日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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小池書記局長の代表質問 参院本会議

2021年01月24日

赤旗2021年1月23日付

 

 日本共産党の小池晃書記局長が22日の参院本会議で行った代表質問は次の通りです。


写真

(写真)質問する小池晃書記局長=22日、参院本会議

 

 日本共産党の小池晃です。

 

 新型コロナウイルス感染症が深刻に広がっています。亡くなられた羽田雄一郎さん(参院議員)、そしてすべての方々に心から哀悼の意を表します。闘病中の皆さまにお見舞いを申し上げます。

 

 会派を代表して、総理に質問します。

 

コロナ危機を打開するために

医療機関、介護・福祉事業所全体に減収補填を

 

 深刻な医療崩壊を食い止め、国民の命と健康を守る、政治の責任が求められています。しかし、医療機関に対する緊急包括支援交付金が現場に届いたのは、総額3・2兆円の3分の1にもなりません。半年以上たっても現場に届かないのは、制度に問題があるからではありませんか。交付金の大半を、コロナ患者受け入れ医療機関に限定していることを、見直すべきではないでしょうか。

 

 新型コロナとたたかっているのは、感染患者を直接受け入れている病院だけではありません。日本医師会の中川俊男会長は、民間病院でコロナ患者の受け入れが少ないとの指摘に対して、「コロナ患者をみる医療機関と通常の医療機関が役割分担をした結果だ。民間病院は面として地域医療を支えている」と述べました。総理にはそうした認識はありますか。

 

 いま、公立、民間を問わず、多くの医療機関が役割を分担し、それぞれが力を尽くしています。発熱外来には、年末・年始も多くの開業医が協力してきました。地域の救急医療体制を維持するため、コロナ患者に対応していない病院も、肺炎や発熱の患者の受け入れに協力しています。慢性期病院やリハビリテーション病院でも、感染が軽快した患者を受け入れています。一般の病院や介護施設で陽性者が発生した場合、コロナ対応病院への転院が容易にはできず、数週間にわたって、その施設で外来、新規入院・入所などを停止し、治療にあたるケースもあります。

 

 このように日本中の医療・介護事業所が役割を分担しながら、懸命に努力をしています。その全体を支援することなしに、コロナ危機を乗り越えることはできません。

 

 政府がやるべきことは、医療機関や介護・福祉事業所の全体を対象に、感染拡大による減収を迅速かつ簡便な方法で補填(ほてん)することです。「減収補填」の必要性に対する明確な答弁を求めます。

 

積極的な社会的検査を全額国費で

 

 感染者の急増を抑え、医療崩壊を防ぐためには、無症状者も対象にした積極的なPCR検査などによって陽性者を早期に発見し、保護していかねばなりません。施政方針演説で総理は検査の方針について一言も触れませんでしたが、自治体任せにせずに、PCR検査を積極的に行う明確な戦略を示すべきではありませんか。

 

 新型コロナ感染症対策分科会に提出された資料によれば、「5人以上の感染者が発生したクラスター」の45%は「医療・福祉施設」で、「飲食関連」の19%を上回っています。

 

 医療・福祉施設でのクラスター発生の防止は、重症者を減らし、医療への負担を軽減するうえで決定的に重要であり、全額国費による社会的検査を行うべきです。保健所の業務負担増にならないように、医療機関や介護施設などが、民間機関も活用した自主検査を定期的に行う仕組みを国がつくり、その費用も国が全額負担すべきです。答弁を求めます。

 

事業規模に応じた補償と直接支援の第2弾を

 

 政府は、昨年春の緊急事態宣言時並みの、外出自粛などの徹底を国民に呼びかけています。ならば、お願いだけでなく、補償が必要であり、昨年春に行った支援を今になって打ち切るなど言語道断です。

 

 ところが政府の支援は、営業時間の短縮を求める飲食店には1日最大6万円の協力金、取引先には最大40万円の一時金しかありません。これで十分だというのですか。事業規模に応じた補償の拡充が必要ではありませんか。

 

 持続化給付金、家賃支援給付金の打ち切りは撤回し、第2弾を実施すべきではありませんか。雇用調整助成金のコロナ特例の縮小、休業支援金の打ち切りも撤回し、感染収束まで継続し、対象を中堅企業や大手チェーン店などの労働者にも拡大すべきではありませんか。

 

3次補正予算案の抜本組み替えで医療や補償に回せ

 

 コロナ禍のもとで外食需要が激減し、農業が大きな打撃を受けています。とりわけ米は、需要の消滅がそのまま在庫として積みあがるので、価格が大きく下がっています。

 

 ところが政府の対策は、次の作付けで転作を要求するのみです。農家に減産を迫りながら、外国から77万トンものミニマム・アクセス米の輸入を続けることは、ただちに中止すべきではありませんか。

 

 米は基幹作物であり、国が余剰分を買い上げて市場から隔離し、需給均衡を図るべきではありませんか。

 

 3次補正予算は、緊急事態宣言発令前につくられたもので、感染の収束を前提として、「Go To」事業に1兆円以上をつけています。このような予算案をこのまま成立させるのは、政治の責任放棄にほかなりません。すぐには必要でない事業をやめて、その財源を医療や補償などに回す、抜本的な組み替えを行うべきではありませんか。

 

生活困窮者・低所得者に新たな給付金を

 

 年末年始には、市民団体やボランティアによる相談・支援活動が各地で取り組まれ、私も参加しました。そこで見たのは、非正規雇用の人たちが、コロナ危機をきっかけに、仕事も住居も失い、日々の食事にも事欠く深刻な状態に追いこまれた姿です。生活困窮者・低所得者の手元にただちに届く新たな給付金が必要ではありませんか。

 

 相談会では、所持金が数百円という貧困状態にあっても「生活保護制度は受けたくない」と拒否される方が相次ぎました。「つくろい東京ファンド」が行ったアンケートによれば、生活保護を利用していない理由で最も多かったのは「家族や親戚に知られるのがいやだ」というものでした。福祉事務所が、親兄弟や子どもなどの親族に「援助が可能かどうか」を問い合わせるためです。

 

 厚労省は「生活保護の申請は国民の権利です」と呼びかけましたが、親族への扶養照会は、生活保護を権利として利用する際の大きな障害になっています。有害な扶養照会はやめるべきです。緊急に運用を見直すべきではありませんか。

 

罰則や制裁は感染症対策に逆行

 

 政府は、コロナ特措法や感染症法の改定に、時短要請に応じない飲食店や、入院措置に応じない患者への罰則、コロナ患者を受け入れない病院名の公表を盛り込みましたが、感染症対策は、国民の納得と合意、十分な補償、そして社会の連帯で進められるべきです。

 

 罰則や制裁による強制は、相互監視や社会の分断を進めることになり、感染症対策に逆行するのではありませんか。総理の見解を求めます。

 

疑惑の説明・証人喚問に応じよ

 

 コロナ対策において何より大切なのは政治への信頼、とりわけ政治リーダーに対する信頼です。しかし、総理は吉川元農水大臣の疑惑についても、学術会議への任命拒否の理由についても、国民に説明していません。総理はこれで国民の信頼を得られると思いますか。

 

 総理は、桜を見る会・前夜祭をめぐる自身の答弁について、「事実と異なるものがあった」と認めました。安倍前総理のうそをおうむ返しにし、疑惑解明を妨害してきた責任は重大です。たった一言のおわびですむとお考えですか。

 

 前夜祭は「桜を見る会」とセットです。「功労功績のある者」という招待者の選定基準が守られていれば、安倍氏の後援会員が大量に招待されることはなく、前夜祭による買収疑惑も起こりませんでした。当時、菅総理は官房長官として招待者選定の責任者でした。全容解明のための調査を行うつもりはあるか、お答えいただきたい。

 

 前夜祭の会費を補填した費用の原資についても、いまだに説明がなされず、領収書も明細書も提出されていません。安倍前総理の説明には根拠がまったくありません。真相解明には、さらにうそをつけば偽証罪に問われる証人喚問が不可欠ではありませんか。

 

 昨日、河井案里参院議員に有罪判決が下されました。参議院選挙で莫大(ばくだい)な資金を提供し応援した責任を、総理はどう考えていますか。河井克行氏とともに、証人喚問が必要ではありませんか。「国会が決めること」と逃げずにお答えください。

 

東日本大震災10年を迎えて

被災者の生活・生業再建に最後まで責任を持て

 

 今年で東日本大震災から10年となります。政府は、10年の「復興・創生期間」終了後、岩手、宮城などは5年、福島は10年で、被災者支援や復興策に「区切り」をつけようとしていますが、期限を切って打ち切ることは許されません。被災者の生活と生業(なりわい)の再建をめざして、国が最後まで責任を果たすべきではありませんか。

 

 経産省のグループ補助金交付先アンケートによれば、被災地で売り上げが震災直前の水準まで回復している事業者は、44%にとどまっています。そこに新型コロナが襲い、被災地の基幹的な産業である、漁業・水産加工業や観光業は大打撃を受けています。

 

 漁業では、被災地の主要魚種であるサケ・サンマ・スルメイカの大不漁が続き、コロナによる飲食業の需要減も直撃しています。水産加工業の再建にグループ補助金は大きな役割を果たしましたが、その返済時期に大不漁、コロナが重なり、文字通りの三重苦となっています。いっそうの支援強化が求められるのではありませんか。

 

原発事故汚染水の海洋放出をやめよ

 

 東京電力福島第1原発事故の汚染水の海洋放出の動きには、漁業者をはじめとして、「今までの努力を水の泡にする」と不安と怒りが広がっています。東京電力の試算では、現在タンクにためられている水の73%にトリチウム以外のヨウ素やストロンチウムなどが含まれ、最大で基準値の2万倍とされています。当面は陸上保管を継続し、国内外の英知を結集し、解決すべきではありませんか。

 

原発再稼働を断念し原発ゼロへ

 

 ひとたび事故が起これば、甚大な被害をもたらし、長期にわたり先の見えない苦難を強いるのが原発です。「脱炭素」を口実に原発に固執するなど愚の骨頂ではありませんか。

 

 再稼働をきっぱり断念し、原発ゼロへ、かじを切るべきではありませんか。

 

沖縄米軍新基地を断念せよ

 

 沖縄の米軍新基地建設に関して聞きます。

 

戦没者冒涜の激戦地土砂での埋め立てやめよ

 

 政府が辺野古の埋め立てに使用する土砂を、住民を巻き込んだ凄惨(せいさん)な地上戦の激戦地である沖縄本島南部から採取しようとしていることに、県民の怒りが広がっています。

 

 私は昨年10月の本会議で、このことについて総理の認識を問いました。ところが、総理の答弁は、「関係法令で認められた採石場から調達される」という一言だけでした。戦没者の血が染み込み、遺骨の眠る地域から土砂を採取し、米軍基地の建設に使用することに、総理は何の痛みも感じないのですか。

 

 戦没者の遺骨収集は国の責務です。政府は、戦没者の無念と遺族の心情に寄り添い、遺骨の収集と返還に全力を挙げるべきではありませんか。

 

 戦没者を冒涜(ぼうとく)する土砂採取計画の撤回を強く求めます。

 

普天間基地撤去・閉鎖に取り組め

 

 普天間基地をはじめとする沖縄の米軍基地は、米軍が戦時国際法に違反して、住民を収容所に入れている間に、土地を取り上げ、建設したものです。そして本土復帰後も、米軍に奪われた土地は地主に返還されず、強制使用が続きました。県民は基地あるがゆえの事件・事故に苦しめられ、憲法に保障された基本的人権がふみにじられてきました。

 

 総理は官房長官の時に、当時の翁長雄志(おなが・たけし)知事がこうした沖縄の歴史を語り、「県民には魂の飢餓感がある」と述べたのに対し、「私は戦後生まれなので沖縄の歴史は分からない」とこたえました。あまりに無情です。私は昨年の本会議でこのことを指摘しましたが、答弁がありませんでした。

 

 あらためてうかがいます。総理は今でも、「沖縄の歴史は分からない」というのですか。そうした態度が「沖縄の皆さんの心によりそう」ものだと言えますか。

 

 沖縄県民は、度重なる選挙と県民投票で、辺野古新基地建設反対の民意を示し続けてきました。政府はこの民意に応えて、新基地建設の断念と普天間基地の閉鎖・撤去に正面から取り組むべきではありませんか。

 

軍事費を削りコロナ対策に

 

 来年度予算案には、これまで政府が進めてきたF35ステルス戦闘機と、同機に搭載する長距離巡航ミサイルの取得、「いずも」型護衛艦を空母化するための改修費に加え、新たに国産の地対艦誘導弾の射程を大幅に増やし、戦闘機や艦船に搭載可能にすることなどが盛り込まれました。これらは、今まで政府が「他国に脅威を与える」から保有できないとしてきたものばかりです。「敵基地攻撃能力の保有」といったいどこがどう違うのか、ご説明いただきたい。

 

 また、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の代替策として、イージス・システム搭載艦2隻を新造するための予算も計上されています。しかし、その建造費は5000億円以上で、ミサイル取得費やランニングコストを含めれば1兆円を超え、青天井になることが指摘されています。総理はそのことを認めますか。

 

 今、国民の命を守るために緊急に必要なのは、敵基地攻撃能力でも、米軍新基地建設でもなく、検査・医療・補償などのコロナ対策に予算を振り向けることではありませんか。

 

 過去最大の軍事費を削って、コロナ対策にまわせ。このことを強く求めるものです。

 

核兵器禁止条約への参加は被爆国政府の責務

 

 本日、核兵器禁止条約が発効しました。核兵器が、道義的に非難されるだけでなく、違法なものとなりました。

 

 日本共産党は、「核なき世界」に向けた新しい時代の始まりを心から歓迎するものです。

 

 昨年の国連総会では、条約への参加を訴える決議が、加盟国の3分の2をこえる130カ国の賛成で採択されました。ある国の大使は演説で、条約の批准は核兵器の「犠牲者に払える最高の敬意」だと述べました。世界の多数の国々が、被爆者の努力をたたえ、行動に踏み出しているときに、唯一の被爆国の政府が背を向け続けるのですか。世論調査でも、禁止条約への参加支持は7割に達しています。これらの声に真摯(しんし)に応えるのが、被爆国政府の責務ではありませんか。

 

 核兵器に固執する米国と密接な関係にある日本が禁止条約に署名・批准すれば、「核軍縮の停滞」が言われる情勢にも前向きな変化をもたらします。北東アジアの平和と非核化にとっても、新たな展望を開くに違いありません。

 

 いまこそ、被爆国にふさわしい世界への発信と行動を。

 

 そのことを強く求めて、質問を終わります。

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