日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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コロナ 格差と貧困 沖縄 核禁条約 政治の根本転換迫る 小池書記局長が代表質問 参院本会議

2022年01月22日

赤旗2022年1月22日付

 

 日本共産党の小池晃書記局長は21日の参院本会議で代表質問に立ち、新型コロナウイルス対策や新自由主義が広げた「格差や貧困」、沖縄の米軍基地問題、核兵器禁止条約などの課題で国民の切実な声と願いを示して政治の根本転換を迫りました。岸田文雄首相は、質問に正面から答えず、国民の願いに背を向ける姿勢に終始しました。(代表質問全文)(関連記事)


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(写真)代表質問に立つ小池晃書記局長。その奥は岸田文雄首相=21日、参院本会議

 

 小池氏は、コロナ・オミクロン株の急拡大で「まん延防止等重点措置」が16都県に広がるもと、中小業者への新たな支援策「事業復活支援金」は受け付けすら始まっておらず、現時点では中小業者への支援策は何もないと指摘。「中小業者やフリーランスからはまともな補償がないことに怨嗟(えんさ)の声が上がっている」として「緊急の支援策とともに持続化給付金並みへの増額、審査の改善、スピードアップを」と求めました。

 

 岸田首相は持続化給付金の半額しかない事業復活支援金を「持続化給付金より手厚い」と言い張りました。

 

 小池氏は、「ずっと子ども用の小さな毛布を使っている」とのシングルマザーの声を紹介し「小さな毛布にくるまって親子で肩寄せ温め合う世帯が存在する。それがこの国の姿だ」と告発。子どもへの支援金は昨年9月以降に離婚した女性などに届かないとして、「首相は制度の不備を認めたが、自治体任せにせず国の責任で是正すべきだ」と迫りました。

 

 さらに小池氏は、新自由主義の「弊害」にふれながら反省を示さない岸田首相を厳しく批判。公平な分配を行わず「格差や貧困」を広げたのは、労働法制の規制緩和や、社会保障給付削減・負担増、不公平な税制などを進めてきたこの間の自民党政治だと告発しました。2022年度の年金削減は安倍政権が導入した賃金スライドによるものだと告発し、これまでの自民党政治の反省と転換を求めました。

 

 岸田首相は、労働法制の規制緩和などが「格差や貧困」を広げた事実を認めず、年金のマイナス改定も「賃金がマイナスになったから」と述べ、「アベノミクスはGDP(国内総生産)を高め、雇用を拡大した」と礼賛しました。

 

 「基地のない平和の島としての復帰を強く望んでいます」―。沖縄返還協定が審議された1971年の「復帰措置に関する建議書」を読みあげた小池氏。祖国復帰から50年の今も県民の苦しみが続くのは、復帰にかけた県民の願いに背き、辺野古への米軍新基地建設を普天間基地返還の条件としてきたからだとして、「無条件返還を米軍に求めるのが県民に対する政府の責任だ」と求めました。岸田首相は「辺野古が唯一の解決策」と従来の答弁を繰り返しました。

 

 また、小池氏は発効から1年を迎える核兵器禁止条約について、締約国会議に「オブザーバー出席するべきだ」との回答が85%という世論調査を紹介しました。ところが岸田首相はバイデン米政権が検討する核先制不使用宣言を妨害する態度をとり、核禁条約に背を向けていると批判。中国新聞も「『核の傘』依存の姿勢が、むしろ強まっているように見える」と社説で批判していることをあげ、核禁条約に参加し、核兵器国に核廃絶を迫ることこそ被爆地出身の首相としての責務だと強調しました。

速記録を読む

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。会派を代表して、岸田文雄総理に質問します。
 新型コロナウイルス感染症は、オミクロン株への変異で爆発的な広がりを見せています。
 本日、まん延防止等重点措置が十六都県に拡大されました。この二年間、感染拡大のたびに営業自粛などを求められてきた中小業者やフリーランスの皆さんからは、まともな補償もないことに怨嗟の声が広がっています。
 昨年十一月には月次支援金が終了し、必死の資金繰りで年を越したにもかかわらず、年明け早々に感染拡大。再び時間短縮を要請されても、新たな制度である事業復活支援金は受付すら始まっておらず、現時点では中小業者への支援策は何もありません。総理は総選挙で持続化給付金並みの支援を公約したのに、金額も半分にすぎません。
 緊急の支援策とともに、持続化給付金並みへの増額と、審査の改善、スピードアップに全力を挙げるべきではありませんか。
 私は年末、都内で行われた相談会で、明日の食事にも事欠く人たちから深刻な相談を受けました。年末年始に行われた女性による女性のための相談会にも、四日間で延べ四百人の女性たちが相談や物資の配給を求めて参加しました。
 大阪でシングルマザーへの宅配支援を続けている団体が毛布の配布を始めたら、ずっと子供用の小さな毛布を使っている、ずっと使っていてカビだらけ、毛布が欲しいと切実な声が寄せられたそうです。寒空の中、小さな毛布にくるまって、親子で肩寄せ温め合う世帯が存在する。それが今のこの国の姿です。
 ところが、子供への支援、支援金は、昨年九月以降にDVなどで避難した方や離婚したシングルマザーには届いていません。
 総理は制度の不備を認めました。ならば、自治体任せにせず、国の責任で直ちに是正すべきではありませんか。
 政府は個人向けの十万円の給付金があると言いますが、対象は非課税世帯に限られ、非正規雇用で仕事を失った課税世帯には、幾ら収入が減っていても届きません。緊急支援のため、十万円給付の対象を大幅に拡大すべきではありませんか。
 感染力の強いオミクロン株に対して、感染抑制と社会経済活動の両立を図るために鍵を握るのがワクチンと検査、そして保健所や地域医療機関への緊急支援です。
 しかし、ワクチンの三回目接種は遅れに遅れています。接種の六か月後から抗体価は下がります。政府が当初、三回目接種を原則八か月後としたことには医学的な根拠はなかったのではないでしょうか。そのことを認めますか。このままでは、第六波のピーク前の感染抑制には到底間に合わないのではありませんか。
 検査の拡充も待ったなしです。
 医療や介護、教育、保育の現場などで感染拡大を防ぐためにも、国の責任で頻回の無料定期検査の計画を立てて実行すべきではありませんか。
 現在のPCR検査能力は一日約三十八万件ですが、これを大幅に拡充し、いつでも誰でも無料で検査できるようにするとともに、当面、抗原検査キットを家庭や職場に無料配布すべきではありませんか。
 感染の急拡大によって保健所の業務も逼迫しています。自治体任せにせず、緊急の体制強化を行うとともに、恒常的に保健所の数と人員を増やしていくことを明確にすべきではないでしょうか。
 総理がG7で最も厳しい水準と胸を張る水際対策には、米軍基地という大穴が空いていました。
 昨年九月以降、米軍は出国前と入国直後のPCR検査を取りやめ、行動制限期間中も基地内を自由に動き回れる状態でした。政府は今回の感染拡大後に米側に照会して明らかになったと説明していますが、米国政府は日本政府に何の連絡もせずに勝手に水際対策を緩めていたということですか。
 沖縄県の玉城デニー知事は、米本国等からの移動停止や基地からの外出禁止などを昨年から何度も政府に要請していたにもかかわらず、日本政府は、日米同盟の抑止力を毀損するとして入国停止を拒否し、外出制限を米側に要請したのは年明けになってからでした。市中への感染拡大を防ぐために一刻も早い対応が必要だったにもかかわらず、余りにも遅過ぎたのではありませんか。
 日米地位協定では、在日米軍は入管法の適用外になっており、検疫は米軍任せで、日本側は関与できません。独立国にあるまじき主権の侵害ではありませんか。
 日本政府の権限の下で出入国管理と検疫を実施できるように日米地位協定を抜本改定し、国内法を適用すべきです。ドイツなどほかの米国の同盟国でやっていることがなぜ日本ではできないのですか。
 沖縄は、五月十五日、祖国に復帰して五十年の節目を迎えます。沖縄返還協定が国会で審議されていた一九七一年、当時の屋良朝苗琉球政府主席の下でまとめられた復帰措置に関する建議書にはこう書かれています。
 異民族による軍事優先政策の下で、政治的諸権利が著しく制限され、基本的人権すら侵害されてきたことは枚挙にいとまありません、基地あるがゆえに起こる様々な被害公害や、取り返しの付かない多くの悲劇等を経験している県民は、復帰に当たっては、やはり従来どおりの基地の島としてではなく、基地のない平和の島としての復帰を強く望んでおります。
 そして、今もこの県民の苦しみは続いているのです。
 九六年の橋本・モンデール会談から四半世紀。いまだに普天間基地の返還が実現しないのは、復帰に懸けた県民の願いに背き、将来にわたって沖縄に基地を縛り付ける辺野古の新基地建設を条件としてきたからではありませんか。
 米軍占領下で住民の土地を奪って構築した国際法違反の基地は無条件で返還することを米国に求めるのが沖縄県民に対する政府の責任ではありませんか。
 鹿児島県馬毛島の米軍・自衛隊基地化も、種子島住民に耐え難い被害をもたらします。西之表市長を始め地元の同意は得られておらず、建設を強行することは断じて許されません。基地建設は中止すべきではありませんか。
 総理は施政方針演説で、経済再生の要は新しい資本主義の実現と述べ、公平な分配が行われず生じた格差や貧困の拡大などの問題を挙げ、新自由主義的な考え方が生んだ様々な弊害を乗り越えると意気込みました。しかし、公平な分配が行われなかったのは、自然現象ではありません。総理は、今までの政策のどこにどのような問題があったと認識しているのですか。
 格差や貧困を広げたのが、労働法制の規制緩和であることに疑いの余地はありません。不安定な非正規雇用が四割を占め、ワーキングプアを激増させました。ところが、施政方針演説には、非正規雇用の是正も、雇用という言葉すらも、一言もありませんでした。新自由主義が生んだ弊害を乗り越えるといいながら、新自由主義の申し子ともいうべき雇用の規制緩和路線をなぜ改めようとしないのですか。
 年金、医療、介護など社会保障の負担増、給付削減も貧困と格差を広げました。しかし、来年度予算案には、七十五歳以上の窓口負担の十月からの二倍化とともに、年金の更なる削減が盛り込まれています。
 今日発表された来年度の年金減額は、安倍政権が導入した賃金マイナススライドによるもので、二〇二〇年度の実質賃金が消費税増税やコロナの影響で下がったからとされています。しかし、この間、食料品や灯油などの価格は上がり続けています。生活必需品の価格が高騰するさなかに年金を減額するのは、生活実態を無視するものではありませんか。さらに、公的年金は高齢化が進む多くの道府県で県民所得と家計消費を支える土台となっており、その削減はコロナ危機にあえぐ地域経済に追い打ちを掛けると考えませんか。
 物価が上がるのに年金は下げる、この現行の年金スライドの仕組みは、生活の実態も経済の動向も反映しない欠陥制度であることは明らかです。削減ありきで国民を苦しめる仕組みを見直し、減らない年金に改革すべきではありませんか。
 消費税の相次ぐ増税の一方、大企業や大富豪への減税で格差と貧困を広げたことも、新自由主義的な考え方による弊害そのものです。
 消費税の創設とその後の相次ぐ増税で実質賃金が低下し、家計消費が冷え込んだ結果、景気が悪化するという悪循環が続きました。消費税は、税制における新自由主義の大きな弊害ではありませんか。消費税減税でこの悪循環を断ち切るべきではありませんか。
 中小零細業者やフリーランスを苦しめるインボイス制度の導入も中止すべきです。答弁を求めます。
 新自由主義の農政によって、農林漁業と農村も疲弊しています。農家も農地も減り続け、生産基盤の弱体化は、TPP、EPAなど輸入自由化で一層加速されています。
 施政方針演説で総理は、農林水産物の輸出について力説しましたが、戦後最低の三七%に低下した食料自給率には一言も触れませんでした。閣議で決めた食料自給率四五%の目標をどのように達成するのか、答弁を求めます。
 まともな雇用を破壊し、社会保障を貧しくし、不安、不公平な税制を広げ、地域を支えてきた農業を破壊してきたのが新自由主義です。強い者がより強くなれば経済も強くなるという新自由主義の政策によって、日本経済は逆に弱く、もろいものになり、日本社会を冷たいものにしてしまいました。
 何でも自己責任、弱肉強食の新自由主義を終わらせて、優しく強い経済を実現しなければなりません。そのために総理が真っ先に行うべきことは、アベノミクスへの反省と抜本的転換ではありませんか。
 総理は、男女の賃金格差も大きなテーマとし、是正に向け、企業の開示ルールを見直すと述べました。年間二百四十万円に上る男女の賃金格差を是正すれば、そのこと自体が大きな賃上げになるし、賃金の平等はジェンダー平等社会の土台中の土台になります。
 昨日、総理は、我が党の志位委員長の質問に、男女の賃金格差については、その是正に向けて、有価証券報告書の開示項目にすると答弁しました。これは一歩前進です。女性活躍推進法でも男女賃金格差の把握と公表を義務付けるべきです。更なる答弁を求めます。
 職場におけるジェンダー平等実現のために、セクシュアルハラスメント、パワーハラスメントの根絶も極めて重要です。
 二〇一九年六月のILO総会でハラスメント禁止条約が採択されたときには日本政府も賛成しましたが、いまだに批准されていません。国内法でも、日本は、先進国で唯一、ハラスメント行為の禁止規定がない国になっています。
 連合の調査によれば、職場でパワハラの内容、方針の明確化や周知啓発に関して何も行われていないと答えた方が四〇%、三二・四%が職場でハラスメントを受けたことがあると回答しており、事態は深刻です。
 総理には、職場でのセクハラ、パワハラが被害者の心身に重大な打撃を与える人権侵害であり、直ちに是正すべきという認識がありますか。一日も早くハラスメント禁止条約を批准し、法律にもハラスメント禁止を明記すべきではありませんか。
 国土交通省による統計の不正が二〇二〇年一月に会計検査院から指摘された後も、国交省は改ざんと二重計上を続けていました。組織ぐるみの意図的な隠蔽、改ざん行為であったことを認めますか。二重計上によって建設業者の受注実績がどれだけ過大になり、GDPにどのような影響を与えたのか、再計算と検証が必要ではありませんか。
 公文書や統計は民主主義の基礎であり、国民のための公共財です。ところが、安倍政権以来、桜を見る会の名簿はシュレッダーに掛けられ、森友疑惑でも公文書改ざん、虚偽答弁が繰り返されました。こうした異常な体質に徹底的にメスを入れ、うみを出し切るべきではありませんか。答弁を求めます。
 核兵器の製造や保有などを禁じた核兵器禁止条約が発効してから明日で一年になります。日本世論調査会による昨年夏の調査で、禁止条約に日本が参加するべきだと答えた人が七一%、締約国会議にオブザーバーとして出席するべきだとした人は八五%に上っています。
 しかし、総理は施政方針演説で、被爆地広島出身の総理大臣として、勇気を持って核兵器のない世界を追求していきますと述べながら、またもや広島の悲願である核兵器禁止条約について一言も触れませんでした。
 総理は、まずは米国との信頼をと言いますが、米国のバイデン政権が検討しているとされる核先制不使用宣言に対し、なぜこれを妨害するのですか。
 広島に本社を置く中国新聞は社説で、期待されるのが、唯一の戦争被爆国を掲げ、保有国との橋渡し役をうたう日本政府の役割、ところが、禁止条約には背を向け、米バイデン政権が検討していた核の先制不使用政策に懸念を示す、核の傘依存の姿勢が、むしろ強まっているように見えると書きました。
 総理は地元のこうした声にどうお応えになるのですか。
 核兵器禁止条約の締約国会議に、NATO加盟国のドイツとノルウェーがオブザーバー参加を表明する中で、なぜオブザーバー参加すらしないのですか。これでどうして核なき世界実現への橋渡しができるというのですか。
 核兵器の非人道性を国際社会に訴え、核兵器禁止条約に参加して、世界の国々や市民とともに核兵器国に核廃絶を迫ることこそ、唯一の戦争被爆国の政府として、そして被爆地出身の首相としての責務ではありませんか。
 総理の明確な答弁を求めて、質問を終わります。
 ありがとうございました。

 

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 小池晃議員の御質問にお答えいたします。
 中小事業者への支援についてお尋ねがありました。
 足下でも、政府系金融機関による実質無利子、無担保融資や事業再構築補助金など、中小事業者のための各種施策を実施し、事業継続を支援しております。
 また、事業復活支援金については、事業規模に応じて支援上限額を最大二百五十万円としていることに加え、新たに売上高の減少割合が三〇%以上の事業者も支援対象にするなど、持続化給付金よりも手厚い支援となっています。
 現在、経済産業省において、一月三十一日の週にも申請の受付を開始する予定です。さらに、類似の支援金では給付件数の約半数が申請から二週間以内に給付されていることも踏まえ、できる限り早い給付に努めてまいります。
 子育て世帯への給付や住民税非課税世帯等に対する給付金についてお尋ねがありました。
 子育て世帯への給付については、迅速に支給するため、児童手当の仕組みを活用しており、基準日以降に離婚した世帯への制度的な対応は難しい面がありますが、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用して、この場合の現在養育者への給付金の支給を検討することを自治体にお願いをしています。
 また、配偶者からの暴力を理由として対象児童とともに避難している場合には、配偶者に支給決定される前に一定の手続をすることで給付金を受け取ることができる仕組み、これも設けております。
 住民税非課税世帯等に対する給付金については、新型コロナの影響を受け、令和三年一月以降に収入が非課税水準相当まで減少した家計急変世帯についても支給を行うこととしております。非課税、失礼、非正規雇用で失業した課税世帯の方であっても、この要件を満たせば給付金の対象となります。
 ワクチンの三回目接種等についてお尋ねがありました。
 二回目の接種完了から三回目の接種までの接種間隔については、ワクチンの予防効果に加え、自治体の準備期間やワクチンの供給力など、厚生労働省の審議会での委員の意見を総合的に勘案した上で、原則八か月以上といたしましたが、オミクロン株の流行が懸念される状況になったこと等を踏まえ、接種間隔の前倒しを行ってまいりました。
 政府としては、必要なワクチンの更なる確保に努めつつ、高齢者への接種を加速化するとともに、高齢者以外の一般の方五千五百万人についても一か月前倒しをし、余力がある自治体では順次できるだけ多く更に前倒しを行ってまいります。
 そして、検査については、まん延防止等重点措置区域等において、自治体に対し、医療機関や高齢者施設等の従事者等に対する集中的検査の計画を策定し、定期的な検査を実施するよう要請をしているところです。
 また、感染不安がある方が無料で検査を受けられる体制を全国で確保しています。さらに、家庭で体調が気になる場合等にチェックできるよう、薬局における抗原検査キットの販売を可能とするとともに、職場においても抗原検査キットを活用するよう促しております。
 そして、保健所体制については、各自治体において保健・医療提供体制計画に基づく人員体制強化を行っていただいているほか、感染症対応業務に従事する保健師の増員に係る地方財政措置を講じております。
 在日米軍の水際対策についてお尋ねがありました。
 米側からは、出国前の検査について、以前は実施していたが、米軍のワクチン接種が進んだことや世界的な感染状況の緩和を受け、全世界を対象とした米国防省の方針に基づき、在日米軍は、昨年九月三日にワクチン接種者については出国前検査を免除したとの説明を受けています。
 日本側から強い申入れも踏まえ、在日米軍は、昨年十二月三十日以降、出国前検査を改めて導入し、現在では在日米軍関係者に対する出国前及び入国時検査を行っています。
 また、在日米軍の外出制限については、できるだけ早期に実施されるよう私の指示で米側に対し強く申入れを行い、その結果、米国は、必要不可欠な場合以外の外出は認めない、また、夜間の外出を禁止するなど、在日米軍の感染防止措置を発表いたしました。
 在日米軍の駐留に関わる保健衛生上の課題に関し、日米地位協定に基づく日米合同委員会において、感染拡大の防止や地元の方々の不安解消に向けて日米間での連携をより一層強化してまいります。
 検疫と日米地位協定の見直しについてお尋ねがありました。
 日米地位協定と米国が他国と締結している地位協定との比較については、実際の運用や安全保障環境等の背景等も踏まえた全体像の中で検討する必要があると考え、単純に比較することは適当だとは考えておりませんが、その上で申し上げれば、米軍関係者に対する入国時の検疫に関しては、例えば英国、韓国においても、我が国と同様、米軍基地から入国する場合については米軍が検疫を行うこととなっていると承知をしており、独立国にあるまじき主権の侵害である、又は我が国が他国と比べて米軍に特別な扱いをしているという指摘は当たらないと考えております。
 日米地位協定の見直しは考えておりませんが、在日米軍の駐留に関わる保健衛生上の問題に関し、日米地位協定に基づく日米合同委員会において、感染拡大の防止、地元の方々の不安解消に向けて日米間で連携をより一層強化してまいりたいと考えております。
 普天間飛行場の返還及び辺野古移設並びに馬毛島における自衛隊施設の整備についてお尋ねがありました。
 戦後七十五年以上経た今もなお、沖縄の皆様には大きな基地負担を背負っていただいております。到底是認できるものではありません。この事実を重く受け止め、国を挙げて基地負担の軽減に一つ一つ結果を出していかなければなりません。
 普天間飛行場は、一九七二年の沖縄の本土復帰以降、米国が我が国から適法に提供を受け、使用しているものですが、沖縄の米軍施設・区域の形成過程について様々な議論があるということは承知をしております。
 世界で最も危険と言われる普天間飛行場が固定化され、危険なまま置き去りにされていることは絶対に避けなければなりません。これは、地元の皆様との共通の認識であると思っています。
 米国とは、閣僚間を含め様々なレベルにおいて、日米同盟の抑止力と、抑止力の維持と普天間飛行場の危険性の除去を考え合わせたとき、辺野古移設が唯一の解決策であるという方針について、累次にわたり確認をしてきております。
 この方針に基づき着実に工事を進めていくことが、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現し、その危険性を除去することにつながると考えております。
 また、馬毛島における自衛隊施設の整備について、我が国を取り巻く安全保障環境が急速に厳しさを増す中で、自衛隊の活動、訓練拠点となるとともに、日米同盟の抑止力、対処力の維持強化にも資する施設を南西地域に早期に整備することが必要です。このため、政府として、馬毛島における自衛隊施設の整備を着実に進めていく考えです。
 その際に、地元の皆様の理解と協力、これは重要であり、防衛省において説明を積み重ねてきました。今後とも、地元の皆様の声を受け止めながら、丁寧な説明に努めてまいります。
 新自由主義の弊害についてお尋ねがありました。
 新自由主義は、日本、世界経済の成長の原動力となった反面、市場に依存し過ぎたことで格差や貧困が拡大し、また、自然に負荷を掛け過ぎたことで気候変動問題が深刻化するなど弊害も生んだと承知をしています。
 我が国では、一九九〇年代のバブル崩壊以降、低い経済成長と長引くデフレにより、停滞の時代を経験しました。企業は投資や賃金を抑制し、消費者も将来への不安から消費を減らさざるを得ず、その結果、需要が低迷し、デフレが加速、競争力も低下するという悪循環であったと承知をしています。
 そして、その中で、労働法制の規制緩和について御質問がありました。
 非正規雇用労働者の待遇改善については、同一労働同一賃金の導入など、労働者の保護に欠けることのないよう十分留意しつつ、多様な働き方を選択できるようにするため、必要な制度整備を行ってきたところです。
 労働局による助言、指導等により、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保に努めてまいります。
 また、加えて、人への投資を積極化させるため、非正規雇用の方を含め、再就職や正社員化に向けた学び直しや職業訓練の支援、これを強力に進めてまいります。
 そして、年齢、年金制度についてお尋ねがありました。
 公的年金制度については、将来世代の負担が過重なものとなることを避けつつ、長期的な給付と負担のバランスを確保する仕組みとしており、この仕組みの下で年金を支給してまいります。
 その中で、来年度の年金額改定率はマイナス〇・四%となっておりますが、これは、この物価、賃金がマイナスとなったことを反映している数字であります。
 消費税の引下げ等についてお尋ねがありました。
 税制については、これまでも所得再分配機能の強化を含め様々な改正を行っており、今後も、成長と分配の好循環の実現に向け、総合的に検討してまいります。
 消費税については、社会保障に係る費用をあらゆる世代が幅広く公平に分かち合うという観点から社会保障の財源として位置付けられており、当面、消費税について触れることは考えておりません。
 インボイス制度については、複数税率の下で、適正な課税を確保するために必要なものであり、その円滑な移行を図る観点から、十分な経過措置を設けるとともに、事業者への必要な支援と周知、広報、これを行ってまいります。
 食料自給率についてお尋ねがありました。
 令和二年度の食料自給率は、カロリーベースでは前年度から一ポイント低下し、三七%であった一方、生産額ベースでは六七%と、前年度から一ポイント増加したところであります。
 令和十二年度にカロリーベース四五%、生産額ベースで七五%の目標達成に向け、農林水産業の成長のための投資と改革を更に大胆に進め、国際競争や災害に負けない、足腰の強い農林水産業を構築してまいります。
 このため、二兆円目標に向けた輸出品目別のオールジャパンでの輸出促進体制の整備を進め、成長する海外市場を取り込むとともに、デジタル技術の実装を通じたスマート化、推進してまいりたいと思います。
 また、アベノミクスの評価と今後の経済政策についてお尋ねがありました。
 アベノミクスは、デフレではない状況をつくり出し、GDPを高め、そして雇用を拡大しました。
 岸田政権では、アベノミクスなどの成果の上に、新しい資本主義の下、市場や競争に全てを任せるのではなく、官と民が協働して成長と分配の好循環を生み出していきます。
 その中で、デジタル化や経済、気候変動問題への対応など、社会課題を投資分野として、官と民が協働し、社会課題を解決しながら成長を実現することで持続可能な経済社会、これを目指してまいります。
 男女の賃金格差についてお尋ねがありました。
 女性活躍推進法においては、男女の賃金格差は、管理職比率と勤続年数の差異を始め複合的な要因があること等の理由により、現在では情報公開の対象としてはおりません。
 政府としては、更なる格差の改善が必要だと考えております。その是正に向けて取り組んでまいります。
 ハラスメントについてお尋ねがありました。
 職場におけるセクハラ、パワハラの防止対策は重要な課題であると認識をしております。
 ハラスメントに関するILO第百九十号条約については、条約の趣旨はおおむね妥当であると考えますが、批准との関係では、ハラスメント禁止規定を設けることとした場合のその定義、また労働者以外の方に対するハラスメントの取扱いなど、国内法制との整合性の観点からなお検討が必要であると考えております。
 政府としては、まずは職場におけるハラスメント防止対策の強化を図る改正法の着実な施行に取り組み、その上で、改正法の施行状況や諸外国の動向も踏まえ、必要な対応を検討してまいります。
 国土交通省における統計の不適切な処理についてお尋ねがありました。
 先般公表された検証委員会の報告書において、長年にわたり複数の不適切な処理がなされていたことや、問題発覚後に国土交通省内部における不適切な事後対応があったことが明らかとなりました。
 この報告書では、組織的な隠蔽や改ざんであるとはされていませんが、調査票の書換えによって収集された有用な情報の活用を損ねた点、二重計上問題について発覚後も事実を明らかにせず問題が表沙汰にならない形で収束させようとした点などについて大変厳しい指摘をいただいており、極めて遺憾であると思っております。
 二重計上の影響については、国土交通省が昨日立ち上げた統計の専門家から成る検討会議において、過去の統計の遡及改定に向け検討を進めてまいります。
 GDPへの影響については、今般の建設工事受注動態統計はGDPの推計に直接用いられておらず、直接の影響はないと承知をしております。
 桜を見る会の名簿及び森友学園案件についてお尋ねがありました。
 桜を見る会の招待者名簿については、公文書管理法等のルールに基づき、会の終了後、遅滞なく廃棄することとしたものと承知をしております。
 森友学園案件については、財務省において自ら非を見詰めた、あっ、認めた調査報告書を取りまとめており、会計検査院も二度にわたる検査報告を国会に提出をし、さらに、第三者である検察の捜査も行われ、結論が出ていると承知をしております。
 こうした内容については、これまでも国会等において様々なお尋ねに対して丁寧に説明を行ってきたところと承知しており、今後も必要に応じてしっかりと説明をしてまいります。
 大事なことは、行政において国民の疑惑を招くような事態を起こさないことであり、今後も国民の信頼に応えるために、公文書管理法に基づき文書管理を徹底してまいります。
 そして、核の先行不使用宣言、核兵器のない世界に向けた取組に関する地元広島の声にどう応えるかということについてお尋ねがありました。
 現在、バイデン米政権では新たな核態勢の見直しの策定が進められており、日本政府としてもその結果を注視しています。
 日米両国間では日頃から安保・防衛協力に関連する様々な事項について緊密かつ幅広く意見交換を行っておりますが、やり取りの内容や今後の対応の詳細については、まさに我が国の安全保障に関わるという事柄の性質もあり、また米側との関係もあり、お答えは差し控えます。
 いずれにせよ、現下の厳しい安全保障環境に鑑み、国の安全を確保することは総理として最重要な課題であると考えており、今後とも日米間で緊密な意思疎通を図ってまいります。
 同時に、私は、被爆地広島出身の内閣総理大臣として、核兵器のない世界に向けて引き続き全力を尽くす決意です。
 本日、唯一の同盟国である米国との間で、国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石であるNPTに関する日米共同声明を発出いたしました。今夜のバイデン米国大統領とのテレビ電話会談でも、核兵器のない世界に向け、共に取り組んでいくことを確認したいと考えております。
 核兵器禁止条約についてお尋ねがありました。
 我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向け、しっかりと取り組んでまいります。
 この核兵器禁止条約は、核兵器のない世界への出口とも言える重要な条約です。しかし、現実を変えるためには核兵器国の協力が必要ですが、同条約に核兵器国は一か国も参加をしておりません。
 御指摘のような対応よりも、我が国は唯一の戦争被爆国として、核兵器国の関与を、核兵器国に関与させるよう努力していかなければなりません。
 そのためには、まず核兵器のない世界の実現に向けて、唯一の同盟国である米国との信頼関係を構築していかなければなりません。今夜のバイデン大統領とのテレビ電話会談でも、核兵器のない世界に向けて共に取り組んでいくこと、これを確認したいと考えております。

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