日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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2015年9月9日 参院本会議 速記録(反対討論)

2015年09月09日

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
私は、会派を代表して、労働者派遣法の一部を改正する法律案について、反対討論を行います。
本法案は、昨年二度も廃案となった上に、衆議院では自公両党が採決を強行して参議院に送付してきたものです。本院の審議でも次々に法案の矛盾と問題点が指摘され、しばしば審議が中断し、九月一日の施行日を過ぎて会期末が迫った昨日の審議でも、新たな疑問と問題点が噴出していました。この審議経過一つを取ってみても、本法案には重大な問題があり、廃案にすべきものだと言わねばなりません。
反対する最大の理由は、一九八五年の労働者派遣法成立以来三十年間、職業安定法第四十四条で禁止された労務供給事業の例外として、臨時的、一時的業務に限る、常用雇用の代替とはしないとしてきた派遣労働の大原則を投げ捨て、その制度的保証だった業務ごとの期間制限をなくし、派遣労働者を切れ目なく受入れ可能としたことであります。
今までの労働者派遣法では、同一の職場で働く派遣労働者のうち、原則一年、最長三年の期間制限を一人でも超えたら、その職場では派遣労働者の受入れはできず、派遣先企業が業務を続けようとすれば、直接雇用労働者を雇い入れなければなりませんでした。
ところが、本法案では、派遣元で無期の雇用契約を結んだ派遣労働者を期間制限の対象から外してしまいました。有期契約の派遣労働者についても、事業所単位の受入れ期間を三年としてはいますが、過半数労働組合等からの意見聴取さえすれば際限なく延長できる仕組みとなっています。個人単位で見ても、有期雇用の派遣労働者は三年を上限としつつ、課を変えれば使い続けられるため、いつでも、どこでも、いつまでも派遣先企業が派遣労働者を使い続けることを可能にしています。
一方で、曲がりなりにも派遣先に課せられていた直接雇用義務はほとんど消滅します。派遣期間抵触日を超えた場合の労働契約申込義務を削除するなど、派遣先を縛る規定はことごとく撤廃され、派遣先企業の雇用責任を免罪するものとなっています。形の上ではみなし雇用制度を残してはいますが、本改定によって実態としてはほとんど適用されなくなります。
政府は雇用安定措置が正社員への道を開くと繰り返しますが、実際には派遣元から派遣先にお願いするだけであり、派遣労働者が直接雇用される保証などどこにもありません。塩崎恭厚生労働大臣も、雇用されるかどうかは経営判断だと認めざるを得ませんでした。
政府はキャリアアップ措置があるとも言いますが、派遣社員が正社員になれないのはキャリアがないからではありません。正社員よりも優秀な派遣労働者が物のように使い捨てにされているのが実態です。派遣を安上がりな雇用の調整弁とすることを許す法制度にこそその原因があるのであり、実効性のないキャリアアップ措置などは慰めにすらなりません。本法案が常用代替を劇的に拡大する大改悪であることに疑問の余地はなく、断じて認めることはできません。
反対理由の第二は、派遣労働者の待遇を改善するものでもなければ、正社員との均等待遇を実現するものでもないことです。
法案の均衡処遇確保措置には何の実効性もありません。なぜなら、派遣元企業は均衡処遇を考慮した内容を労働者に説明さえすればよく、派遣先企業は、同種の業務に従事する派遣先の労働者の賃金の情報提供、教育訓練、福利厚生施設の利用に関して配慮さえすれば、それが必ずしも実現しなくてもよいという代物だからであります。これでは、派遣労働者の八六%が年収三百万円という低賃金の是正も、正社員との賃金格差解消も、世界では当たり前の均等待遇原則の実現にも程遠いものだと言わざるを得ません。
日本経済新聞社などの調査では、派遣労働者の六八%が、派遣社員の根本的な地位向上にならない、派遣社員が固定化するという理由で本法案に反対しています。正社員になりたい、労働条件改善と安定雇用をと望む派遣労働者の切実な声を踏みにじる本法案は、断固として廃案にすべきものであります。
反対理由の第三は、十月一日から始まるみなし雇用制度を骨抜きにするため、その直前に、なりふり構わず駆け込みで施行させようとしていることであります。
塩崎大臣がみなし雇用は直接雇用に結び付くと認めたように、期間制限違反の労働者が正社員になる道が開かれます。だからこそ、自民党も公明党も、三年前、この制度の創設に賛成したのでしょう。それを今になってやめてしまうのは、労働者と国民への背信行為ではありませんか。この法案が派遣労働者保護法ではなく、派遣企業保護法であることをこれほど露骨に示すものはないではありませんか。
法案の附則九条の経過措置の「従前の例による。」の解釈をねじ曲げ、本法案施行前に派遣契約を結んだ労働者に、みなし雇用制度の対象となるべき専門業務偽装などの期間制限違反があっても適用しないとされたことも重大であります。三年前に成立した法令を前提として契約した派遣労働者には、既にみなし雇用の権利が発生しています。本法案は、実現まであと一歩まで近づいた労働者の権利を新法施行によって奪うという、過去に例を見ない悪辣非道なものだと言わねばなりません。
与党が強行した九月三十日への施行日修正では、到底円滑な施行などできません。仮に成立しても、労働者派遣の仕組みを大転換するため、四十一項目以上の省令、指針を労働政策審議会で検討しなければならず、それを労働者や事業者に周知徹底する期間は僅かしかありません。大混乱を招くことは必至であります。立法府として極めて無責任であり、重大な禍根を残すものであります。
また、与党は、採決直前になって、施行日のみならず内容の修正まで提案し、審議もせずに強行しました。こんなやり方で衆議院に回付することが、仮にも良識の府のやることでしょうか。法案への賛否を超えて、立法府としての責任放棄のそしりを免れない暴挙を認めてよいのでしょうか。
そもそも、与党が内容上の修正を求めるという異例な事態は、本法案が欠陥法案であることを自ら示すものにほかならないではありませんか。
以上述べてきたように、本法案は、法案自体も、またその審議経過も理不尽の極みと言うべきものであります。これほどあからさまに、これほど労働者の権利を踏みにじり、これほど骨の髄まで企業側の要求に応える法案を私はかつて見たことがありません。
労働者派遣法を強行し、憲法違反の戦争法案の強行までたくらむ、そのような政治が、今、国民の大きな不安と怒りを呼び起こしています。国会を取り巻く人々の波は日増しに広がり、安倍政治を許さないというデモや集会が連日のように全国各地で行われています。こうした声に耳を傾けようともせず暴走を重ねる政治は、必ずや主権者国民から厳しい審判を受けることになるでありましょう。
日本共産党は、安倍政権を打倒し、国民とともに新しい政治を築き、人間らしい雇用をこの国で実現するため、全力を挙げる決意です。
生涯派遣、正社員ゼロ社会に道を開く改悪派遣法案は、改めて断固廃案にすることを強く強く求めて、反対討論を終わります。(拍手)

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