日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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リスク回避 対案示す 日銀金融緩和見直しで小池氏 参院財金委

2024年04月16日

赤旗2024年4月11日付

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(写真)質問する小池晃書記局長=9日、参院財金委

 日本共産党の小池晃参議院議員は9日の参院財政金融委員会で、日本銀行がこれまで続けてきた異常な金融緩和政策を見直し、正常化に向かうとしたことを受け、経済や財政に与える影響とリスクを回避するための対案を示しました。日銀は安倍政権の下、2013年から、「異次元の金融緩和」と称して大量の国債を買い入れ、膨大なマネーを供給し、16年には「マイナス金利政策」まで追加されました。異次元緩和は、円安を進め、物価を押し上げ、実質賃金を低下させて、国民を苦しめてきました。この政策が破たんし、3月に金融政策の枠組みを見直すことを決めました。

 

 日銀の金融政策の転換後、はじめて質疑に立った小池氏は、これまで日銀が大量に買い入れてきた国債など、異次元緩和の“負の遺産”が、589兆円を超えて過去最大に膨らんでいることにふれ、日銀の財務の健全性を保ちつつ、保有国債を減らすため、アベノミクスを推進した政府にも責任を果たさせるべきだと指摘しました。

 

 その上で、ドイツ連邦銀行は3年前から、金融緩和の見直しを見越し、剰余金の国庫納付を停止して、当期利益相当額を引当金の積み増しに充てていることを示し、日銀も引当金をさらに積み増すべきではないかとただしました。植田和男日銀総裁は「財務の状況や健全性に留意しつつ適切に対応する」と述べるにとどまりました。

 

 小池氏は、これは日銀だけの課題ではなく、政府、財務省、国会を含めて考えていくことが必要だ主張。日銀保有の国債の利子収入などの資産の運用益を、国庫納付金として召し上げるのでなく、日銀のバランスシートの縮小局面での財務の悪化に備えて、債券取引損失引当金の積み増しにあてることで、金融危機を回避すべきだと財務省に対応を迫りました。矢倉克夫財務副大臣は「日銀の財務状況には、答えを差し控える」と責任回避しました。

 

 小池氏は、「日銀は世界各国の中央銀行とは比べものにならないリスクを抱え込んでいながら、利息や分配金をもとに国庫納付を継続している。それが大軍拡のための財源強化に充当されることは、到底許されない」と主張しました。

速記録を読む

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。よろしくお願いします。
 総裁は、今日もマイナス金利解除をめぐって賃金と物価の好循環の強まりが確認されたということをおっしゃっておられます。政策決定会合の後の会見では、小規模の企業ではなかなか賃金を上げていくのは大変なところも多いと、中小企業については絶対ある程度以上賃金が上がるという自信ないし根拠があってということでは必ずしもないというふうにかなり正直におっしゃっておられます。実際に、実質賃金は二十三か月連続マイナスというのは昨日出た。
 春闘も、賃上げ率は高いといいながら、これは、春闘交渉に関与しない中小企業は多数存在しますし、パートタイム労働者など非正規ワーカーの比率が高まっているわけですね。中小企業には、今、ゼロゼロ融資の返済の問題や、あるいは社会保険料の負担などものしかかって、企業倒産は三割も増えたということは今日も報道されています。
   〔委員長退席、理事山田太郎君着席〕
 そこで、総裁にお聞きしたいんですが、やはり今後の賃金の動向については、これは特に中小企業については極めて慎重な見方が必要ではないかと思いますが、いかがですか。
○参考人(植田和男君) 中小企業の賃金でございますけれども、若干先ほど来のお答えと重なるかもしれませんが、業種や個別の企業によってなかなか苦しいところがあるということはよく認識しております。
 そうでありますけれども、一つには、私どもの三月の決定会合の前に、私どもの支店のネットワークを使いまして、様々な中小企業の賃上げをめぐる状況についてヒアリングを実施しております。その下で、その結果といたしまして、企業収益は一応全体的には改善を続けているところが多い、労働需給が引き締まり、人手不足の下で対応が必要であるという声が多く聞かれ、そうした中小企業を含め、幅広い範囲の企業で賃上げの動きが続いているということを一応確認いたしました。
 それから、同じヒアリングでございますし、さらには、ちょっとその後になりますが、先日開かれました支店長会議でも、規模が小さい先を中心としまして、大企業の春闘の妥結動向を見極めた上で賃上げを判断していきたいという声も多く聞かれました。さらに、過去にもそういうパターンがかなりあったということもデータ分析等から確認しております。
 こういうことから総合的に判断しまして、今後、中小企業にもある程度賃上げの動きが広がっていくというふうに判断したところでございます。
○小池晃君 私はちょっとそこまで楽観的には見られないです。
 これはまあ主要には政府の問題ですから、政府に対してはやっぱり中小企業の賃上げ強く求めていきたいと思うんですが、十二月に私この委員会でも質問をさせていただきまして、やはりそのコミュニケーションは大事だ、これはもう総裁もそのことはかなり強調されたと思うんですね。
 やっぱり異次元の金融緩和という異常な政策から正常化していく、これをスムーズに進めるためには本当に市場とのコミュニケーションというのは極めて大事だと思いますし、この間、そういった努力もされてきているというふうに私は見ているんです。
 で、イングランド銀行のことを前回は取り上げました。かなり詳細なシミュレーションを示して、やっぱりこういうコミュニケーション大事じゃないかという質問をしたときに、総裁は、出口に近づいたときの課題であるというような趣旨の発言もされたかと思うんですね。
 もちろんいろんな要因があるということはもう十分承知をしております。しかし、有識者からもいろんな要因を置いた上での試算も様々出されているわけですね。
 日銀自身が、これからの日銀の戦略と、それに基づくシミュレーションということを示していくことは、これはとても重要だし、今後必ず必要になると思うんですが、いかがでしょうか。
○参考人(植田和男君) 海外の中央銀行の例にまずついてでございますけれども、これは、イングランド銀行やFRBのようにシミュレーション結果を開示している国もございます。一方で、ECBのようにシミュレーションは開示せずに説明を行っているという国もございます。
 私どもでございますが、もちろん、財務と金融政策運営との関係について、その基本的な考え方を御説明し、幅広い理解を得ていくことは極めて重要であると考えていますし、九月には私はこのテーマについて講演をしたところでありますし、小池委員とのこの前の質疑の後、私どもの調査論文を公表したりもしております。
 その上で、もっと具体的なシミュレーション結果をという御質問だと思いますけれども、それを出すためには、将来の短期金利の経路について前提を置いたり、それからまた、先ほど来議論になっておりますバランスシートの縮小のタイミングとかペースについても前提を置いたりする必要がございます。
 こうした点について、不測の思惑を引き起こすリスクもゼロではないと考えて、現在、対外的な公表は控えているところでありますが、それはそれとして、丁寧な説明は行ってまいりたいと思っております。
○小池晃君 私は、海外の取組にも学んで、今後の課題としてこれは検討、すぐにするということではなくても、これは検討していく必要があるということを申し上げておきたいと思います。
 その上で、バランスシートについて聞きたいんですが、これ、異次元緩和の負の遺産、五百八十九兆円を超えて過去最大ということ。今後も長期国債買入れ続けると言っているわけですから、ペースダウンはするとしても、これバランスシートは依然として拡大を続けるわけですね。今日も総裁は、いずれはこれは縮小ということを視野に入れて、どこかの時点で買入れ額も減らしていくということも発言されたと思うんですが、これ、財務の健全性を維持しながら保有国債減らしていくというのは、これなかなか大変な、困難なことではないかなと思うんです。
 これ、どうやるかって、なかなか答えられないと思うんですが、考え方をお聞きしたいんですけど、このテーパリングというのは日銀が独力で進めていくべきものとお考えなのか。私は、アベノミクスで異次元緩和を推進してきた政府にもやっぱりこれは責任があると思います。やっぱり応分の負担というか協力をしていくという、それを求めていくべきではないかなというふうに思うんですが、この問題についての考え方を伺いたいというふうに思います。
○参考人(植田和男君) 私どもとしましては、今、小池委員御指摘もありましたが、バランスシート縮小、保有長期国債の残高を縮小していくということに当たりましては、新規の買入れの額を現在の額よりも減額していくということでもって実現していきたいというふうに思っております。タイミング等については、現時点で確定的なことは申し上げられません。
○小池晃君 ちょっと具体的に聞きたいと思うんですけど、これやっぱり縮小局面での財務リスク、これによって信認の低下が起こるということは絶対あっちゃいけないことだと思うんですね。これ、日銀だけの課題ではなくて、政府、財務省、そして国会も含めて考えておかなければいけない課題ではないかなと思うんですね。
 例えば、ドイツ連邦銀行は、三年前の二〇二〇年決算から、利上げ局面を見越して剰余金の国庫納付を停止すると、当期利益相当額を引当金の積み増しに充てている、こういうことをやっています。二〇二〇年の引当金見ますと、百八十八億ユーロということで、三兆円超えるんですね。
 今日お配りしていますけど、日銀のこの債券取引損失引当金ですけれども、これ積み増しはされているんですが、二〇二〇年度でいうと、これ積み増し額は三千九百八十八億円です、四千億円弱。二一年度、二二年度も四千億円程度の積み増しであります。一方で、国庫納付金は二〇一九年度から一兆円超えて、二〇二二年度はもう二兆円に迫ってきているんですね。
 昨年十二月の多角的レビューワークショップの議論では、縮小局面では、中央銀行の財務リスクが着目されて金融政策をめぐる無用の混乱が生じる場合、そのことが信認の低下につながるリスクがある、このため、財務の健全性を確保することは重要だと日銀が報告をされています。
 過去を振り返ってみると、私も、九〇、金融危機のときも随分議論をいたしました。九六年住専破綻から、その後、二〇〇二年頃まで続いた金融機関による貸し渋り、貸し剥がし、リーマン・ショック押し寄せた二〇〇八年から九年と、金融が揺らいだときに、本当に中小企業大変な事態になるということ経験したわけです。そういったことは絶対に避けなければいけないというふうに思うんですが、今は、まだ長期国債買い続けるということも表明もされました。バランスシートの拡大局面で、全体の収益拡大しているわけで、やっぱり十分な備えのために引当金を更に積み増すということをやるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○参考人(植田和男君) 御指摘のように、私ども、財務の健全性を確保する観点から、準備金や債券取引損失引当金の積立てなどで自己資本の充実に努めてまいりました。こうした債券取引損失引当金は、収益の振幅を平準化して財務の健全性を確保する観点から、今後、局面によっては大きな効果を持つというふうに考えております。
 今後とも、この引当金の積立てにつきましては、私どもの財務の状況、それから収益の動向等を総合的に勘案しつつ、毎年度の決算において適切に対応してまいりたいと考えております。
○小池晃君 いや、ちょっと、もうちょっと、やっぱり非常に、世界の中央銀行から見ても本当に莫大なバランスシートを持っているわけですね。だから、リスクが物すごく大きい。このままのペースでいいんだろうかと。やっぱり十分な備えが必要なんじゃないかということを私はお聞きしたかったんですが。
   〔理事山田太郎君退席、委員長着席〕
 加えて、ETFの運用益についても伺いたいと思うんですが、総裁は、朝日新聞のインタビューで、ETFについて、時価評価で七十兆円もあるので、持ち続けるか処分するかは非常に難しい判断で、時間を掛けて考えますと。処分の考え方は、適正な価格で、大きな損が出ない、日銀に大きな損が出ないこと、マーケットを混乱させないということは確保したいとおっしゃっていて、このETFの運用益も、二〇二一年度は八千四百二十六億円、二二年度は一兆一千四十四億円に上るわけですね。株高ですから、二三年度は更に、一兆五千億円超えるぐらいになるのかというふうに思われるわけです。
 この処分については、植田さん、総裁言われるように時間を掛けて考えるということになると、一兆円規模の運用益がしばらく日銀に入ってくるわけですね。やっぱり、この運用益を縮小局面のために引き当てるということもやっぱり今後の日銀にとっては必要な備えではないかというふうに思うんですが、その点はいかがですか。
○参考人(植田和男君) 繰り返しになって恐縮ですが、私ども、準備金の積立て、債券取引損失引当金の拡充など、今後に備えて必要な財務への手当てを行い続けてきているところでございます。
 抽象的な言い方で恐縮ですが、引き続き、財務の健全性にも留意しつつ、適切な政策運営に努めてまいりたいと考えております。
○小池晃君 いや、じゃ、さっきとまとめて、やっぱりこういうリスクに備えて、やっぱり財務の健全性ということはおっしゃるわけですから、やはりそれに備えるような対応ということは、いろんな選択肢あると思います。でも、そういったやっぱり財務の健全性を保つための取組は必要なんじゃないか、その認識はいかがでしょうか。
○参考人(植田和男君) 繰り返しですが、準備金、引当金を積み立てていく、それをベースに今後のリスクの顕現化に備えるという試みは続けていきたいというふうに考えております。
○小池晃君 この引当金に充てられないか財務省と協議しているという報道もありますが、協議されているんでしょうか。
○参考人(植田和男君) 日本経済新聞の報道のことをおっしゃっているんだと思うんですけれども、個別の報道についてはコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
 私どもの財務につきましては、常日頃から財務省とコミュニケーションは取っております。ただ、その具体的な内容についてはコメントは差し控えさせていただければと思います。
○小池晃君 財務省に伺いたいと思うんですが、やっぱりこういうリスク、先行き、利上げ局面が来るとすれば、これ非常に大変なリスク、財務運営上のリスクがあるわけで、やっぱり私は国庫負担納付金として召し上げるばかりではなくて、やっぱり日銀のバランスシートの縮小局面の財務悪化に備えてやっぱり引当金積み増すことは必要ではないかと思いますが、いかがですか。
○副大臣(矢倉克夫君) 将来の日銀の財務状況についてのお尋ねであります。これは、その時々の金融政策や金利、為替の動向などに左右されるものでありますので、政府としては日銀の財務の悪化を前提とした仮定の御質問にはお答えすることは差し控えたいと思います。
 その上で、先ほど植田総裁もおっしゃっておりました、日銀、業務運営における自主性を前提とした上で、準備金、また債券取引損失引当金の積立てなどにより自己資本の充実にも努めているものと承知をしております。
 いずれにしましても、日銀においては、引き続き政府と密接に連携を図り、物価安定目標の持続的、安定的な実現に向けて適切に金融政策運営等を行うことを期待しております。
○小池晃君 もう質問はしませんが、日銀はこれまで、事実上財政ファイナンスと言われているようなことをやってきて、その結果、世界の中央銀行とは比べ物にならないようなリスクを抱え込んでいる。にもかかわらず、利息、分配金、いまだに巨額の国庫納付を続けている。それが大軍拡のための財源に使われるなどということは、これは到底許されないということも付け加えて、私の質問を終わりたいと思います。

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