赤旗2025年11月14日
日本共産党の小池晃書記局長は13日の参院予算委員会で、一部の株主の利益のために国民の雇用や賃金を犠牲にする「株主至上主義」を政治の責任で改めさせるよう高市早苗首相に迫りました。さらに、財界の要望にそって高市政権が狙う労働時間の規制緩和を撤回するよう求めました。
「黒字リストラ」「自社株買い」
小池 雇用・賃金に責任果たせ
担当相 具体策示せず答弁不能

小池氏は「企業経営が黒字にもかかわらず、人員削減を行う『黒字リストラ』が広がっている」と追及しました。東京商工リサーチによると、今年、早期・希望退職を募集した企業の約68%が直近の最終損益が黒字で、8割が株価評価の高い東証プライムの大企業です。
小池氏が「黒字リストラ」の認識をただしたのに対して、高市首相は「早期・希望退職募集のことだが、労働者の自由意思で申し込まれることが必要で、それを妨げるのは適切ではない」と答弁しました。
小池氏は「実際は退職強要といったこともはびこっている。黒字企業によるリストラは止めなければならない」と批判。1万人の人員削減を行うパナソニックホールディングスの副社長が「株価は通信簿」と述べたことをあげ、「売り上げにたいする人件費の比率を下げれば投資家の評価があがる。つまり株価のためのリストラだと公言している」と指摘しました。
(写真)パネルを示して質問する小池晃書記局長(右)=13日、参院予算委
小池 日本中の企業が黒字でも、雇用削減や賃金抑制を続ければ株主を大もうけさせ、国民の暮らしは疲弊する。黒字リストラに対して、雇用に対する責任を果たすべきだと言うべきだ。
首相 法に従って対処されるべきだ。
小池氏は「企業が(現実に黒字リストラを)やっていることを大きな問題とし、どう考えるかだ」として、「企業の行動としてこういったことを、よしとしてはいけない」と強調しました。
さらに、小池氏は大企業が賃金に回すべき利益を株価つり上げに使う「自社株買い」問題も追及しました。
失われた30年で大企業が空前の利益を上げ、それが株主配当や内部留保などに回る一方、労働者の賃金は低く抑えられ、実質賃金はマイナスになっている現状をあげ、「搾取ではないか」と主張しました。
小池 一部の株主の利益のため国民の雇用や賃金を犠牲にすることを続けていたら、日本経済は失われた30年どころか40年になり、ますます衰退する。
城内実賃上げ環境整備担当相 企業が、過度に内部留保を保有するのでなく、労働者への分配を増やすことが重要。
小池 具体的にどうするのか。
城内担当相 賃上げについてもいろいろあると思う…。さまざまなやり方があると思う…。
城内担当相は、具体策を示さず答弁できなくなりました。代わって答弁に立った高市首相も、「企業が経営資源を適切に配分することを促す」と述べるにとどまり、賃上げに向け企業に社会的責任を果たさせるための具体策がないことが浮き彫りになりました。
労働時間の規制緩和
小池 増える過労死。短縮こそ
首相 検討、悪いことではない

首相は就任早々「従業者の選択が前提」としつつ、労働時間規制の緩和を検討するよう上野賢一郎厚労相に指示しています。
小池氏は、厚労省の試算では、月80時間の残業規制を超えて働きたい労働者は0・1%にすぎず、労働者は規制緩和を望んでいないと指摘。規制を巡る労働政策審議会(10月27日)での労使双方の主張をただしました。
上野厚労相は、労働者代表委員が過労死・過労自殺による労災請求の増加を挙げ、残業の上限規制緩和は「あってはならない」と訴える一方、使用者代表委員は「首相の指示は時宜にかなっている」と述べ、裁量労働制の対象拡大を求めたと説明しました。
小池氏は、労働時間の規制緩和は「さらに搾取したいという財界の長年の悲願だ」と強調。「企業側の論理だけの議論ではない」との首相答弁(12日、参院予算委)を批判しました。
首相 会社によっては上限よりかなり低い水準で時間外労働を規制し、その結果、労働者が生活費のために副業を行い、かえって建康を損なうことを心配している。
小池 「上限規制」は上限まで働けという話ではない。当時の国会の議論で、安倍晋三元首相も「労使は上限までの協定締結を回避する努力を図る。可能な限り労働時間の延長を短くする。これが趣旨だ」と答弁している。
小池氏はさらに、労使には厳然たる力の差があり、首相が主張するように「労働者本人の選択」などと言い出せば、際限のない長時間労働になると警告。裁量労働制、変形労働制、残業代ゼロ制度など、長時間労働を拡大する法律を自公政権が次々強行し、過労死等に関する労災認定件数が増加している実態を示しました。
小池 この5年増え続け(24年度は1304件と)過去最多だ。精神障害も(1057件と)激増している。総理は「過労死に至るような残業はよしとはしない」と言うが、当たり前だ。問題はどうしたら過労死を生まない労働環境にできるかだ。規制緩和など論外で、労働時間の短縮こそ必要だ。
首相 さまざまな声がある中で働き方の実態やニーズを踏まえて検討を深めるのは悪いことではない。
小池 労働者に自由な時間保障を。賃上げとセットで
首相 「改善」言うが施策示せず
小池氏は、そもそも日本の労働時間はヨーロッパに比べて長いと強調。『男女共同参画白書』(24年版)が指摘する労働時間と睡眠時間の関連性をただしました。
黄川田仁志男女共同参画相は「国際的に見て日本の男女の睡眠時間は短く、働く女性が増加する一方、女性に家事・育児が偏重しているもとで、女性は睡眠時間を減らし対応している可能性がある」などとする白書の内容を説明しました。
小池氏は、子育て中の女性会社員の実態を問題視した新聞記事に言及。子どもを寝かしつけた後、夜中まで仕事をして「自分の時間はない」と訴える女性の声を首相に突きつけました。
小池 労働時間を短縮し、十分な睡眠はもちろん余暇や趣味を楽しみ、社会活動に取り組む。これは働く人の大切な要求だ。男女がともに家事や育児・介護などを分かちあえる社会にするためにも、労働者が自由に使える時間を持つことは日本社会の大事な課題だ。
首相 制度・仕組みはちゃんとつくってきている。さらに改善できればいい。
小池 ならば労働時間規制の緩和は逆行ではないか。労働時間を短くする方向に進まなければならない。しかも賃上げとセットでやるべきだ。残業しないと生活できないということを解決するのが政治の責任だ。
首相は関係する施策を総動員して賃上げできる環境を整えると主張しました。小池氏は、大企業は空前の利益を上げており、賃上げできる環境は十分にあると追及。「利益を株主に回さなければ賃上げできる。そのための具体的な施策が必要なのに、全くそうした施策が出てこない」と批判し、労働時間の規制緩和は撤回するよう求めました。


