日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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巨額損失 政府の責任重大 官民ファンド巡り小池氏 改定特別会計法が参院本会議で成立

2025年05月22日

赤旗2025年5月17日付

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(写真)質問する小池晃書記局長=15日、参院財金委

 財政投融資特別会計投資勘定の資金を、会計年度を超えて使えるようにする改定特別会計法が16日の参院本会議で、自民、公明、国民民主などの賛成多数で可決、成立しました。日本共産党、立民などは反対しました。日本共産党の小池晃書記局長は15日の参院財政金融委員会で、大企業への巨額の支援が拡大すると批判しました。

 

 投資勘定を原資とする官民ファンドは、数々の案件で巨額の損失を生み、その審査や管理のずさんさが問題となってきました。小池氏は、過去にも不透明な投資があったとして、海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)が、米国の「テキサス新幹線」開発に対して、当初の出資47億円だけでなく2018年以降もその8倍に当たる360億円もの投資を続けたあげく、破綻したことをあげました。

 

 小池氏は、追加投資の前年、第1次トランプ政権誕生直後の日米首脳会談の共同会見で、安倍晋三元首相が「(高速鉄道事業が)米国に新しい雇用を生みだす」と述べたと指摘。「日米首脳間の合意があったから撤退できなかったのではないか。政府の責任は重大だ」と追及しました。加藤勝信財務相は「多額の損失を出したのは遺憾」と述べるのみ。小池氏は「問題の解明なしに投資勘定を拡大することには反対だ」と表明しました。

 

 小池氏はまた、法案が半導体企業ラピダスへの巨額支援を可能にするためのものだと批判し、関連の大手企業が出資額の1万倍の内部留保を蓄えていることを示し、公費でなく関連企業の責任と負担を基本とすべきだと主張。投資勘定の原資を一般会計の財源にすれば生活関連予算に回すことができるとし、投資勘定の廃止も含めた抜本的な見直しを求めました。

速記録を読む

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 本法案は、財政投融資特別会計投資勘定の一部を会計年度を超えて投資勘定に留保できるようにするというものであります。
 投資勘定というのは、これは財政投融資改革の中で廃止を含む検討の対象となったものです。投資勘定を廃止してNTT株などの政府保有株の配当を一般会計の財源とすれば、これは生活関連予算などにも回すこともできたわけですね。
 大臣、なぜ廃止せずに更に拡大をするんでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君) そのためにちょっとこの間の経緯、簡単に短く。済みません。
 特別会計改革においては、区分経理の必要性の検証、剰余金等の活用などが議論され、そうした議論の一環で、投資勘定については、御指摘のとおり、将来において民間投資その他の状況を勘案し、その廃止を含めて検討するとされました。
 その後、平成二十八年、令和三年に実施された行革推進会議によるフォローアップなど、節目節目において特別会計としての区分経理の必要性等が検証されました。そこでは、出資とリターンとの関係を一元的に管理し、全体としての成果を一覧性を持って分かりやすく示すため、一般会計などと区分して経理する必要がある旨が確認されたところでございまして、言わばその存続の必要性が認められてきたものと承知をしております。
 産業投資については、こうした状況などを踏まえ、その役割をより適切かつ効果的に果たしていくため、必要な見直しを随時行ってきたところであり、今後とも適切な管理運営を図っていきたいと考えております。
○小池晃君 適切かつ効果的にやられてきたのかということが問われると思うんですね。
 先ほどからの、いわゆる母屋でおかゆをすすっているのに、離れではすき焼きをやっているという例えが繰り返されていますけど、今回の法案について言うと、これは衆議院で、なかなか面白い話で、要するに、すき焼きの肉が余ったんで、冷凍して次の年にも使えるようにしようということじゃないかという例えがあるんですね。そのとおりだと思うんですが。その例えに、更に言えば、離れでやっていたすき焼きが黒焦げになってしまっているというのが今の実態ではないかというふうに思うんです。
 無謀な投資に使われて大きな損失出してきた最たるものが、先ほどから出ている海外交通・都市開発事業支援機構、JOINによるダラスとヒューストンを結ぶテキサス高速鉄道事業、融資額、出資額をお示しください。
○政府参考人(飯塚秋成君) JOINは、テキサス高速鉄道事業に対し約四百十七億円の投資を実施しました。出資は約四十七億円でございます。また、融資は約三百六十億円であり、社債引受けにより実施されました。
○小池晃君 これ、当初出資額の八倍も追加出資をして、着工のめどすら付かずについに撤退をしたわけですね。JOINについては、そのほかミャンマーなどの事業も含めて、累積損失が九百五十五億円に及ぶわけです。
 昨年のJOINについての有識者委員会では、テキサス高速鉄道事業について委員から、二〇一八年に多額の社債を引き受けているが、その時点で社債引受けを行わずに途中で撤退できた可能性はなかったのかという指摘もされています。何でこの時点で引き返さなかったんでしょうか。
○政府参考人(飯塚秋成君) テキサス高速鉄道事業は我が国の新幹線技術の導入を前提とするものであり、そのためには米国での許認可の取得が必要であったところ、米国政府の方針の変化により許認可の取得までに長期間を要しました。許認可を取得できれば、資金調達が進み、事業が大きく前進することが見込まれ、実際にも徐々に進捗が見られていたことから、日本の新幹線技術の活用を前提とした本事業の実現に向けて累次の資金拠出が行われてきたところです。
 有識者委員会の最終報告では、撤退基準の明確化などのリスク管理の指摘がなされており、これらの改善事項に真摯に対応してまいります。
○小池晃君 アメリカで政権交代もあったということで、いろんな計画が思うようにいかなかったということなんですが、それだけなのか。
 JOINが撤退もせずにずさんな融資を続けていた間に何が起こっていたかというと、二〇一七年一月に第一次トランプ政権が誕生します。すぐさま、安倍晋三元総理が訪米をして、日米首脳会談に臨んでいるわけですね。このときの日米共同記者会見で安倍氏は、高速鉄道についてこう述べています。トランプ氏のリーダーシップで今後高速鉄道など大規模なインフラ投資が進められる、日本は新幹線やリニア技術など高い技術力で大統領の成長戦略に貢献できると、米国に新しい雇用を生み出すことができると、こう言っているんですね。こうした日米首脳間の合意があったから撤退できなかったんではないか。テキサス新幹線は政府内で腫れ物を触るように扱われてきたという報道もあるわけです。
 大臣、今までの経過も踏まえて、米国の雇用創出のためというふうに安倍元総理が言っているんですが、そのために高速鉄道建設事業に貴重な公的資金をつぎ込んだ挙げ句、これはまあ事実上は破綻したと言っていいと思うんですが、これ、私、政府の責任は重大ではないかと思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(加藤勝信君) JOIN、結果において多額の損失の計上がなされたこと、これは出資者である財務省としても大変遺憾なことと考えております。
 テキサス高速鉄道事業を含め、JOINが行う個別事業の採択や撤退、一義的にはJOINによる経営判断や国土交通大臣の認可によるものというふうに認識しておりますが、財務省としても、これまでJOINの財務状況等を勘案し、事業の財源となる産投出資を行ってきたところであり、今般のJOINの損失計上を受けて取りまとめられた検証結果なども踏まえ、主務省庁との連携強化やモニタリングの高度化など、産業投資の運営の改善を図っているところであります。
 国交省において、JOINにおいては自ら昨年十二月に策定した改善策等に取り組んでいると承知しておりますが、財務省としても、改善策等を通じてできるだけ早期の損失解消が図られるよう、しっかりと対応していきたいというふうに考えております。
○小池晃君 こうしたことについて、やっぱり、きちんとその経過も含めてどういうことだったのか、問題点どこにあるのかということを解明することなしに更にこの投資勘定を拡大するということは私は疑問があります。日本の新幹線技術が世界で活用されるということはこれは否定しませんけど、非常に不透明な経過の中で莫大な損失を生むようになった産業投資の在り方というのが問われているんではないかなと思うんですね。
 さらに、投資勘定で、今回、この法案でいうと、投資勘定で余ったお金を一般会計に戻さず一旦留保してエネルギー特別会計に繰り入れることと一体的な体制整備だと、そのことが目的ではないと最初そういう議論ありましたけど、まあ一体の体制整備です、これね。で、その資金で半導体企業ラピダスに巨額の支援を行おうというふうにしているわけですね。だからこれ、離れですき焼きやっていったら、今度は別の家でしゃぶしゃぶパーティーやるからそっちに肉を回してくれみたいな話ですよ。こういうことではないか。
 五月八日の日経新聞のコラムではこう言っています。現在の日本は長い経済低迷にあえいできたとはいえ、明治維新期ではない、産業振興に政府が人、物、そして巨額のお金を投じる時代ではないはずだ、潤沢な民間資金をいかに活用するかが最優先のテーマではないかというんですね。私はそのとおりだというふうに思うんです。
 半導体企業ラピダスへの出資企業八社の出資額の合計は七十三億円なんですね。七十三億円しか出資していない。一方で、この出資企業の内部留保を合計すると、出資額の一万倍の七十三兆円なんですね。今、一千億円追加出資しようという話もあるようですけど、それでも、本当にそれらの企業が持っている財政力から比べればもう、まあはした金とは言いませんけど、一千億を、ごく僅かですよ。
 半導体というのは、これ、家電や自動車に欠かせないものです。しかし、それをもって特定企業への破格の支援を正当化することは私はできないと思うんですね。製品の安定確保というのは、これは電機や自動車など半導体を使う企業が主体となって民間の責任で行うべきものだと、本来、思います。ですから、半導体産業への支援というのは、対応は、特定企業への巨額の支援ではなくて、関連の大手企業の責任と負担を基本にすべきではないかというふうに思います。
 これ、政治家としての考え方を問うという質問になるかと思いますが、大臣、お答えいただきたいというふうに思います。
○国務大臣(加藤勝信君) 基本的にこうした、何といいますか、経済における投資というのは、基本的に民間によってなされていくべきものだと、それはそのとおりだと私も思います。
 ただ、それを原則としたなら、今、今日の状況を見ると、例えば、日本における半導体不足、あるいは経済安全保障上の問題も含めて、それに対してどう対応していくのか。それから、各国においても、こうした課題に対して、公的資金も入れながら、やっぱり一つ一つの研究開発ないし投資規模が非常に広がってきている、そういったものにどう対応していくのか。また、国内において、残念ながら民間投資が、今設備投資百兆を超えるようになってはまいりましたけれども、まだまだ十分動き出していない。そうしたことを踏まえる中で、まさに呼び水としてこうした産業投資といったものに対して我々しっかり取り組んでいく必要があるというふうに考えているところでございます。
 今、半導体分野への支援のお話がございましたけれども、これについては、昨年秋に決定したAI・半導体産業基盤強化フレームに基づいて、民間企業だけでは必要かつ十分な投資が行えない場合には、国から支援を行いながら、民間事業者の予見可能性を高め、効果的に半導体分野への民間からの投資を促進していくと、これが重要と考えているところでございます。
○小池晃君 民間にできることは民間にということを盛んに言ってきたわけですよ。で、民間にはかなりの、民間というかまあ大企業ですよね、にはかなりのその蓄積があるわけですよ。やっぱりそれを生かさせるということを、呼び水と言いながら、公的資金を入れることを一切否定はしませんよ、しかし、呼び水どころか大量の公的資金を投入して民間はごく僅かだと、こういう状態でいいのかと。JOINだってそうなんですよ。あそこだって、官民ファンドといいながら民のお金ほとんどない、ほとんど官ですよ。
 やっぱり、こういうやり方で国民の貴重な公的資金を産業支援のために注ぎ込むと、そういったことをやるよりも、今やるべきことはもっと暮らしを、あるいは社会保障をしっかり支えていくことではないかということを申し上げて、質問を終わります。

 

(反対討論)

私は、日本共産党を代表して、特別会計に関する法律の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
 本法案は、財政投融資特別会計投資勘定の一部を会計年度を越えて留保し、次の年度に使えるようにするものです。
 しかし、本来、財政法は、毎年度必要な予算を計上し、一会計年度内に使い切るという会計年度独立の原則に立っており、特別会計内での予算繰越しはあくまでも例外としなければなりません。
 しかも、投資勘定を原資とする官民ファンドは数々の案件で巨額の損失を生み、その審査や管理のずさんさが問題となってきました。二〇二三年度決算で九百五十五億円もの巨額損失を出した国交省所管の株式会社海外交通・都市開発事業支援機構、JOINはその典型です。中でも、米国でのテキサス高速鉄道事業は国策として進めた挙げ句、破綻したものであり、政府の責任は極めて重大です。
 また、本案により、半導体、AI産業の特定企業に十兆円以上を出資するという国策に沿って公的支援体制を整備することになります。ラピダスには既に一・七兆円以上の巨額の公的資金投入が決まっていますが、半導体産業への対応は関連の大手企業の責任と負担を基本にすべきであり、一部の企業体にこのような巨額の公的支援を行うことには重大な問題があります。
 投資勘定の原資となるNTT株など政府保有株の配当は、一般会計の財源にすれば生活関連予算に回すことができます。特別会計法では、五年に一度、特会の存廃を含めた検討が義務付けられており、来年は見直しの年となります。財投投資勘定の資金の使い道については、廃止も含めた抜本的な見直しが必要です。
 以上を反対の理由とし、討論を終わります。

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