日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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2016年3月10日 参院予算委員会 速記録

2016年03月10日

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 林公述人、加藤公述人、今日はありがとうございます。
 加藤公述人にお伺いをしたいと思います。
 日銀は異次元緩和、強力な金融緩和をやっているわけですが、出口についてなかなか説明をしないんですね。この点は他国の中央銀行はどうなのか。FRBは、入口のところで既に出口について基本的な考え方を示して、国庫納付金に与える影響なども説明をしている、試算を示しているわけですが、出口のリスク、コストについて説明をしているというふうに聞いているんですが、中央銀行としてはやっぱりこの点どうすべきなのか、御意見をお伺いしたいと思います。

○公述人(加藤出君) 確かにFRBに比べると、やっぱり出口に関する日銀の説明は不足しているということはあるかと思います。
 FRBの場合、議会から、こんなに大量に市場から債券を買い取ってあとどうなるんだということを、主に共和党サイドから激しい批判もあったので、その議会に答えるという意味合いもあってかなり説明していたということがあるかと思いますけれども、あと、日銀もある程度出口政策のイメージは既に説明されているわけですけれども、余り踏み込んだことを言っていないのは大きく二つ理由があるかと思いますが、一つは、期待に働きかける政策、インフレを二%にしますよといって、それをみんなに信じてもらってインフレ率を上げるという政策なので、それが実現する前に出口の話を余りしたくない、できないという、その政策のアプローチからきてしまう制約があるんだと思います。
 あともう一つは、やっぱり根本的な問題としては、これだけ巨大な政府債務のある我が国で国債を猛烈に買い取っているということで、どうやって将来の日銀が国債の買入れをやめていったときにうまくソフトランディングを長期金利ができるのかというところの問題というのは、財政再建とも直結してくる話でしょうから、実際のところなかなかそこを日銀の方からイメージをつくれないということと、二つ理由があるのかなと推測します。

○小池晃君 国会でもかなり問いただしているんですけど、答えないんですね。おっしゃるように、やっぱり政府も含めたこれは責任だと私も思うので、ちょっと引き続きこの問題を取り上げていきたいというふうに思います。
 それから、二%物価目標が個人消費に与えた影響についてちょっとお伺いをしたいと思うんですが、期待物価上昇率を引き上げる、今もお話ありましたが、実質金利が下がれば投資が進むんだと。そうなっていないわけであります。
 個人消費について、原油価格が下がってきてはいますけれども、円安の影響で食料品価格など生活必需品の物価も上がって個人消費に悪影響を与えた側面もあるのではないかというふうに思うんですが、この間のこの日銀の行動が個人消費に与えた影響についてはどのようにお考えでしょうか。

○公述人(加藤出君) 日銀の政策によって、円安、株価である程度消費者のマインドも明るくなったと、それから大手企業を中心に賃上げもあったということでのマインドの好転というのはまあ実際あったんだと思いますが、ただ、円安主導で輸入物価を上げていくと、一番顕著なのは、食品価格が上昇すると生活コストの上昇になりますから、ほかの消費が停滞してしまうということが起きてきたこの三年間ということだと思います。
 ですので、賃上げに伴う、購買力の増加に伴う物価の上昇といういい形のスパイラルが起きればいいわけですけれども、金融政策だけで早期にインフレを起こそうとすると、まずは輸入物価を押し上げてということにやっぱりどうしてもなってしまいますので、その点では、消費においてはマイナス面も出てしまっているということゆえに、先ほどの私の資料の七ページ目の消費者態度指数も、今の政策を始めた三年前よりも必ずしもマインドが高い位置にいないというのは、やっぱりそういう面も出てしまっているということだと思います。

○小池晃君 今お話あった消費者態度指数、これはもう二月、がたっと落ちているわけですね。これはやっぱり、あのマイナス金利という政策そのもののイメージ、まあ国民からするともう、何というか打つ手なしというようなイメージを与えてしまう。それがこの消費マインドにかなり大きな影響を与えたのではないかと思いますが、その点いかがでしょうか。

○公述人(加藤出君) 例えば、ECBが一四年六月にマイナス金利を始めたときなんですが、ドラギ総裁の説明は、当面これは金利の底ですという説明をして、まあ実際はその後下げていくんですけれども、やっぱりそのマイナス金利という未知の政策ゆえに国民にショックが出ないように慎重に導入していったわけですね。なので、マスコミの取上げ方も当時そんなに大きくなくて、記者会見の記者の質問も二つくらいかな、ほとんど余り質問が出ないぐらいの注目度の低さでそうっと始まっていったわけなんですが、まあ日本の場合、その緩和の、これからどんどんマイナス金利を下げますよという印象を強く出したこともあり、翌週、長期金利が急速に低下してマイナス圏に入っていったということも相まって、その不安感が強まったということなんだと思います。
 ただ実際は、先ほど申し上げましたように、個人の預金金利がマイナスになるということまではいかないんだと思いますけれども、ただ、やっぱりどうしても、本来、通貨というのは価値保存機能というのがあるわけですが、それがマイナス金利だと、ほっておくと価値が減っていくのかという印象を余り過度に与えてしまうと、かえって消費や投資にはマイナスになってしまいますので、やっぱりそういう意味では、ちょっとその最初のイメージを強く出し過ぎたという問題はあったかとは思います。

○小池晃君 最後に、投機マネーとの関係、ちょっとお伺いしたいんですが、原油価格の急落、これは需給関係だけでは説明できないわけで、やっぱり、世界もう全体で株、土地、金利、為替も変動幅が大きくなっていっていると。これはやっぱり、この間、世界の中央銀行で金融緩和やっている、これがやっぱりその原因だというふうに思うんですが、その問題点、金融緩和と投機マネーの関係について、公述人の考え方、お聞かせ願いたいと思います。

○公述人(加藤出君) おっしゃるように、それはリーマン危機以降の先進国の金融緩和で、局所的にはバブルというのはやはり起きているわけで、その巻き戻しが今年の一月から部分的に起きていて混乱が起きていると言える面もあると思います。また、スウェーデンでも今盛んに、インフレを二%にするためにここまでマイナス金利とかをやって大丈夫かという議論が結構起きていまして、スウェーデンの場合は元々住宅バブルぎみのところにこれが起きているものですから、余り過度に金融政策に依存しない方がいいのではないかという議論は結構行われていたりもします。
 日本の場合、人口が減っていきますので不動産バブルというのは局所的にしか起き得ないかなとは思いますけれども、ただ、余り金融機関や機関投資家を追い詰めて、安全資産の利回りを押し下げ過ぎて追い詰めてしまうと妙な投資行動が起きてしまうというリスクはあり得ますので、そこは注意しながらやっぱり見ていく必要があるということだと思います。

○小池晃君 ありがとうございました。終わります。

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