(写真)質問する小池晃書記局長=6日、参院本会議
日本共産党の小池晃書記局長は6日の参院本会議で行った代表質問で、「政治とカネ」問題を厳しく追及するとともに、国民の暮らし優先の政策への転換を迫り、消費税減税の実現を求めました。コメ価格高騰や医療・介護危機を打開する対策を提案。沖縄県民の苦しみを突きつけて米軍基地の縮小・撤去を求め、大軍拡の中止と平和外交の重要性を訴えました。
経済政策
暮らし優先に転換せよ
小池氏は、大企業や富裕層ではなく国民の暮らし優先の政策への転換を訴え、消費税減税を強く求めました。
小池氏は、アベノミクスの「異次元の金融緩和」は、異常円安により輸出大企業に過去最高の利益をもたらし、株価を上昇させて富裕層や大口投資家を大もうけさせただけだと指摘。一方、国民の実質賃金は抑えられ、格差の拡大と経済停滞を招いたと批判しました。「アベノミクスを引き継ぐのではなく誤りを認め、国民の暮らし優先の政策へ方向転換すべきだ」と迫りました。
高市首相は、格差拡大には言及せず、「責任ある積極財政の考え方のもと、戦略的に財政出動をする」とし、アベノミクスを継承する姿勢を示しました。
小池氏は、日本経済が「失われた30年」と呼ばれる長期停滞に陥ったのは、賃金が伸びずに個人消費が低迷し、企業の生産活動も停滞したからだと指摘し、度重なる消費税増税が国民の購買力をさらに奪い、景気の停滞を決定的にしたと告発。個人消費を温めるのに最も強力で即効性のある政策は消費税の減税・廃止だと強調しました。
小池氏は、高市首相も5月に「食料品の税率をゼロ%にするのは一つの考え方だ」と消費税減税を検討する意向を示していたが、所信表明演説では消費税減税に一言も触れなかったと批判。当面、消費税一律5%に減税すべきだと主張し、「消費税減税より有効な物価高対策があるなら示してほしい」と追及しました。高市首相は、ガソリンの暫定税率の廃止など従来の対策を繰り返すだけでした。
小池氏は「インボイス制度を考えるフリーランスの会」の調査を紹介。インボイス登録事業者の4割超が消費税を所得や貯蓄から捻出し、1割超は借金して支払っている実態を示し、「小規模事業者やフリーランスを守るためにも、インボイス制度は廃止すべきだ」と訴えました。高市首相は、過酷な実態に目もくれず、制度は「必要だ」などと冷たく言い放ち、小規模事業者やフリーランスの要望に背を向けました。
小池氏は、自民党が2022年の与党税制大綱で、安倍政権下の法人税減税が賃上げ・投資に「意図した効果を上げなかった」と指摘したが、それから3年間、法人税には手をつけられていないと強調。また、高市首相が21年の総裁選時に法人税の租税特別措置の廃止や法人税率の引き上げ、金融所得課税の税率引き上げを提案していたとして、「今こそ、従来の主張を実行すべきだ」と求めました。高市氏は、与党税制大綱の指摘を「承知している」と認めつつも、「法人税の在り方については検討する」と述べるだけで引き上げは明言しませんでした。また、租税特別措置の廃止や金融所得課税の税率引き上げも、「総合的に検討する必要がある」と述べるにとどまりました。
沖縄・米軍基地問題
基地の縮小と撤去こそ
小池氏は、10月28日の日米首脳会談で高市首相が、日米同盟強化を約束した一方、沖縄の米軍基地問題や日米地位協定改定を黙殺したとして、「国政の重要課題との認識はないのか」と真正面から批判しました。
高市首相は、首脳会談で地位協定に加え沖縄での米軍基地問題も取り上げなかったことを認めた一方、「日米同盟で大きな成果をあげることができた」などと居直りました。
小池氏は、沖縄県で発生した米兵による少女暴行事件に県民の怒りが爆発し開催された1995年の県民総決起大会から30年が経過した現在も米軍関係者らによる性暴力事件が繰り返され、女性の尊厳と人権が蹂躙(じゅうりん)されていると指摘。さらに、米軍機の墜落や昼夜を分かたぬ爆音、日米の軍備増強と軍事演習の激化、基地関連施設などから発生する人体に有害な有機フッ素化合物(PFAS)による水や土壌汚染などの問題を挙げ、「基地の苦しみは軽減どころか、増大するばかりだ」と強調しました。県民が求め続けてきた地位協定の抜本改定や、基地の縮小・撤去に取り組むことこそ政府の責任だと迫り、政治的、技術的、財政的に破綻している米軍辺野古新基地建設計画の撤回と、米軍普天間基地の即時無条件撤去を要求しました。
高市首相は、県民の苦しみには一切触れずに、辺野古新基地は「問題なく建設可能」だなどと根拠なく豪語し、「着実に工事を進めていく」などと県民を冷たく切り捨てました。
暮らし破壊する大軍拡
9条生かす平和外交を
小池氏は、暮らしも平和も破壊する大軍拡を中止し、平和外交に取り組むよう求めました。
高市首相が今年度中に軍事費を国内総生産(GDP)比2%にあたる11兆円規模へ引き上げると表明したが、さらにトランプ米政権が求めるGDP比3・5%に引き上げれば21兆円となり、2022年12月策定の安保3文書以前の年間軍事費の実に4倍にもなると指摘。高市首相は首脳会談でトランプ米大統領に「防衛費の増額に取り組む」などと約束したが、「このような大軍拡は暮らしも財政も平和も破壊するのではないか」と批判しました。
「日米同盟の抑止力・対処力を高める」として軍事力を強化すれば相手の軍拡を呼び、結果的に軍事的緊張が高まり、戦争のリスクが増大すると警告。「『安全保障のジレンマ』に陥っているとの認識はあるか」と厳しくただしました。
高市首相は、軍事力強化を進めていくと述べながら、「防衛力強化が暮らしも財政も平和も破壊するとの指摘はあたらない」などと開き直りました。
小池氏は、政府がやるべきことは国際法と国連憲章に基づく平和の国際秩序を守ることだと指摘。「日米軍事同盟強化ではなく、東南アジア諸国連合(ASEAN)と協力し、東アジアを戦争の心配のない地域にしていくための憲法9条を生かした平和外交に取り組むべきだ」と訴えました。
「政治とカネ」
企業・団体献金禁止こそ
小池氏は、高市首相が所信表明演説で「政治とカネ」について一言も触れず、裏金議員を要職に就けたことへの「驚きと怒りが広がっている」と指摘。「この間の国政選挙の結果は、裏金問題への国民の厳しい審判だと考えていないのか」と問いただしました。
小池氏は「企業・団体献金禁止」を公約していた日本維新の会と連立を組みながら「企業献金は必要」だとする自民党を批判し、「典型的な二枚舌ではないか」と追及。「国民の政治への信頼を回復するというのが口先だけでないならば、企業・団体献金を全面禁止すべきではないか」と迫りました。
高市首相は「他党とも真摯(しんし)な議論を重ね、政治改革の取り組みを進める」としつつ、「規制強化は、企業・団体の政治活動の自由に関わるもので、慎重に議論する必要がある」と企業・団体献金禁止を求める声に背を向けました。
コメ価格の高騰
価格保障と所得補償を
コメの価格高騰が止まりません。小池氏は、歴代の自民党政権の農業政策が価格と流通を市場任せにし、農家に減産を強いる事実上の減反政策を継続し、生産基盤を弱体化させた結果だと指摘。石破前政権はその誤りを認め、コメの増産に踏み切ったものの、高市政権の鈴木憲和農林水産相は「需要に応じた生産量にする」と述べており、小池氏は「逆戻りしている」と批判しました。
小池氏は、これまで通り需給バランスの責任を生産者に押しつけ、政府の責任を回避するのかと追及。「農家が安心してコメ作りに取り組めるようにするためには価格保障と所得補償が不可欠だ」とただしました。
高市首相は「直接支払いを含む農業者への支援のあり方は、現場の実態を調査検証し、議論を深めていく」と述べるにとどまりました。
医療・介護の危機
国庫負担の増額が必要
医療機関や介護施設は、なぜ赤字になったのか―。小池氏は「これまでの診療報酬改定、介護報酬改定を高齢化の伸びの範囲内に抑え、賃上げや物価高に対応してこなかったからではないか」と批判しました。
日本共産党がこの間、懇談してきた日本病院会や大学病院などの医療界は、「診療報酬の初再診料や長年据え置かれてきた入院基本料を10%以上引き上げないと医療の危機は打開できない」と訴えています。小池氏はこの声に応えるべきだと迫りました。
高市首相は、診療報酬改定に賃上げや物価高を適切に反映させるとしつつも、具体的にどこをどれだけ引き上げるのかは示しませんでした。
OTC類似薬の保険外しや高齢者の医療費の窓口負担3割の対象拡大について、小池氏は「物価高騰のもとでの患者負担増はさらなる受診抑制を招き、国民の命と健康を脅かす」と指摘。「医療や介護の給付を削減すれば、病気になったときに重い負担がのしかかる」と批判しました。
日本医師会と病院6団体は「ある日突然、病院をはじめとした医療機関が地域からなくなってしまう」と警告しています。小池氏は、「国民の命と健康を守るため、社会保障に対する国庫負担の抜本的な増額が必要だ」と強調しました。
高市首相は、社会保障の負担増と給付減を柱とする「全世代型社会保障」の構築が「重要だ」と答弁。国庫負担増額には言及しませんでした。


