日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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2015年9月8日 参院厚生労働委員会 速記録(反対討論)

2015年09月08日

○小池晃君 私は、労働者派遣法の一部を改正する法律案について、本日、こうして乱暴に採決されようとしていることに強く抗議し、断固として反対する立場から討論を行います。
本法案は、昨年二度も廃案になった上、衆議院では、自公両党が採決を強行して参議院に送り付けてきたものであります。本院の審議では、次々に法案の矛盾を指摘され、頻繁に審議が中断し、九月一日の施行日を過ぎ、会期末が迫った現在も、新たな問題、疑問が噴出しているのです。この経過だけでも、この法案には重大な問題があり、撤回し、廃案にすべきものだと言わねばなりません。
反対する最大の理由は、一九八五年の労働者派遣法成立以来三十年間、職業安定法四十四条で禁止された労務供給事業の例外として、臨時的、一時的業務に限る、常用雇用の代替としないとしてきた派遣労働の大原則を投げ捨て、その制度的保障だった業務ごとの期間制限をなくし、労働者派遣を切れ目なく受入れ可能としていることであります。
本法案は、派遣元で無期の雇用契約を結んだ派遣労働者を期間制限の対象から外してしまいました。有期契約の派遣労働者については、事業所単位の受入れ期間を三年としていますが、過半数労働組合等からの意見聴取だけで際限なく延長できる仕組みです。個人単位で見ても、有期雇用の派遣労働者は、三年を上限としつつ、課を変えれば使い続けられるため、いつでもどこでもいつまでも派遣先企業が派遣労働者を使い続けることが可能にする制度につくり変えるものであります。
一方で、曲がりなりにも派遣先に課せられてきた直接雇用義務はほとんど消滅します。派遣期間抵触日を超えた場合の労働契約申込義務、専門二十六業務で、同一事業所三年以上従事した場合の優先雇用申込義務を削除するなど、派遣先を縛る規定をなくし、雇用責任を免罪するものとなっています。みなし雇用制度を残してはいますが、本改定によってほとんど適用されなくなります。この改悪によって常用代替が劇的に進むことは明らかであり、断じて認めることはできません。
政府は、正社員を希望する者にはその道を開くとして雇用安定措置があると繰り返しますが、実際には派遣元から派遣先への要請にすぎず、しかもそれすら義務でなく、正社員になれる保証など全くありません。キャリアアップ措置にも何ら実効性がないことは、質疑を通して明白となりました。
以上のように、本法案は、正社員になりたい、労働条件改善と安定雇用をと望む派遣労働者の切実な声を踏みにじる大改悪にほかならないのであります。
反対理由の第二は、均等待遇の担保がどこにもないことです。
法案の均衡処遇確保措置も、年収三百万が八六%を占めるという低賃金で、賃金格差も正社員の七割から八割にすぎない派遣労働者の現状に対し、派遣元に均衡処遇を考慮した内容の説明義務を課し、派遣先には、同種の業務に従事する派遣先の労働者の賃金の情報提供、教育訓練、福利厚生施設の利用に関する配慮義務を課すのみで、世界では当たり前の均等待遇原則実現には程遠く、派遣先労働者との格差を固定化するものにほかなりません。
反対理由の第三は、十月一日のみなし雇用制度の施行の一日でも前に何が何でも成立させようとしていることであります。
この法案は派遣労働者を保護する法案ではない、それを何よりも物語るのがこの問題ではないでしょうか。しかも、法案の附則九条の経過措置の「従前の例による。」の解釈をねじ曲げ、既に派遣契約を結んだ労働者に、みなし雇用制度の対象となるべき専門業務偽装などの期間制限違反があっても適用しないとされたことであります。既に三年前に確立した法律を前提として契約した派遣労働者の権利を施行日一日前の新法成立を理由に奪うもので、極めて重大です。
そして、本日、突然与党から提案された九月三十日という施行日修正では、円滑な施行など到底できません。仮に成立しても、労働者派遣の仕組みを大転換することから、四十一項目以上の省令、指針を労働政策審議会で検討し、それに基づき、派遣元や派遣先、派遣労働者への周知徹底期間は十日余りしかないという乱暴極まりない日程であり、大混乱を招くという無理を承知の法案を成立させることは、立法府として重大な禍根を残すものであります。
その他の内容修正も一時間ほど前に突然示されたばかりで、まともな検討すらできません。これでは、立法府としての責任放棄になってしまいます。これは、法案への賛否を超えて国会が問われている問題だと私は思います。
そもそも、与党が内容上の修正を求めるという異例な事態は法案の根本的欠陥を示すものにほかならない、このことを申し上げたいと思います。
以上、余りにも理不尽、これほどあからさまに労働者の権利を踏みにじり、企業側の要求にべったりと応える法案を私は見たことがありません。
正社員化を希望する方にはその道を開き、派遣を選択する方には処遇の改善を図るというのであれば、本法案は廃案としてきっぱり出直すべきであります。本法案はどこを取っても矛盾、欠陥だらけであり、正社員、直接雇用が原則という日本のあるべき働き方を間接雇用が常態化する社会へ大転換していく改悪法案であります。廃案にするほかない、このことを再度強く訴えて、反対討論といたします。

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