日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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2015年9月3日 参院厚生労働委員会 速記録(派遣法)

2015年09月03日

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
総理は、本会議でも今日も、この法案は正社員への道を開く、派遣労働者の待遇の改善を図ると何度もおっしゃるんですけど、しかし、だったら派遣労働者はみんな歓迎しているはずなんです。
ところが、先ほど配られた日経新聞の調査、私も配りましたけれども、派遣社員の六八%が法案に反対しているわけですね。反対理由の一位は、派遣社員の根本的な地位向上にはならない、二位は、人が変われば会社は同じ業務を派遣社員に任せ続けられ、派遣が固定化する、三位は、二十六業務の人が契約更新されない可能性がある。
総理は、先ほどそれに対する反論をあれこれおっしゃったけれども、それはさんざん政府がこの間言ってきたんです。でも、そういう説明を受けてもなお当事者の皆さんはそれを納得していないわけですよ。それをどう受け止めていらっしゃいますか。先ほど、理解が広がるようにしたいというふうにおっしゃった。ということは、現時点では理解がされていないという認識なんですね。お答えいただきたい。総理。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 日経新聞のこの調査結果についても先ほども紹介がございましたが、その中で、その反対理由について今三つおっしゃったわけでありまして、根本的な地位の向上にならない、あるいは派遣社員に任せ続けられ、派遣社員が固定化するというのと二十六業務の問題でありますが、これに対しては、今回の改正案において、派遣元に対し派遣期間が満了した場合の雇用安定措置や計画的な教育訓練を義務付けるなど、正社員を希望する方にその道が開けるようにするとともに、派遣を積極的に選択している方については、賃金等の面で派遣先の責任を強化するなど、待遇の改善を図るものでございます。派遣が続くのではないかという点については、事業所ごとに受入れ期間を三年までとした上、延長する場合には過半数労働組合等からの意見聴取を義務付けることとしているわけでありまして、また、二十六業務で働く方については、雇用が途切れないよう派遣元に雇用安定化措置を義務付けることとしております。
こうした説明をしっかりと御説明をしていくことによって理解されていくものと承知をしているわけでございますし、実際に法律が実施される中においてこうしたことが実現されていくわけでありますから、そうしたことが実現されていく中において改正前と改正後を比べていただいて、理解は進んでいくものと思っております。

○小池晃君 でたらめですよ。そんな時間稼ぎやめてくださいよ。
この法案は、昨年の通常国会、臨時国会、そして今度の通常国会、会期末までやって、施行日の九月一日過ぎて議論しているんですよ。ずうっと議論していても、今おっしゃったことが全く理解されていないわけじゃないですか。これは、国民の理解の問題じゃないんです。みんな理解しているんです。法案が悪いからこういう反対の声が当事者の中でも広がっているんじゃないですか。それを受け止めないで、でたらめなことを言っちゃいけないですよ。
大体、この法案が派遣労働者を保護する法案でないということを最も端的に示しているのが、政府と与党が、十月一日のみなし雇用制度の施行の一日でも前でもいいからこれは成立させようとしていることですよ。
総理は、本会議でこうお答えになった、みなし雇用について。みなし雇用、適用されなくなるのではないかという質問に対して、本年十月からの施行が予定されています、これは、期間制限違反等を防止する観点から設けられた仕組みであり、この法案成立後も、改正後の期間制限に違反する場合には当然適用されるものです、したがって、みなし制度が発動されないとの御指摘は当たりませんと、こうおっしゃっている。
しかし、本法案施行後に結ばれる派遣契約では、業務単位の期間制限がなくなるわけですから、これは期間制限違反によるみなし雇用はそもそも発動されなくなるし、しかも厚労省は、この施行前に結ばれた派遣契約についても期間制限違反のみなしは適用されないと言い出したわけですよ。
総理の本会議の答弁は完全にほごになっているんじゃないですか。総理、総理答えてください。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 平成二十四年の法改正により設けられた労働契約申込みみなし制度は、派遣受入れ期間の制限に反するなど、違法な派遣の受入れがある場合に、派遣先がその派遣労働者に直接雇用を申し込んだものとみなす仕組みであり、本年十月からの施行が予定されております。
他方、現行制度では、いわゆる専門二十六業務について派遣受入れ期間の対象から除外をしておりますが、専門性が時代とともに変化する、対象業務に該当するかどうか分かりにくいといった課題があります。このため、改正案では現行の期間制限を廃止し、全ての業務に適用される分かりやすい仕組みを設けることしております。
仮に、この改正が行われず、現行のまま十月に至る場合には、派遣先において意図せず違法派遣を受け入れた状態となって、みなし制度が適用されてしまう可能性があり、また、これを回避するため派遣の受入れを事前に停止し、雇い止め等が生じる可能性もあると考えています。このような混乱を避け、円滑に実施するため、期間制限を分かりやすく見直した上で施行する必要があると考えています。
今回の改正案では、平成二十四年の法改正により設けられたみなし制度について、期間制限違反に適用するという仕組みを変更しておらず、また、予定どおり十月一日から施行することとしております。みなし制度が適用されなくなるとの指摘は当たらないものと考えております。

○小池晃君 全く私の言ったことに答えていないじゃないですか。期間制限の考え方変えるわけだから。
総理、今はっきり、やはりみなしが発動されたら困るんだと、直雇用されたらまずいんだということをおっしゃったのと同じですよ、今のは。これ、とんでもない話ですよ。自民党も賛成してつくった制度ですよ。違法派遣は直雇用にしよう、労働者を守ろうとつくった制度が発動される、それの一体どこが悪いんですか、お答えいただきたい。おかしいですよ。私、こんなことをやったらば、直接雇用される機会はどんどん減っていきますよ。
先ほども議論あったけれども、直接雇用にするんだとおっしゃったけれども、依頼ですよ、依頼するだけなんですよ。断ったらこれで終わりなんですよ。依頼しなくたっていいんですよ。ほかの措置だっていいんですよ。総理、今度の制度でいけば、直接雇用される機会はどんどんどんどん失われる、これは間違いないじゃないですか。総理が今認めたこと、それも含めて、そうなるんじゃないですか。そのことについてお答えいただきたい。そんな制度をつくっていいんですか。
総理に聞いているんです、いいですよ、総理に聞いている。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今回の十月一日から施行になります労働契約申込みみなし制度の対象となる違法行為については、もう先生にこの間申し上げたように、期間制限のみならず、禁止業務派遣とか無許可派遣とか、それから、この間も議論になりました偽装請負も対象になるわけでありますので、決して労働者の保護につながらないというようなことではないわけで、これはこのとおり施行するということでございますので、そのとおり我々は施行していくということでございます。
それから、直接雇用の機会が減るじゃないかということをおっしゃいましたけれども、これについても、もちろんみなしが施行されることによって結果として直接雇用が進むという結果はあり得るわけでございますけれども、一つ大事なことは、私どもがこのみなしをどう考えているかというと、やはり違法行為を防ぐということが大事な目標であって、むしろ違法行為の下に今度みなしで直接雇用をするということよりも、先ほど来総理から申し上げているように、雇用安定措置とかあるいはキャリアアップ措置とか、こういうもので正攻法でやっぱり正社員になっていくということをやっていくことがまた大事なことでもあるということを申し上げたいというふうに思います。

○小池晃君 今の答弁は、違法行為を合法化する法案だということを認めたということですよ。
結局、キャリアアップすれば正社員になる、キャリアアップの問題じゃないんですよ。幾ら能力が高くても正社員になれないんですよ。それが今の派遣社員の実態じゃないですか。それを、法律的に民事上の措置として効力を発するみなし制度というのを、与党も、当時野党か、自民党や公明党も賛成してつくったんじゃないですか。それをなきものにする。私は、これほどあからさまに理不尽でこれほどあからさまに企業サイドに寄った、そんな労働法制を今まで見たことがないですよ。
総理が本当に正社員にしたい、派遣労働者の待遇の改善を図りたいというのであれば、これ、廃案にしてきっぱり出直すしかないということを私は改めて申し上げたいと思うんです。
大体、今の日本経済の状況を総理はどう考えているのか。九月一日に財務省から昨年度の法人企業統計が公表されました。資本金十億円以上の大企業の経常利益、当期純利益は、過去最高を更新しています。総理は政労使会議で賃上げの努力を求めたというけれども、社員一人当たりの給与額は大企業でも一%しか増えていないんです。一方で、株主への配当は過去最高、配当金の増加は一・五兆円、内部留保は二百九十九・五兆円。非常にゆがんでいるわけですよ。
総理、一人当たりの給与が伸びない最大の要因が非正規雇用の拡大であることを認めますか。低賃金の非正規雇用、派遣や有期雇用を正社員、期間の定めのない直接雇用に転換して働く人の所得を増やす、そういう転換が今決定的に重要だ、そういう認識は総理にありますか。お答えいただきたい。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 一人当たりの平均賃金については、名目賃金は政労使会議などの取組によって二%を超える賃上げを実施しているわけであります。昨年もそうでした。十六年ぶり、十七年ぶりの高い比率の賃上げであります。そして増加傾向にあります。また、実質賃金におきましても、四月、五月とゼロ近傍まで改善をしてきております。
確かに、六月には名目、実質共にマイナスとなりましたが、これは、本年一月に行った調査対象事業所の入替えもありまして、相対的にボーナスの支給額が大きい三十人以上の事業所において、六月に支給した事業所の割合が昨年に比べて四ポイント以上も低かったものによるものと考えております。このように分析をしております。
基本給を示す所定内給与は、四か月連続のプラスであります。パートで働く方を除いた一般労働者で見ると十四か月連続のプラスでありまして、また、パートで働く方々の時給は、安倍政権になって最低賃金の大幅引上げを二年連続で行ってきたことや、労働需給が引き締まりつつあることもあり、ここ二十二年間で最高水準であります。
このように、現在、賃金は基調として緩やかに増加しているものと考えているわけでございまして、雇用の状況も良くなっているわけでございますが、それとともに、しっかりと実質賃金にも反映されるように我々もこの現在の経済の好循環を回していきたいと、こう思っておりますが。
そして、御質問があった一人当たりの賃金についてでございますが、それにつきましては、六十五歳以上の方々の就業が増えているという状況もあるわけでございますし、また、景気回復局面においてはパートの方の比率がある程度、パートの方の絶対数がまず増えてくるということでございます。
その中で、現在、非正規から正規への移動もしっかりと起こり始めているわけでございまして、正規で働きたいという方にとって正規で働くことができる状況をつくっていく、経済状況もつくっていかなければいけませんが、キャリアアップ等で支援していくことも重要であろうと、このように考えております。

○小池晃君 細かいことをくどくどくどくど言って、大きな話全然しない。私が言ったことに答えていないじゃないですか。政治の意思として非正規から正規へ転換すると、そういう意思があるのかということを全く答えていないじゃないですか。
日本経済も日本社会も壊す、これがアベノミクスですよ。
それだけじゃない。ロイターの八月の調査で、日本の資本金十億円以上の企業、この調査では、安保法案の今国会の成立に六二%の企業が反対をしているわけです。理由は、国民の理解が不十分、手続、進め方が強引だ、外交関係が困難になり、海外取引等の経済にも波及すると思われる。
総理、大企業の経営者からもこんな声が上がっている。これ、どう受け止めていますか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 平和安全法制につきましては、国民の理解が進んでいくように、国会審議等も通じまして更に努力を進めていきたいと、このように考えております。

○小池晃君 大企業の理解だって得られていない、国民全体反対している。アベノミクスも派遣法も戦争法案も、全て廃案にするべきだということを申し上げて、質問を終わります。

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