日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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納税者学び合いに規制 税務相談停止 小池氏 撤回迫る 参院財金委

2023年04月03日

赤旗2023年3月19日付

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(写真)質問する小池晃議員=17日、参院財金委

 日本共産党の小池晃議員は17日の参院財政金融委員会で、税理士以外の者による税務相談に対する停止命令制度を設ける税理士法改定案は「納税者の自発的な学び合いを過度に規制するものだ」として撤回を求めました。

 

 小池氏は「税の軽減や減免などの相談にのっている人たちが命令の対象になるのではないかと心配している」として「法案の対象が明確にされず無限定になっていることに原因がある」と指摘。「脱税や不正還付の指南とは関係のない、納税者同士の自発的な取り組みについては規制の対象にならないとすべきだ」と強調しました。

 

 財務省の住澤整主税局長は、命令は「個別に判断する」ものだが、「納税者同士で一般的な知識を学び合うような取り組みを対象にするものではない」と答弁しました。

 

 小池氏は、納付すべき税額を納税者の申告によって確定するとした「申告納税制度」は、日本国憲法の「国民主権」の原則に基づく納税を通じた政治参加の理念に基づくものだと指摘。納税者の基本的権利保護のための納税者権利憲章の制定が国際的な「最低基準」だとして、「税務行政のあらゆる面に適正手続きを貫き、人権を保障する納税者権利憲章を制定すべきだ」と主張しました。

速記録を読む

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 午前中に引き続いて、インボイスの問題取り上げます。
 映画業界の問題を今日は取り上げたいんですが、映画、演劇、こういう業界は監督始めカメラマン、照明、あるいはそのヘアメーク、美術、録音、大勢のスタッフによって支えられています。そのほとんど、フリーランスであります。
 経済産業省にお聞きしますが、映画制作現場実態調査というのがあります。20230317資料➁映画の制作現場で働く人の中でフリーランスが占める割合というのはどれだけなのか、またフリーランスの方たちの映画制作による収入というのはどれだけなのか、お答えください。

 

○政府参考人(藤田清太郎君) お答えいたします。
 経済産業省で二〇一九年に実施しました映画制作現場実態調査によりますと、映画制作に関わっている方々の中で、業務委託契約や自営業、嘱託などを含むいわゆるフリーランスの形態で働いている方々の占める割合は七六・二%となっております。その上で、同調査によりますと、こうしたフリーランスで働く方々の映画制作によって得られる収入につきましては、百万円未満と回答した方は全体の三一・二%で最も多く、次いで二百万円台と回答した方は一七・六%、百万円台と回答した方は一四・五%となっており、これらを合わせますと、三百万円未満と回答した方々が全体の六割強を占めているところでございます。

 

○小池晃君 ありがとうございます。
 日本の映画業界は本当にフリーランスが多いという中で、労働環境は大変長時間、低賃金。それでも映画制作続けている理由というのは、やっぱりこの仕事が好きだからと、映画好きだからと多くが回答しています。収入少なくても、夢を持って仕事をしています。夢を諦めさせてはいけないと思います。
 カンヌ映画祭受賞など、国際的に高い評価されている映画監督の深田晃司さん、最近では「LOVE LIFE」という映画が話題になっております。深田監督、こう言っています。インボイス制度は、不安定な雇用で、しかも低収入で働く映画界の誰もが関わる問題です。免税事業者か課税事業者を選べるといいますが、フリーランスは立場が弱く、課税事業者になってほしいと言われたら拒否するのは難しい。免税事業者のままでいると消費税分は引くよという話になり、それを嫌だと言うのも難しい。文化芸術の表現は、必ずしも商業性の高いものばかりではなく、すぐに収益に結び付かない、特に新人時代は収益が上がらず、収入が少ない中で頑張らざるを得ない実情がある、インボイス制度は新人の芽を摘むことにもつながりかねない。大臣、深田監督はですね、インボイス制度は、結果として映画の多様性を否定し、映画界を衰退させかねない、こう語っておられるんですね。
 やっぱりこういう声が、これはもう映画界だけではなく、前も委員会で御紹介しましたが、アニメ、声優の分野、そういうフリーランスの方が大変多い分野でやっぱり今回のインボイスについてこういう声が広がっているわけですよ。こういう声にどうお応えになりますか。

 

○国務大臣(鈴木俊一君) 小池先生からは、いろいろな大変不安を持っておられる業界の方々の声を、前回はアニメの業界の方々の、たしか声優の方とかですね、お話をいただいているところでございます。今日は映画業界のことについてのお話をいただいたところでございますが、私ども政府といたしましては、免税事業者のままでいた場合に取引から排除されるのではないか、課税事業者になったとしても価格転嫁ができない、又は新たな事務負担が生じるのではないかといった、そういった御心配の声、これは十分に承知をしているところでございます。
 こういうことの中で、全部一々細かく、もう毎回同じことでございますので申し上げませんけれども、税制措置による激変緩和の負担軽減、それから取引環境の整備、あるいは予算措置による支援、こういったものをきめ細かくしながら、こうした十月の円滑な実施に向けて取組を進めているところでございます。まだ十分に御説明ができていない、納得がいただいていないという面もあるのかと思いますが、これからも丁寧に御説明等に努めてまいりたいと思います。

 

○小池晃君 あのね、激変緩和、経過措置、いろんなことをやられていることは、それは承知しております。しかし、やっぱり新たに税負担が生じることは間違いないわけですね。しかも期限付なわけですね。国は多様な働き方ということを奨励しているわけですよ。その一つとしてやっぱりフリーランス、この定着掲げているわけですけれども、こういうその不安定な雇用、低賃金、長時間労働の映画界の人々、しかも、日本の文化芸術予算というのは諸外国に比べても余りにも少ないということもあるわけですね。その上にインボイスの重い負担がのしかかってくるわけです。
 先ほどから、このインボイスの問題取り上げる委員の質問に対しては円滑な実施のためにと言うけれど、とても今の状況は円滑に実施に向かっているような状況ではないと私は思います。大体ね、インボイスというのは、これやって、これインボイスとてもいいなと言う人いますか。いませんよ。これで何か良くなるというもんじゃないですよ、これ。財務省だけでしょう、結局ね。誰も喜ばないようなこういうことを何でやるのか。
 結局、私は、政府は付加価値税を導入しているOECD加盟国はアメリカを除いてインボイスを導入しているんだというふうに言うわけですが、確かにそうした国、インボイス導入していますけれども、そうした国は税率二〇%を超えている、税率も三段階、四段階みたいな国ですよ。
 結局、財務省は、これだけ反対だといろんな声が上がっているのにやろうというのは、やっぱり消費税更に引き上げていくと、二〇%以上の世界を目指していると……(発言する者あり)そのとおりという声が自民党からも上がっていますよ。だから、やっぱりインボイス、今のうちに定着させておこうということなんじゃないですか。

 

○国務大臣(鈴木俊一君) インボイス制度は、繰り返しになりますが、複数税率の下で適正な課税を行う上で必要なものであると、そういうことを繰り返し申し上げているところでございます。
 そして、未来永劫ということではありませんが、岸田内閣において消費税については触れないということも言っているわけでありまして、今回のインボイスの導入と将来のこの消費税率の扱いをどうするかということは、何かそういうことが前提で今回インボイス制度を導入しようという、そういうことでは全くありません。

 

○小池晃君 未来永劫ではないんだというふうにおっしゃいましたから、やっぱり今後そういうこともあるということがあるからこういうことをやっているんでしょう。
 大体、複数税率だから必要だというんだったら、複数税率やめればいいんですよ。大体、複数税率導入して増税したこと自体が間違いなんですよ。これをやめればこんなもうインボイスなんて必要ないわけですから、消費税せめて五%に戻す、私ども廃止ということも言っていますけれども、やっぱりね……(発言する者あり)まあ、だから廃止ということも言っていますけど、やっぱりそういうふうにすればインボイスなんて要らないんですから、その道に進むべきだということを申し上げておきたいと思います。
 それから、今回の法案には、税理士でない方が税務相談を行った場合の命令制度を創設する税理士法の改正案盛り込まれていますので、ちょっと幾つか、これ財務省にお聞きしたいと思います。
 税務相談停止命令制度なくても、既に国税局は不正還付を取り締まっております。幾つか報道されている事案もあります。今回あえて税務相談停止命令制度を創設する目的は何でしょうか。

 

○政府参考人(住澤整君) お答え申し上げます。
 現行の税理士法におきましては、税理士の業務の制限違反に対する罰則、つまり、いわゆる偽税理士行為に対する罰則が設けられておりますが、税理士等でない方に対する行政上の対応でありますとかあるいは調査に関する根拠規定がなく、税務当局によるこの不正な税務相談に関する情報収集や機動的な対応が難しい、そういった面がございます。
 こういった中で、近年、SNSの普及等に伴い、税理士等でない方によって不特定多数の者に脱税指南等が行われるリスクが高まっているものと認識しております。委員が御指摘なさいましたように、例えば多数の者に脱税指南を行った者が所得税法や法人税法等違反で逮捕されたという、そういった報道が幾つかあるものと承知をいたしておりますが、こういった報道を見ますと、多数の者が脱税を行い、納税義務の適正な実現に重大な影響が及ぶ事態を防止するためには、こうした多数の者に脱税相談等が行われるより以前に行政上の対応が必要であったのではないかと考えられるわけでございます。
 さらに、実際に行政上の対応のための情報収集をしようとした場合、通常の課税調査と異なり、現在はこの調査忌避等に対して罰則が科されるような調査の根拠規定がないため、応じる必要がないとしてこの対象者が対応を拒否するといったことが少なからず発生しているという課題に直面しております。
 したがいまして、税理士等でない者による脱税相談等により納税義務の適正な実現に重大な影響が及ぶ事態を防止するために、より機動的な行政上の対応が可能となる枠組み、具体的には、脱税相談等を行う税理士等でない者に対する行政措置、命令、公告といった処分及び命令処分をすべきか否かの調査のための税務相談を行った者に対する調査規定、こういったものの整備を行う必要があるというふうに考えているところでございます。

 

○小池晃君 命令制度の目的は、不正な税務相談によって、脱税指南等によって不特定多数の者が脱税を行う等の行為を防止することということが基本だと思います。そういう説明だったと思います。
 我が国では、納税すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則とする、いわゆる申告納税制度、国税通則法の第十六条で規定をされているわけですね。申告納税制度が採用されています。お聞きしますが、命令制度の創設された後も申告納税制度を尊重した税務行政が行われるべきではないかと考えますが、いかがですか。

 

○政府参考人(星屋和彦君) お答え申し上げます。
 申告納税制度の下では、納税者が法律上の納税義務を適正かつ円滑に履行していただく必要がございまして、国税当局といたしましては、納税者サービスの充実を図るなど、納税環境の整備に取り組んでいるところでございます。
 現在法案が提出されてございます税理士等でない者が税務相談を行った場合の命令等につきましては、税理士等でない者による脱税相談等によりまして納税義務の適正な実現に重大な影響が及ぶといった事態を防止するため、より機動的な行政上の対応を可能とするためのものと承知をしております。
 国税当局といたしましては、今後とも、申告納税制度の下、納税者の納税義務の履行を適正かつ円滑に実現できるよう、税務行政を適切に執行してまいりたいと考えております。

 

○小池晃君 申告納税制度を尊重するということでよろしいですね。イエスかノーかでお答えください。

 

○政府参考人(星屋和彦君) はい、結構でございます。

 

○小池晃君 国民の生活本当に厳しさ増す中で、税の軽減とかあるいは減免、減免ですよね、脱税とかじゃなくて減免、あるいは軽減、そういう相談に乗っている人たちが命令の対象になっちゃうんじゃないかという心配をされています。それは、この法案の対象が明確になっておらず、無限定になっているということに原因があるのではないかなというふうに思うんですね。
 そこで、主税局長にお聞きしたいんですが、脱税や不正還付の指南とは関係のない納税者同士の自発的な取組については規制の対象にはならないというふうにするべきではないかと思います。納税者同士の学び合い、これは尊重されるべきだと思いますが、いかがですか。

 

○政府参考人(住澤整君) お答え申し上げます。
 今般の改正により導入される枠組みは、納税者同士で一般的な知識を学び合うといった、現在の税理士業務である税務相談に該当しないような取組を対象とするものではございません。御指摘のいわゆる学び合いが例えば単に一般的な税法の解説などにとどまる場合には、通常対象となる税務相談には該当しないものと考えられます。
 他方、今、相談に乗っている方がいらっしゃるといったような御発言がございましたが、納税者の財務状況や取引等の実態に基づく課税標準や税額等の計算といった納税申告等に関わる事項について助言を行うような場合であって、業として行う程度にそういったことが行われている場合については、税理士法上の税務相談に該当し、税理士法違反となる場合もございます。
 このように、税務相談に該当する場合につきましては、今回の命令処分を行うか否かについては、法令に基づき、その税務相談の内容が脱税や不正還付を指南するものであるかといった要件の該当性について個別に確認した上で、納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼすことを防止するため緊急に措置をとる必要があるかどうかについて、個別具体的な事実関係に基づいて判断をすることになると考えております。

 

○小池晃君 納税者同士が一般的な知識学び合ったりするというようなことで、いわゆる税務相談に該当しない自発的な取組ということについていえば、これは今回、これを阻害するようなものではないということでよろしいですね。

 

○政府参考人(住澤整君) 先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。

 

○小池晃君 停止命令が出された場合ですが、その内容は、これは遅滞なくインターネット上で閲覧できるようにするということを盛り込まれています。命令が誤りだったと不服申立てあるいは裁判で認められても、一旦ネット上に出ちゃうと、これはネット上に一旦出るともう消えないわけですね。完全に消し去るのは困難になります。それにより失われた信用、傷つけられた尊厳というのは、簡単に回復できないと思います。
 そこで、お聞きしたいんですが、こうした事態を招かないためにも、命令出すための、出す前の、命令を出す前の適正手続、これ必要ではないかと思いますが、いかがですか。

 

○政府参考人(住澤整君) お答え申し上げます。
 一般に、この行政上の命令処分を行う際には、行政手続法に定める一定の手続に従って行うことになります。その際、原則として、弁明の機会が事前に付与されることになるものと承知をいたしております。

 

○小池晃君 これは行政手続法が定める不利益処分ということに当たるということで、そういう対応をするということでよろしいですか。

 

○政府参考人(住澤整君) 御指摘のとおりでございます。

 

○小池晃君 今、いろいろとやり取りさせていただきましたが、やはりその今回の税理士法の改正案というのは、税制、税務行政に関する納税者の自発的な学び合いを私は過度に規制するというものになっているのではないかというふうな懸念が拭えません。申告納税制度を形骸させてしまうような法案は撤回すべきだということを申し上げたいと思います。
 そもそも、我が国が申告納税制度を採用しているのは、これ日本国憲法の国民主権の原則に基づいて、主権者国民が自分の税金を計算し、申告し、納税するということを通じて政治に参加するという理念に基づくものです。
 国際租税協会バーゼル総会報告では、国際的な納税者の基本的権利保護として納税者権利章典の制定が最低基準とされています。今や納税者権利憲章、権利章典、国際的にはミニマムスタンダードになっていると思います。
 大臣ね、OECDに加盟する主要国のうち、納税者権利章典、権利憲章が制定されていないのは日本だけなんですね。やはりその税務行政のあらゆる面に適正手続を貫いて、人権を保障する納税者権利憲章を制定すべきではないかというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。

 

○国務大臣(鈴木俊一君) 政府の立場を申し上げますと、御指摘のような納税者権利憲章を制定するかどうかということよりも、実際に納税者の視点に立った利益の保護や利便性の向上に向けた措置を手当てしていくことが重要であると考えております。
 例えば、これまでも、納税者が税の減額を求める更正の請求ができる期間の延長、一年から五年に延長いたしました。更正等の処分時における理由の付記、スマホを含めた電子申告の推進、コンビニ納付など納付手段の拡充など、様々な措置を講じてきたところでございます。
 今後とも、納税者の利益の保護や利便性の向上等の観点を踏まえ、税務行政を適正かつ円滑に運営をしてまいりたいと思っているところでございます。
 OECDに加盟する国のうち、この、ないものは、ドイツ、それからベルギー、そして日本であります。

 

○小池晃君 全部とは言っていませんけど、大半の国では制定されているわけです。それで、主要国と私言いましたからね。
 それで、立法事実がないんだ、じゃないかなんという話あったけども、やっぱり税務行政の現場では本当に人権侵害起こっているんですよ。(発言する者あり)実際にはありますよ。起こっていますって。で、やっぱり税務署の本当に過度なやり方で本当に苦しんでいる人いっぱいいるわけで、是非、やっぱり権利を守るということを実現するのは国際的なやっぱり流れですから、やるべきだと。
 二〇〇二年には、当時の民主党、日本共産党、社民党の野党三党で税務行政における国民の権利利益の保護に資するための国税通則法一部改正案というのを共同提出したという、そういう経過もございます。是非、納税者権利章典、権利憲章、制定を求めて、質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

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