撃型空母には当たらないと述べながら、同じ記者会見で、米原子力空母ロナルド・レーガンや中国の空母遼寧が攻撃型空母に当たるかと問われて、攻撃型空母という定義ははっきりとないと回答を避けました。攻撃型空母の定義はないと言いながら、「いずも」改造艦船は攻撃型空母に当たらない。通用するはずがないではありませんか。詭弁そのものではないでしょうか。
 「いずも」を空母化してF35Bの離発着が可能になれば、明らかに他国に打撃を与える能力を持つことになります。専守防衛の建前すら投げ捨てる安倍政権の憲法破壊を断じて許すわけにはまいりません。
 総理は、施政方針演説で改めて改憲議論を呼びかけました。しかし、総理が改憲を声高に訴えれば訴えるほど、改憲を求める世論は逆に減少を続けています。総理は、その原因が一体どこにあると考えますか。
 昨年、私も出演したテレビ番組で、自民党の萩生田幹事長代理はこうおっしゃいました。不思議なことに、世論調査で、安倍首相が進める改憲と聞くよりも、ただ改憲について聞く方が賛成が多いと。でも、これは不思議でも何でもないのではないでしょうか。憲法をじゅうりんし、専守防衛の建前も投げ捨て、戦争する国に向かう総理が改憲の旗を振ることに、多くの国民が不安と懸念を強めているからではありませんか。
 どんな世論調査を見ても、国民の圧倒的多数は改憲を国政の最優先課題とは考えておりません。国民が望んでもいない改憲を、憲法尊重擁護義務を課されている総理が、自らの権力行使の抑制を緩めるための改憲論議を国会に求める、そんなことが許されるはずがないではありませんか。このこと自体が立憲主義の乱暴極まる否定ではありませんか。
 統計不正も、裁量労働制や外国人労働者のデータ捏造も、森友文書の改ざんも、イラク日報の隠蔽も、その根底にあるのは安倍政権の政治モラルの大崩壊であります。こんな政治には未来がありません。
 日本共産党は、市民と野党の共闘で、うそのない当たり前の政治を実現し、立憲主義を回復し、憲法を守り生かし、暮らしに希望を取り戻すため、安倍政権の一日も早い退陣を求めて闘い抜く、その決意を表明をして、質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 小池晃議員にお答えをいたします。
 毎月勤労統計の事案に対する認識についてお尋ねがありました。
 毎月勤労統計について不適切な調査が行われ、雇用保険、労災保険といったセーフティーネットへの信頼を損なう事態を招いたことについて、国民の皆様におわび申し上げます。
 長い、専門性と信頼性を有すべき統計分野において長年にわたって誤った処理が続けられ、それを見抜けなかった責任については重く受け止めております。
 このような事態が二度と生じないよう徹底して検証を行い、信頼を取り戻すことが何より重要であり、再発防止に全力を尽くすことで政治の責任をしっかりと果たしてまいります。
 雇用保険、労災保険などの給付の不足分については、できる限り速やかに、簡便な手続でお支払いできるよう、万全を期して必要な対策を講じていきます。
 また、過労死等の労災認定については、認定基準に基づき適切に対応してまいります。
 特別監察委員会の調査と今般の事案の報告についてお尋ねがありました。
 厚生労働省の特別監察委員会においては、先般、それまでに明らかになった事実等について報告書を取りまとめていただいたところですが、さらに、事務局機能を含め、より独立性を強めた形で厳正に検証作業を進めていくものと承知しています。
 今回のような事態が二度と生じないよう徹底して検証を行い、信頼を取り戻すことが何より重要であり、再発防止に全力を尽くすことで政治の責任をしっかりと果たしてまいります。
 賃金の動向についてお尋ねがありました。
 これまで御答弁してきたとおり、毎月勤労統計の各月の伸び率の数字のみをお示ししてアベノミクスの成果を強調したことはありません。
 その上で、御質問ですので、この間の毎月勤労統計の動向について御説明しますと、実質賃金は、再集計後においても、それ以前に公表されていたデータと同様、二〇一七年にマイナス〇・二%となった後、二〇一八年に入ってからは月によってプラスとマイナスに振れながら推移しています。これは、賃金が増加する中で同時にエネルギー価格も上昇してきたこと等によるものであって、今回の再集計の前後でこの傾向に重立った変化はありません。
 こうした状況において、直近では、昨年の通常国会で毎勤統計の実質賃金を引用された御質問があったことから、私からは二〇一七年に入ってからおおむね横ばいで推移しておりますと答弁したところであり、その後においても毎月勤労統計を根拠に実質賃金の上昇を強調した御説明をしたことはありません。
 他方、名目賃金について見れば、再集計後のデータにおいても増加傾向が続いていることに変わりはなく、また、この場でも申し上げてきたとおり、連合の調査においては五年連続で今世紀に入って最高水準の賃上げが続いています。なお、通常、春闘の場において物価上昇を差し引いた数字で交渉が行われているとは承知していません。
 さらに、国民みんなの稼ぎである総雇用者所得については、雇用が大幅に増加する中で、名目でも実質でも増加が続いています。このように、雇用・所得環境は着実に改善しているとの判断に変更はありません。
 消費税引上げについてお尋ねがありました。
 家計消費について、世帯当たりの消費を捉える家計調査の家計消費支出は、世帯人員の減少などから長期的に減少傾向となっています。一方で、一国全体の消費を捉えるGDPベースで見ると、二〇一六年後半以降増加傾向で推移しており、持ち直しています。
 また、就労者数は二百五十万人増加し、賃上げも五年連続で今世紀最高水準の賃上げが続くなど、雇用・所得環境は着実に改善しています。経済の好循環は確実に回り始めています。
 消費税率引上げについては、法律で定められたとおり、十月に現行の八%から一〇%に引き上げる予定であると繰り返し申し上げており、この方針に変更はありません。
 今回の引上げに当たっては、前回八%への引上げ時の反省を踏まえ、反動減等に対する十二分な対策を講じることで景気の回復基調を確かなものとした上で、同時に、全世代型社会保障制度の構築に向け、少子化対策や社会保障に対する安定財源を確保してまいります。
 なお、社会保障の安定財源については、税収が景気や人口構成の変化に左右されにくく安定していること、勤労世代など特定の者への負担が集中しないことから、消費税がふさわしいと考えております。
 消費税率引上げと富裕層と大企業に対する税制の在り方についてお尋ねがありました。
 今回の消費税率の引上げは、全世代型社会保障の構築に向け、安定財源を確保するために必要なものであり、法律で定められたとおり、十月に現行の八%から一〇%に引き上げる予定です。
 企業に対する税制については、企業が収益力を高め、より積極的に賃上げや設備投資に取り組むよう促す観点から、成長志向の法人税改革に取り組んでまいりましたが、同時に、租税特別措置の縮減、廃止等による課税ベース拡大により、財源をしっかり確保しております。
 また、これまで、再分配機能の回復を図るため、所得税の最高税率の引上げや金融所得課税の見直し等の施策を既に講じてきたところであります。
 今後の税制の在り方については、これまでの改正の効果を見極めるとともに、経済社会の情勢の変化等も踏まえつつ検討する必要があるものと考えています。
 マクロ経済スライド、高齢者雇用と一億総活躍社会についてお尋ねがありました。
 マクロ経済スライドは、平成十六年の改革により、将来世代の負担を過重にすることを避けつつ、制度を持続可能なものとするため、将来の保険料水準を固定し、その範囲内で給付水準を調整する仕組みとして導入しました。これにより、物価等の上昇率ほどに年金額は上昇しないこととなりますが、現役世代と高齢世代のバランスを確保しつつ制度の持続可能性を高めることになりました。
 なお、低所得の高齢者の方への対策については、既に年金受給資格期間の二十五年から十年への短縮や、医療、介護の保険料負担軽減を実施したほか、今年の消費税率の引上げに合わせて、低年金の方への年金生活者支援給付金の創設、介護保険料の更なる負担軽減を実施するなど、社会保障全体で総合的に講じることとしています。
 さらに、人生百年時代の到来を見据えながら、元気で意欲あふれる高齢者の皆さんが希望すれば、年齢にかかわらず、学び、働くことができる環境を整えることが必要です。
 既に未来投資会議において、こうした観点から生涯現役時代の雇用制度改革に向けた検討を開始しており、この夏までに計画を策定し、実行に移す考えです。引き続き、一億総活躍社会の実現に向けた施策を進めてまいります。
 国保の保険料についてお尋ねがありました。
 本年から施行された国保改革において、交付金制度を見直し、子供の被保険者数が多い自治体への財政支援を強化しました。
 御指摘の子供の均等割保険料の今後の在り方については、財政支援の効果や国保財政に与える影響などを考慮しながら、国保制度に関する国と地方の協議の場において引き続き議論してまいります。
 また、今般の国保改革においては、国保の財政状況に鑑み、年約三千四百億円の財政支援を行い財政基盤を大幅に強化したところであり、今後とも安定的な制度運営に努めてまいります。
 日米物品貿易協定交渉についてお尋ねがありました。
 今後の日米交渉が、あくまで、昨年九月に私とトランプ大統領の間で合意した日米共同声明に沿って行われることについては、交渉を担当する茂木大臣とライトハイザー通商代表との間で直接確認しています。
 そして、この日米が合意した共同声明では、サービス全般の自由化や幅広いルールまで協定に盛り込むことは想定しておらず、その意味で、これまで我が国が結んできた包括的なFTAとは異なるものであると考えます。
 また、この共同声明では、農林水産品について、過去の経済連携協定で約束した内容が最大限である、この大前提を米国と合意しました。この点が最大のポイントであり、当然、この前提の上に、今後、農林水産業に関わる皆様の不安なお気持ちにしっかりと寄り添いながら米国と交渉を行ってまいります。
 普天間飛行場の辺野古移設に係る地盤改良についてお尋ねがありました。
 米軍キャンプ・シュワブの北側海域については、地盤改良工事が必要であるものの、一般的で施工実績が豊富な工法により、護岸や埋立て等の工事を所要の安定性を確保して行うことが可能であることが確認され、今後、沖縄防衛局において地盤改良に係る具体的な設計等の検討を十分に行うものと聞いております。
 他方、キャンプ・シュワブの南側海域については、埋立承認に基づき施工することができるため、埋立工事等を進めることは問題ないものと承知しています。
 普天間飛行場の全面返還を一日も早く実現するため、移設を進めてまいります。
 普天間飛行場と国際法についてお尋ねがありました。
 沖縄における米軍施設・区域の形成過程については、普天間飛行場を含め、国際法に照らして様々な議論があることは承知していますが、いずれにせよ、これらの沖縄の米軍施設・区域は、昭和四十七年の沖縄の本土復帰以後、米国が日米地位協定の下で我が国から適法に提供を受け、使用しているものです。
 一方、住宅や学校で囲まれ、世界で最も危険と言われる普天間飛行場については、その固定化を絶対に避けなければなりません。これが大前提であり、政府と地元の皆様の共通認識であると思います。
 政府としては、現行の日米合意に基づき、抑止力を維持しながら、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現するため、全力で取り組んでまいります。
 普天間飛行場の返還に係る沖縄県等との対話及び日米地位協定についてお尋ねがありました。
 普天間飛行場の全面返還のための移設については、これまで二十年以上に及び、地元の皆様と対話を積み重ねてきており、翁長前知事の時代にも集中的に協議を行いました。また、玉城知事の御就任後も、官房副長官と副知事の間で話合いを重ねたところです。
 私も、玉城知事とお目にかかり、今後とも様々な形で意見交換を行っていくことが大事であるとの認識で一致したところであり、政府・沖縄県協議会や普天間飛行場負担軽減推進会議などの協議の場を通じて対話を続けていく考えです。
 政府としては、引き続き、現行の日米合意に基づき、普天間の全面返還に向け移設を進めてまいります。
 日米地位協定は大きな法的枠組みであり、政府として、事案に応じて、最も適切な取組を通じ、具体的な問題に対応してきています。
 安倍政権の下では、環境及び軍属に関する二つの補足協定の策定が実現しました。国際約束の形式で得たこの成果は、日米地位協定の締結から半世紀を経て初めてのものです。
 また、例えば、日本側に第一次裁判権がある犯罪の被疑者たる米国人・軍属の拘禁についても、日米合意に基づき、実際に起訴前に日本側への移転が行われてきています。
 今後とも、このような目に見える取組を一つ一つ積み上げていくことにより、日米地位協定のあるべき姿を不断に追求してまいります。
 「いずも」型護衛艦の改修についてお尋ねがありました。
 政府としては、性能上専ら相手国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられるいわゆる攻撃的兵器を保有することは、自衛のための必要最小限度の範囲を超えることとなるため憲法上許されないと考えており、これは一貫した見解です。
 いわゆる攻撃型空母とは、空母のうちこのような兵器に該当するものと考えています。
 「いずも」型護衛艦における航空機の運用と所要の改修は、新たな安全保障環境に対応し、広大な太平洋を含む我が国の海と空の守りについて、隊員の安全を確保しつつ、しっかりとした備えを行うものであり、今後の我が国の防衛上必要不可欠なものです。自衛のための必要最小限度のものであり、憲法上保有が許されない攻撃型空母に当たるものではありません。
 専守防衛は憲法の精神にのっとった我が国防衛の基本方針であり、今後とも堅持してまいります。
 憲法改正についてお尋ねがありました。
 御指摘の国民の皆様の声については、私もしっかりと耳を傾け、真摯に受け止めたいと思います。
 他方、各種報道機関の世論調査においても、憲法を改正することに賛成する方々が一定程度認められる現状において、議論することを否定すべきではなく、今後、憲法審査会の場において各党の議論が重ねられることとなれば、国民の皆様の理解も更に深まっていくものと考えます。
 次に、内閣総理大臣は、憲法第六十三条の規定に基づき、議院に出席し、国会法第七十条の規定に基づき、議院の会議又は委員会において発言しようとするときは、議長又は委員長に通告した上で行うものとされています。
 憲法第六十七条の規定に基づき国会議員の中から指名された内閣総理大臣である私が、議院の会議又は委員会において、憲法に関する事柄を含め、政治上の見解、行政上の事項等について説明を行い、国会に対して議論を呼びかけることは、禁じられているものではありません。
 加えて、憲法第九十九条が憲法遵守義務を定めているのは、日本国憲法が最高法規であることに鑑み、国務大臣その他の公務員は、憲法の規定を遵守するとともに、その完全な実施に努力しなければならない趣旨を定めたものであって、憲法の定める改正手続による憲法改正について検討し、あるいは主張することを禁止する趣旨のものではないと考えています。
 なお、私は、大きな歴史の転換点にあって、この国の未来をしっかりと示していくとの観点から憲法に関して一石を投じたものであって、自らの権力行使の抑制を緩めるための改憲論議との御指摘は全く当たりません。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣根本匠君登壇、拍手〕
○国務大臣(根本匠君) 小池晃議員にお答えをいたします。
 第三者による特別監察委員会と総理への報告についてお尋ねがありました。
 特別監察委員会は、平成二十三年に設置され、任命された厚生労働省監察本部の外部有識者の五名に加え、統計の専門家であり、総務省の統計委員会の前委員長を務めた樋口美雄氏を委員長とするほか、統計の専門家等を加えた構成です。
 特別監察委員会では、ヒアリングから得られた供述内容や関係資料の精査等を通じて、第三者の視点から集中的に検証し、事実関係と関係職員の動機、目的、認識など、さらに責任の所在を明らかにしていただきました。
 その上で、現在、先日の国会における御議論等も踏まえ、事案に関連した職員等に、特別監察委員会の委員のみが質問する形式での更なるヒアリング、東京都など自治体へのヒアリングなど、更なる調査を行っていただいているところです。
 厚生労働省としては、統計に対する信頼、厚生労働省という組織に対する信頼を回復していくため、今後とも特別監察委員会において第三者の視点から厳正な調査を賜り、事実解明を進めてまいります。
 本件について、私は昨年十二月二十日に事務方から事案の一報を受け、経緯、原因等について速やかに徹底的に調査するよう指示いたしました。
 その後、十二月二十七日までに、統計上の賃金額が低めに出ていた可能性があり、国民経済計算や経済見通し、雇用保険、労災保険給付等への影響の可能性が明らかになったため、翌二十八日に事務方から秘書官を通じて総理に報告したものであります。本件を隠し切れなくなって報告したという御指摘は全く当たりません。(拍手)

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