日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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2014年6月18日 参院本会議 速記録

2014年06月18日

 参院本会議
2014年6月18日

○小池晃君 私は、日本共産党を代表して、医療・介護の総合的確保を推進する法案について、反対討論を行います。
反対の理由の第一は、介護保険利用料二割負担の根拠が完全に崩壊したにもかかわらず、政府がこれを撤回しようとしないことであります。
政府は、年金収入二百八十万円の世帯では平均的な消費支出をしても年間六十万円が余るので、介護利用料の二割負担は可能だということを唯一の論拠にしていました。しかし、参議院での質疑で、その説明は完全に崩壊し、六十万円余るという説明は撤回され、大臣は反省していると述べました。昨年の介護保険部会でこの説明に疑問を投げかけていた委員は、参考人質疑で、驚きと怒りを覚える、介護保険部会に差し戻すべきだと述べられました。このような法案をこのまま採決にかけるなど、国会の自殺行為というべきであり、法案は断固として撤回すべきであります。
第二に、要支援者への訪問・通所介護を保険給付から外し、市町村の地域支援事業に置き換えることが受給権の剥奪にほかならないからであります。
これもまた参議院での審議の中で、地域支援事業に移行した場合の専門的サービスは多くとも現状維持であり、二〇二五年度には五割程度になるという試算が示されました。これでは、新たに要支援と認定された人にはボランティアなどのサービスしか提供されなくなるおそれがあります。
政府の試算では、要支援者の伸びを抑制するとしています。もちろん、介護予防の充実で状態が改善して非該当と認定されるならば大いに歓迎すべきことですが、実際にモデル事業が行われている地域では、行政が関与した地域ケア会議によって介護保険からの卒業が強要され、サービスが打ち切られる例が多数報告されています。これは卒業とは程遠い強制退学にほかなりません。
政府は、地域支援事業になっても適切なサービスが維持されると弁解しますが、今回の制度改変により、要支援者への給付費の伸び率五・六%を三・七%に抑制することになります。その結果、二〇三五年度での給付抑制は二千六百億円に上ります。大規模な給付費削減がサービス単価や人件費の切下げ、利用者の負担増につながり、介護サービスを量、質共に低下させることは明白ではありませんか。
第三に、特別養護老人ホームへの入所を要介護三以上に限定することにも、何の道理もないからであります。
五十二万人の特養待機者のうち、十七万八千人は要介護一、二です。現在でもこうした方々は入所待ちの行列に並んでも後回しにされていますが、今後は行列に並ぶことすら許されなくなってしまいます。
本法案では、これだけ多数の方々の特養入所の権利を奪いながら、それに代わる施設計画は一切示されておりません。大臣も特養待機者の増大の背景に低所得高齢者の増加があることを認めながら、低所得者には利用できない有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅の建設を民間に依存するだけで、特養建設のための抜本的施策は示していません。このままでは、都市部を中心に介護難民化、老人漂流社会は一層深刻にならざるを得ないのであります。
特養ホームの大幅増設ではなく、要介護一、二の人を待機者にカウントしないことで見せかけの待機者の数を減らすというのは、余りにもこそくなやり方ではありませんか。
以上のように、本法案は、介護保険の根拠なき負担増を押し付け、給付範囲を大幅に狭めるなど、あらゆる面で制度の根幹を揺るがす歴史的大改悪であると断じざるを得ません。
反対理由の第四は、上からの強権的な医療計画の押し付けで、国民の医療を受ける権利が侵害されるからです。
医療法の改定により、都道府県主導で病床の再編、削減を推進する仕組みには与党議員からも懸念の声が出されました。厚労省は、都道府県の病床計画に病院が従わない場合、医療機関名の公表、各種補助金や融資対象からの除外などの制裁措置をとるとしていますが、中央公聴会では公述人から、医療機関同士の信頼関係を壊すものという指摘がありました。
日本の国民皆保険制度を支えてきたのは、自由開業医制度と、フリーアクセスの原則の下での質の高い開業医と民間病院、公的病院の献身的な努力と自発的な連携でした。上からの強権的なベッド規制は、世界に冠たる国民皆保険制度の根幹を揺るがす危険をはらむものであり、到底容認できるものではありません。
医療事故調査のための第三者機関についても、看護師による特定医行為の実施についても、様々な懸念が示されました。何よりも、これらは一つ一つが医療制度や国民の生命、健康にとって重大な制度改変であり、本来なら別々の法案として、十分な時間を掛けて慎重に審議すべきものでありました。
政府が十九本もの法案を一括して提出したことは国会の審議権を奪うものであり、個々の問題についての審議は全く不十分だと言わざるを得ません。このままでは、国民に対する立法府としての責任を果たすことができず、本会議採決など言語道断であります。
現在、経済財政諮問会議で検討されている骨太の方針二〇一四では、法人税減税に併せて社会保障の自然増抑制までうたわれています。まさに小泉政権時代の社会保障二千二百億円抑制路線が完全復活しつつあります。
社会保障のためといって消費税を増税したのに社会保障の拡充には回さず、社会保障の拡充を求めると財源不足を口実に拒否し、舌の根も乾かないうちに法人税の減税に走り出し、その財源は社会保障の削減で賄う、これほど身勝手で無責任な政治が許されるはずがないではありませんか。
本法案は、社会保障大削減路線を推進するものにほかなりません。このままでは、医療崩壊、介護難民という事態が一層大規模に進行することになるでしょう。しかし、この道はかつて国民から厳しい批判を浴び、自民党政権の崩壊をもたらした道です。再び同じ道を進み始めた自民党に、いずれ国民から厳しい審判が下されることは間違いないと確信するものであります。
働く人の犠牲を前提とした成長戦略、戦争する国に突き進む憲法破壊の集団的自衛権行使容認、福島の苦しみを置き去りにしたままの原発再稼働、TPP参加による日本農業や医療の破壊、こんな政治に未来はありません。
日本共産党は、社会保障の充実、応能負担の原則に立った税財政の改革、国民の所得を増やす経済改革を一体に行う抜本的対案を掲げています。
終わりの始まりを告げた自民党政治に代わる新しい政治、憲法二十五条の生存権保障を全面的に実現する改革の実現のために奮闘する決意を述べ、反対討論といたします。(拍手)

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