日本共産党 書記局長参議院議員
小池 晃

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学術会議 コロナ 温暖化 新基地 核兵器禁止条約 首相の姿勢 根本から問う 小池書記局長が代表質問

2020年10月31日

赤旗2020年10月31日付

任命拒否 逃げずに答えよ

参院本会議

 

 日本共産党の小池晃書記局長は30日、参院本会議で代表質問に立ち、日本学術会議の会員任命拒否問題や新型コロナウイルス対策など直面する重大問題について菅義偉首相の姿勢をただしました。小池氏は、学術会議の任命拒否について「民主主義と法治国家のあり方に対する菅首相の基本姿勢を根本から問うものになっている」として「菅首相には任命拒否の理由を誠実に説明する責任がある。逃げずに答えよ」と厳しく迫りました。(質問全文)(関連記事)

 


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(写真)代表質問に立つ小池晃書記局長。その奥は菅義偉首相=30日、参院本会議

 

 小池氏は、菅首相が任命拒否の新たな理由として「民間出身者や若手が少ない。出身や大学にも偏りがみられる」などと言いだしたことをあげ、具体的な根拠をあげるよう追及。菅首相が多様性を重視したといいながら50代前半、女性、その大学からただ一人という研究者の任命を拒否し、総合的・俯瞰(ふかん)的な観点をいいながら人文科学系の研究者だけを任命拒否するなど、矛盾した説明を繰り返している点をただしました。

 

 菅首相は「個別の会員の任命との関係は答えを差し控える」としつつ、「現在の会員は所属別にみると、旧帝国大学といわれる七つの国立大学に所属する会員が45%を占めている」「特定分野の研究者であることをもって任命を判断したことはない」などと弁明。議場からは「理由になっていない」「うそをつくな」などのやじが飛び、怒号に包まれました。小池氏は「日本学術会議法に反し、憲法で保障された『学問の自由』を脅かす任命拒否は撤回すべきだ」と強調しました。

 

 新型コロナへの対応で小池氏は、深刻な経営危機に直面する医療機関全体に対する減収補てんを行うよう主張。コロナ禍から誰ひとり取り残さないという姿勢を示すことが最大の経済対策だとして「大企業に対し『リストラに走るな』『今こそ内部留保を吐き出し、雇用を守る責任を果たせ』というべきだ」と迫り、「暮らしと中小企業の営業の危機に対処するためにも、緊急に消費税を5%に減税し、財源はアベノミクスで潤った富裕層や大企業に応分の負担を求める税財政の改革が必要だ」と述べました。

 

 さらに、菅首相が所信表明演説で触れた「2050年温室効果ガス・ゼロ」について「『空手形』に終わらせないために、いま何をなすかが鋭く問われている」と指摘。(1)石炭火力発電所の新規建設を中止し、既存石炭火力の計画的な停止・廃止に踏み切ること(2)30年の発電に占める再生可能エネルギーの目標を少なくとも4割以上にすること―を提案しました。そのうえで、原発依存から抜け出そうとしない菅首相の姿勢を「言語道断、時代錯誤の極みだ」と批判しました。菅首相は質問に答えず、「エネルギー政策について集中的に議論し、結論を出す」と繰り返しました。

 

 小池氏は、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設での軟弱地盤改良工事に伴い、政府試算でも完成まで12年、費用1兆円に拡大することが明らかなことなどをあげ、「沖縄の苦難の歴史に向き合い、辺野古新基地建設の断念と、普天間基地の閉鎖・撤去に正面から取り組むことこそ、政府の責任だ」と指摘。女性差別撤廃条約の選択議定書や核兵器禁止条約を、日本政府も速やかに批准するよう訴えました。

速記録を読む

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
 会派を代表して、質問します。
 日本学術会議が推薦した会員候補六名の任命拒否は、民主主義と法治国家の在り方に対する総理の基本姿勢を根本から問うものとなっています。
 中曽根元首相を始めとして、これまで政府は、総理大臣による任命は形式的任命にすぎないと答弁してきました。実際、委員が任命制になって以来三十七年間、学術会議が推薦した委員が任命されなかったことは一度もありませんでした。それが総理に拒否されたのですから、学術会議の事務局長も驚愕したと答弁したのであります。理由の説明を学術会議側が求めるのは当然ではありませんか。任命拒否された六名の方も説明を求めており、個別の人事を盾に拒否する理由は成り立ちません。総理には、任命拒否の理由を誠実に説明する責任があります。逃げずにお答えください。
 総理は、必ず推薦のとおりに任命しなければならないわけではないという点について、内閣法制局の了解を得たといいますが、そのことは当時の学術会議会長にも、意思決定機関である幹事会にも伝えられていませんでした。これでどうして首相の新たな権限行使が正当化できるのか。そもそも、国会で繰り返し答弁されてきたこととは異なる首相の任命の法的意義について、国会に諮らず政府が勝手に判断できるというなら、国会審議の意味などないではありませんか。納得のいく答弁を求めます。
 総理は、任命拒否の新たな理由として、民間出身者や若手が少ない、出身や大学にも偏りが見られるとしましたが、それぞれ具体的な根拠をお示しください。この間の学術会議の改革努力によって、男女比も、会員の地域分布も、特定大学への集中も是正されてきています。総理の発言は虚偽ではありませんか。
 しかも、拒否された六名の研究者の中には、五十代前半の方も、女性も、その大学からただ一人だけという方も含まれています。多様性を大事にしたという総理の説明と矛盾していませんか。大体、総合的、俯瞰的な観点で判断したと言いながら、人文科学系の研究者だけを任命拒否したのは、総合的、俯瞰的な観点に反するのではありませんか。
 総理は学術会議の在り方を見直すと言いますが、安倍政権下の有識者会議が一五年三月に、現在の制度は、期待される機能に照らしてふさわしいと報告したのに、今になって見直しを言い出すのは支離滅裂ではありませんか。この五年間に有識者会議の結論を覆すような事実があったのですか。具体的に示していただきたい。
 学問と科学は、政治権力に従属するものであってはなりません。学問が弾圧され、戦争に突き進んだ過去の教訓から、憲法二十三条は学問の自由を保障したのです。
 学問も科学も国民のためのものです。この問題は、任命を拒否された六名だけの問題でも、学者、研究者だけの問題でもありません。全ての国民にとっての重大問題であります。
 日本学術会議法に反し憲法で保障された学問の自由を脅かす任命拒否は撤回すべきです。以上、総理の答弁を求めます。
 新型コロナ感染症がヨーロッパで猛威を振るい、我が国でも感染者が広がっています。徹底したPCR検査で陽性者を保護し、感染拡大を抑えなければなりません。
 今後、季節性インフルエンザの流行も予想され、医療現場には大きな負担となります。しかし、所信表明演説で総理は、医療現場や保健所に対する敬意と感謝を述べただけで、具体的な支援策は一言もありませんでした。
 そこで、総理にお聞きします。
 日本医師会が全国の診療所を対象に行った経営影響調査で、四月から六月期の医業収入は対前年比で平均一三・三%のマイナスとなり、給与費も軒並みダウンしました。感染拡大による医療崩壊が起こる前に国の政策の不備による医療崩壊が起こるような事態は、決してあってはなりません。
 政府は、新型コロナ患者を受け入れた医療機関に支援の対象を絞っていますが、どの医療機関でもコロナ感染者の受診があり得る緊張状態の中で診療しています。そして、受診抑制による患者減は、コロナ患者を受け入れていない病院や診療所でも深刻です。
 この危機を打開するためには、日本医師会や日本病院会などが要望しているように、医療機関全体に対する減収補填が不可欠です。自民党の医療系議員団本部は、コロナ非対応病院も三割の減収だとして、三兆円を超える減収補填を提案しています。与党からも上がる声に政府は応えるべきではありませんか。
 新型コロナ感染の影響が長期化する中で、暮らしと経済の危機も進行しています。小口倒産が急増し、過去の借金が返せない個人事業主の自己破産も増加しています。コロナ禍の下で、小さいところから潰れていく状況は極めて深刻です。
 総理の地元に本社を置く日産自動車には、焦げ付けば国が借金の肩代わりをする一千三百億円もの政府保証が付けられました。一方、日産の下請企業では経営が悪化し、早期退職者募集などリストラが横行しています。今、政府が真っ先にやるべきは、四兆円もの内部留保を抱える巨大企業ではなく立場の弱い中小企業を直接支援することではありませんか。
 雇用者の数は、リーマン・ショック時を上回る勢いで非正規雇用を中心に百万人以上減っており、中でも女性の減少が目立ちます。東京商工リサーチの調査によれば、上場企業六十社が一万人以上の早期希望退職者を募集しています。これから年末に向けてリストラが急加速する危険性があり、事態は極めて深刻であります。
 総理には、コロナ禍から誰一人取り残さないという姿勢を明確に示していただきたい。誰も路頭に迷わせない、どんな業者も潰さない。これが今求められる最大の経済対策ではありませんか。政府として、大企業に対し、リストラに走るな、今こそ内部留保を吐き出し、雇用を守る責任を果たせと言うべきではありませんか。
 雇用調整助成金は、単に延長するだけではなく、給付内容の拡充と手続の更なる簡素化を進め、活用の拡大を図るべきではありませんか。持続化給付金は一回限りとせず、支給要件を改善するとともに、コロナ収束まで事業を維持できるよう複数回支給すべきではありませんか。休業支援金は、事業主が休業を指示していないなどの理由で申請に協力しない例が後を絶たず、必要な人に支援が届いておりません。行政が事業所に強力に働きかけ、是正すべきではありませんか。
 総理は所信表明で、新型コロナウイルスの中にあってもマーケットは安定していると胸を張りました。しかし、コロナ危機の下で史上最高に膨れ上がっているのは富裕層の資産であります。一千億円以上のビリオネアの資産は、コロナ前の十四兆円から十九兆円に膨らんでいます。
 多くの国民がコロナ禍で仕事を失い、賃金が下がり、売上げが消え、事業の継続に四苦八苦しているときにも、株式市場には公的マネーがつぎ込まれ、株価を買い支え、大資産家の資産はどんどん増えていく。こんな経済の在り方でいいのか、巨大な格差を生み出す経済社会が長続きするのかが根本から問われているのではありませんか。
 暮らしと中小企業の危機に対処するためにも、緊急に消費税を五%に減税し、財源はアベノミクスで潤った富裕層や大企業に応分の負担を求める税財政の改革が必要であります。以上、総理の答弁を求めます。
 総理は所信表明で、二〇五〇年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするとしました。これを三十年先の空手形に終わらせないために、今何をなすべきかが鋭く問われております。
 第一に、国連事務総長が石炭中毒とまで非難した日本の石炭火力発電所の新規建設をどうするのか。現在建設中あるいは計画中の十七基の石炭火力は、二〇五〇年にも温室効果ガスを出し続け、このままではゼロ宣言は絵に描いた餅で終わります。総理が石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換するとした以上、新規建設を中止し、既存石炭火力の計画的な停止、廃止に踏み切ることを明言していただきたい。
 第二に、温室効果ガスゼロのためには、省エネ、効率化の徹底とともに、日本が既に後れを取っている再生可能エネルギーの本格的な導入が必要です。これは国際的なビジネスの面からも、地域経済の再生のためにも迫られています。
 経済同友会や三十四道府県を正会員とする自然エネルギー協議会も求めているように、二〇三〇年の発電に占める再生可能エネルギーの目標を少なくとも四割以上にするべきではありませんか。
 東京電力福島第一原発事故により発生している汚染水の海洋放出の動きに、福島と全国の漁業者を始めとする方々から怒りの声が上がり、県議会を始め県内の七割の議会が反対や慎重な対応を求める意見書を上げています。新地町の漁師は、来春からようやく本格操業になるというときにトリチウムを流し、またマイナスから始めろというのかと悲痛な叫びを上げています。
 総理は、福島の復興なくして東北の復興なし、東北の復興なくして日本の再生なしと述べましたが、復興の妨げとなる海洋放出の強行が許されると思いますか。当面は陸上保管を継続し、国内外の英知を結集し解決すべきではありませんか。
 総理は、温室効果ガスゼロについて、原子力を含めてあらゆる選択肢を追求すると述べましたが、原発はこのように今もなお筆舌に尽くし難い苦しみを与え続けているではありませんか。
 地球環境のために脱炭素をと言いながら、放射能による生命の危機を引き起こす原発に頼るなど、言語道断、時代錯誤の極みではありませんか。
 総理は所信表明で、普天間飛行場の危険性を一日も早く除去するため、辺野古移設の工事を着実に進めると述べました。しかし、軟弱地盤の改良工事に伴い、政府の試算によっても、完成までにあと十二年、費用も一兆円近くに拡大することが明らかになっています。
 そもそも、日米両政府が普天間飛行場の全面返還に合意したのは、一九九六年の橋本・モンデール会談です。あれから来年四月で二十五年、その上十二年以上も掛かる計画のどこが一日も早い危険性除去なのですか。県民の民意に背く辺野古新基地建設の破綻は明白ではありませんか。
 政府が四月に沖縄県に提出した設計変更申請書は、これまでの沖縄本島北部だけではなく、沖縄県全域から埋立土砂を採取する計画を明記しています。そのうちの七割を占めるのが、沖縄戦の激戦地である本島南部の糸満市と八重瀬町。戦後七十五年を経た今なお戦没者の遺骨が発見され、遺族の元に送り届ける活動が続けられている地域であります。沖縄戦遺骨収集ボランティア、ガマフヤーの具志堅隆松代表は、戦争で亡くなった人の遺骨を岩ズリと一緒に軍事基地の埋立てに使うなど戦没者への冒涜だと、厳しい批判の声を上げています。総理はこの声をどう受け止めるのですか。
 総理が官房長官当時の二〇一五年の国との協議で当時の翁長雄志知事は、沖縄戦での悲惨な体験と戦後の米軍統治下で基地が造られた経過について、県民には魂の飢餓感があると述べ、新基地建設の中止を訴えました。これに対し、当時官房長官だった総理は、私は戦後生まれなので沖縄の歴史は分からない、日米合意の辺野古が唯一というのが全てだと述べたといいます。このような姿勢が県民に寄り添うものだと言えるのでしょうか。沖縄の苦難の歴史に向き合い、辺野古新基地建設の断念と普天間基地の閉鎖、撤去に正面から取り組むことこそ政府の責任ではありませんか。
 杉田水脈自民党衆議院議員による女性は幾らでもうそをつけますからという暴言は、性暴力被害者を再び深く傷つけるものです。被害者は、被害に遭う方にも問題があるなどと言われ、誰にも相談できず苦しんできました。そして、今、全国に広がるフラワーデモで、誰にも話せなかった被害が語られ始めています。杉田発言はこうした動きに冷や水を浴びせるものであります。断じて許すことはできません。
 総理は、この議員の度重なるこうした暴言を今回も容認するんですか。形だけの謝罪でよしとするんですか。自民党の比例代表選出議員であり、総理は、自民党総裁として議員辞職をさせるべきではありませんか。
 日本が国連の女性差別撤廃条約を批准して今年で三十五年ですが、ジェンダーギャップ指数は百二十一位と年々後退し、世界の流れから大きく取り残されています。条約の実効性を強化するための選択議定書は、既に百十四か国が批准しています。もはや先送りは許されません。
 全ての女性が輝ける社会の構築というのなら、年内に閣議決定される第五次男女共同参画基本計画で、これまでのように真剣な検討などにとどめるのではなく、直ちに批准すべきではありませんか。総理と男女共同参画担当大臣の答弁を求めます。
 核兵器禁止条約の批准国が五十に達し、発効が確定しました。核兵器の開発、実験、生産、保有から使用と威嚇まで違法化し、核兵器に悪の烙印を押す画期的な国際条約です。日本共産党は、被爆者を始めとする核なき世界を求める世界の声が結実した巨大な一歩を心から歓迎するものであります。
 しかし、政府がこれに背を向けていることは、唯一の戦争被爆国として極めて恥ずべきことと言わねばなりません。ノーベル平和賞を受賞した核兵器廃絶国際キャンペーン、ICANのベアトリス・フィン事務局長は、日本が核兵器禁止条約に加われば世界にとてつもない衝撃を与える、その決断は核保有国の姿勢を擁護している他の国々が核兵器を拒絶する引き金になると述べています。総理はこの声にどう応えますか。核兵器廃絶に向けた国際社会の取組をリードするなどというなら、速やかに条約に署名し、批准すべきではありませんか。
 そのことを強く強く求めて、質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。

○内閣総理大臣(菅義偉君) 小池議員にお答えいたします。
 日本学術会議の会員の任命の理由の説明についてお尋ねがありました。
 過去の答弁は承知しておりますが、憲法第十五条第一項は公務員の選定は国民固有の権利と規定しており、この憲法の規定に基づき、日本学術会議法では会員を総理が任命することとされていることから、この任命に当たっては必ず推薦のとおりに任命しなければならないわけではないという点については、内閣法制局の了解を得た政府としての一貫した考え方であり、今回の任命も日本学術会議法に沿って行ったものであります。
 日本学術会議の会長及び幹事会との関係についてお尋ねがありました。
 日本学術会議法において、会長は会務を総理し、会議を代表することとされ、また、幹事会は会議の運営に関する事項を審議することとされています。一方で、会員の任命権は内閣総理大臣であり、日本学術会議の推薦に基づく会員の任命に当たっては必ず推薦のとおりに任命しなきゃならないわけではないという点については、内閣法制局の了解を得た政府としての一貫した考え方であり、今回の任命も日本学術会議法に沿って行ったものです。
 過去の答弁についてお尋ねがありました。
 過去の答弁は承知しておりますが、先ほど申し上げたとおり、憲法第十五条第一項との関係で、日本学術会議の会員については必ず推薦のとおりに任命しなきゃならないわけではないという点については、内閣法制局の了解を得た政府としての一貫した考えであり、日本学術会議法の解釈変更ではない旨は国会において内閣法制局からも答弁をしているとおりです。
 今回の任命については、国会の場などにおいて、御質問に応じて説明できることはきちんと説明してまいります。
 会員の出身や大学についてお尋ねがありました。
 個々人の任命の理由については、人事に関することであり、お答えを差し控えますが、任命を行う際には、総合的、俯瞰的な活動、すなわち……(発言する者あり)
 ちょっと注意していただけますか。
 すなわち専門分野の枠にとらわれない広い視野に立ってバランスの取れた活動を行い、国の予算を投じる機関として国民に理解される存在であるべきだということ、更に言えば、例えば、民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも……(発言する者あり)ちょっと静かにしてください。
○副議長(小川敏夫君) 諸君にお願いいたします。静粛にお願いいたします。
○内閣総理大臣(菅義偉君)(続) 例えば、民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りが見られることも踏まえ、多様性が大事だということを念頭に私が任命権者として判断を行ったものであります。(発言する者あり)静粛に。
 個別の、個別の会員任命との関係はお答えを差し控えますが、現在の会員は、例えば所属別で見ますと、いわゆる旧帝国大学と言われる七つの国立大学に所属する会員が四五%占めています。それ以外の百七十三の国立大学、公立大学が合わせて一七%です。また、六百十五ある私立大学は二四%にとどまっております。また、産業界に所属する会員や四十九歳以下の会員はそれぞれ三%にすぎません。
 なお、特定の分野の研究者であることをもって任命を判断したことはありません。
 有識者会議の報告についてお尋ねがありました。
 平成二十七年三月の有識者会議の報告書では、日本学術会議の国の機関、法律上の独立性、政府に対する勧告権限という現在の制度について、会議に期待される機能に照らしてふさわしいとされたと承知しています。
 他方で、例えば民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りが見られることや、会員の人選は、最終的に選考委員会などの仕組みはあるものの、まずは現在の会員が後任を推薦することも可能な仕組みになっていることについては、かねてから同様の問題があったものと思います。
 学問の自由についてのお尋ねについては、憲法第二十三条に定められた学問の自由は広く全ての国民に保障されたものであり、特に大学における学問研究の自由、その成果の発表の自由、教授の自由を保障したものであると認識しています。
 今回の日本学術会議の会員の任命は、憲法第十五条第一項の規定の趣旨を踏まえ、任命権者である内閣総理大臣がその責任をしっかり果たすため、日本学術会議法により、推薦に基づいて国の行政機関として職務を行う会議の一員として公務員に任命したものであり、変更することは考えておりません。
 こうした考え方に基づく任命権の行使が、会員などが個人として有している学問の自由に影響を与え、これを侵害することになるとは考えておりません。
 医療機関の経営危機についてお尋ねがありました。
 医療機関においては、患者数の減少による収入の減少などが見られることから、これまで約三兆円の支援を実施してまいりました。まずは、これらの支援を医療現場の皆様に速やかにお届けするとともに、今後とも、国民の皆様に必要な地域医療が確保できるよう、必要な取組や支援を検討してまいります。
 中小企業支援及び大企業の雇用維持についてお尋ねがありました。
 依然厳しい経済状況の中で、引き続き中小企業などの雇用を守り、事業が継続できるように最大二百万円の持続化給付金、最大四千万円の無利子、無担保融資などの措置が行き渡るようにしてまいります。また、今後もちゅうちょなく必要な対策を講じてまいります。
 あわせて、雇用の維持に関しては、これまでも関係大臣から経済団体などに対し雇用の維持等に対する配慮を行うよう最大限の経営努力を要請してきたところです。引き続き、雇用情勢に応じて必要な施策を実施しつつ、事業の継続や雇用の維持に全力で取り組んでまいります。
 雇用調整助成金、持続化給付金及び新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金についてお尋ねがありました。
 従業員の雇用を守るべく実施している雇用調整助成金については、これまでに例のない特例措置を講じたところであり、八月にはその期間を本年十二月まで延長したところです。この特例措置の取扱いについては、今後の雇用情勢などを踏まえ、適切に判断してまいりたいと考えます。
 また、持続化給付金については、緊急事態宣言を経て厳しい状況にある事業者の事業の継続のためのあくまでも特例的な措置であり、引き続き必要な方々に行き渡るようにしてまいります。
 休業支援金・給付金について、事業主の協力がいただけず、申請、支給に至らないケースがあると聞いておりますが、こうした場合には、労働局で労働者からの申請を一旦受け付けた上で、事業主に対して調査を行う運用にしております。こうした運用や制度の対象者について、分かりやすく周知徹底を行ってまいります。
 格差、税財政改革についてお尋ねがありました。
 格差については、成長と分配の好循環を進める中で、悪化を続けてきた子供の相対的貧困率も減少に転じました。
 消費税については、社会保障制度のために必要な財源と考えています。
 富裕層や大企業への課税については、これまで所得税や相続税の最高税率の引上げ、法人実効税率引下げの際の外形標準課税の拡大などを行っているところです。
 まずは、新型コロナウイルスの中で、雇用の維持や事業の継続を最優先としつつ、格差が固定化しないよう、また許容し得ない格差が生じないよう、必要な施策を講じてまいります。
 再生可能エネルギーと石炭火力についてお尋ねがありました。
 二〇五〇年カーボンニュートラルを実現するため、研究開発等への支援を通じて、国民負担を抑制しつつ、再生可能エネルギーの最大限導入を進めます。また、石炭火力に関しても、カーボンニュートラルに貢献するようなイノベーションを追求していきます。
 いずれにせよ、石炭火力や再エネの将来像を含めたエネルギー政策について集中的に議論し、結論を出してまいります。
 東京電力福島第一原発のALPS処理水の取扱いと原子力発電についてお尋ねがありました。
 福島の復興には廃炉の着実な進展が不可欠であり、その一環であるALPS処理水の取扱い方針を決定する必要があります。
 本年二月に報告書をまとめて以降、広く国民の皆様から貴重な意見をいただきつつ議論を積み上げました。敷地が逼迫する中、いつまでも方針を決めず先送りはできません。今後、更に政府内での検討を深め、適切な時期に責任を持って処分方針を決めてまいります。
 その上で、原子力発電については、いかなる事情よりも安全性を最優先することは言うまでもありません。今後、原子力を含め二〇五〇年カーボンニュートラルを目指すエネルギー政策については集中的に議論をし、結果を出します。
 辺野古移設に係る工事計画についてお尋ねがありました。
 普天間飛行場代替施設建設事業については、沖縄防衛局において、有識者の助言を得つつ、十分に検討が行われ、しっかりとした計画が策定されていると承知しております。
 日米同盟の抑止力の維持と普天間飛行場の危険性の除去を考え合わせたとき、辺野古移設が唯一の解決策であり、この方針に基づいて着実に工事を進めていくことこそが、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現し、その危険性を除去することにつながるものと考えます。
 辺野古移設に係る埋立土砂についてお尋ねがありました。
 変更承認後の埋立てに使用する土砂の調達先は工事の実施段階で決まりますが、関係法令で認められた採石場から調達されると承知しております。
 普天間飛行場の辺野古移設に関する政府の責任についてお尋ねがありました。
 戦後七十年以上を経た今もなお、沖縄の皆様には大きな基地負担を負っていただいております。沖縄の基地負担軽減は政府の大きな責任であり、私自身、官房長官として、これまで全力で沖縄の基地負担軽減に取り組んでまいりました。
 その結果、沖縄の本土復帰後最大の返還となった北部訓練場の過半の返還を始めとして、目に見える形での基地負担軽減を実現してまいりました。
 その中でも、世界で最も危険と言われる普天間飛行場が固定化され、危険なまま置き去りにされることは絶対に避けなければなりません。これは地元の皆様との共通認識でもあると思います。
 普天間飛行場の危険性を一日も早く除去するため、辺野古移設の工事を着実に進めていくとともに、これからも地元の皆さんの御理解を得る努力を続けてまいります。
 性犯罪被害に関する自民党議員の発言及び女子差別条約選択議定書についてお尋ねがありました。
 政府の立場で個別の国会議員の発言等についてコメントは差し控えたいと考えております。他方で、一般論で申し上げれば、政治家はその発言に責任を持ち、有権者から信頼を得られるよう、自ら襟を正すべきだと考えます。
 御指摘の選択議定書は個人通報制度について規定するものですが、この制度は条約の実施の効果的な担保を図る趣旨から注目すべきものと考えます。
 その上で、女子差別撤廃委員会から出される見解などについて、我が国の司法制度や立法政策との関係でどのように対応するかなどの検討すべき論点があることから、各方面の意見なども踏まえ、早期締結について真剣に検討しているところであります。
 核兵器禁止条約についてお尋ねがありました。
 我が国は、唯一戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向けた国際社会の取組をリードする使命を有しており、核兵器禁止条約が目指す核廃絶というゴールは共有しています。
 一方で、核兵器のない世界を実現するためには、核兵器国を巻き込んで核軍縮を進めていくことが不可欠です。しかし、現状では、同条約は米国を含む核兵器国の支持が得られていません。さらに、カナダ、ドイツなど多くの非核兵器国からも支持を得られていません。
 我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、抑止力の維持強化を含めて、現実の安全保障上の脅威に適切に対処しながら、地道に、現実的に核軍縮を前進される道筋を追求していくことが適切であると考えます。
 こうした我が国の立場に照らし、同条約に署名する考えはありませんが、我が国としては、引き続き、立場の異なる国々の橋渡しに努め、核軍縮の進展に向けた国際的な議論に積極的に貢献していく考えであります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。

○国務大臣(橋本聖子君) 小池議員の質問にお答えいたします。
 第五次男女共同参画基本計画における女子差別撤廃条約選択議定書に関する記述についてお尋ねがございました。
 同選択議定書については、国内制度との関係で整理すべき課題があり、所管する外務省を中心に検討が行われていると承知をしております。
 第五次男女共同参画基本計画の策定に向けては、外務省の検討状況を踏まえ、議論を進めていきたいというふうに考えております。
 以上です。

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